5thシングル『Dear Teardrop』リリース記念特別対談(その1)

Mia REGINA×こだまさおり対談 “涙とガールズトーク”する『citrus』EDテーマ秘話を語り合う

「高校生の恋愛というものにまったく心当たりがなくて……」

ーー先ほどのお話だと、今回は作編曲家の渡辺和紀さんのメロディが「涙」というモチーフを呼び起こした感じですか?

こだま:あっ、それはちょっと違いますね。レーベルさんから「アニメのタイアップ曲とはいえ、キャラクターにピッタリ寄り添うんじゃなくて、けなげな恋心を描いてほしい」というオーダーがあったので。『citrus』の原作マンガやアニメのシナリオを読みつつ、メロディを聴きつつ「うーん……」って考えた結果「涙」に辿り着いた感じ。恋愛における涙って自分の理解者というか、自分にとって一番素直な感情表現のひとつであるはずなのに、自分の言うことを全然聞いてくれないじゃないですか。

ーー生理現象だけにコントロールは効かないですね。

こだま:その涙とガールズトークをしているっていうとヘンなんですけど、でも好きな人を前にして思わず泣きそうになっちゃったとき、涙に向かって「まだだからね」「まだ流れちゃダメだからね」って話しかけている感じって女の子っぽいかなあ、って思ってたら<瞳の奥が熱くなる>っていうフレーズが出てきたんですよね。……って意味不明ですね(笑)。

若歌:全然そんなことないです! 涙と語らってる感じ、涙に言い聞かせてる感じというのはすごくわかるし、好きです!

楓裏:『citrus』もけっこう切ない恋愛……片想いだったり、叶わない思いだったりを描いているから、アニメにもピッタリだし。メロディやアレンジもそうなんですけど、アニメと私たちのことを両方のことを本当に考えてくださってるな、って感じてます。

ーー確かに「Dear Teardrop」ってMia REGINAの楽曲としても、『citrus』のエンディングテーマとしても美しく機能してますよね。ただ素人目には、いちアーティストに寄与しつつ、映像作品にも寄与する言葉を紡ぐのって大変そうだなあ、という気がするんですけど……。

こだま:これがまた申し訳ないことにうまくお答えできないんですけど(笑)、アニメの各話シナリオを読み進めていって最後のページまで辿り着いたとき、「ここで曲が流れてくるんだよな」なんて考えてたら自然とこうなっちゃってたというか。

若歌・リス子・楓裏:おーっ!

こだま:そうやって視聴者の方がアニメ本編を観たあとに浸るだろう余韻みたいなものを歌に込めようと思いつつ、でもMia REGINAさんが10年後にライブで歌っても違和感のない歌詞になればいいな、って思って。

リス子:確かに10年後にも歌いたいです!

若歌:『citrus』が高校生のお話だから、今は高校生の気持ちになって歌詞を読んでますけど、女子大生とか、もっと大人の恋愛に置き換えても全然しっくりくるというか。いくつになっても歌える曲ですし。

ーーその歌う側である、Mia REGINAさんはレコーディングにはどう臨まれました? 歌詞同様、皆さんの歌自体も、女の子同士の恋愛……いわゆる百合を描いた『citrus』のエンディングテーマとしても、Mia REGINA自身の楽曲としても機能しています。

楓裏:アニメが百合作品であることはほとんど意識してなかったかなあ。男の子が相手でも女の子が相手でも恋する気持ちに変わりはないはずだから、恋愛対象が誰なのかは気にせず“恋の歌”として歌ってました。

若歌:誰を好きになっても、それが片想いだったら切ないし、苦しいし、でも簡単には告白できないしってなるだろうし。確かに「ガッツリ女の子同士のことを歌わなきゃ」みたいなことは考えなかったですね。

こだま:歌詞としても、相手の性別がわからないように書いてるんですよ。それこそ涙で<世界がぼやけてしま>っているので、相手の輪郭がよくわからない。向かいに好きな人はいるんだけど風景はあやふやで、あくまで涙と話をしているという感じで。

リス子:「君」とか「あなた」とか「彼」とか「彼女」とか出てこないですもんね。私たちもレコーディングのときに言われたのは「高校生の恋愛をイメージして歌って」ということくらいでした。

ーー『citrus』のヒロインたちも高校生だし。

リス子:はい。ただ、私自身には高校生の恋愛というものにまったく心当たりがなくて……。

楓裏:この歌詞みたいな経験はなかった……。

若歌:私も……。

ーー皆さん、ちょっと残念な青春を送ってましたか(笑)。

リス子:女子校育ちっていうのもあって、クラスメイトに恋愛感情を抱くという経験をしてないんですよ。

若歌:しかもリス子はひきこもりだったし(笑)。

リス子:うん……。

ーーあはははは(笑)。ひきこもり女子はどうやってこのかわいくて切ないラブソングに寄り添ったんですか?

リス子:自分の経験があまりにもなかったとはいえ、さすがに曲に登場するキャラクターの気持ちならわかるので、その気持ちになって(笑)。『citrus』の登場人物に限らず、自分の好きないろんなアニメのキャラクターを思い浮かべながら、「あー、今この曲のヒロインは、あのアニメのキャラクターと同じようなことを思ってるに違いない!」って感じで歌ってました。

楓裏:私も主人公の気持ちはこういう感じかな? って想像しながら歌ってた。

若歌:リス子が言ったとおり、まだ気持ちを伝えられない片想いの相手を前にしたときに切なくなって泣きそうになる気持ちは3人ともわかりますから。

ーーそれこそが、先ほどこだまさんがおっしゃてっいた、Mia REGINAがこの曲を10年後にも歌える理由ですよね。描かれている恋愛模様が普遍的なものだから、歌う人も聴く人も年齢問わず曲に浸れる。

若歌:そうなんですよね。いきなり泣き出しちゃうと好きな人に心配をかけちゃうし、そもそも気持ちがバレちゃうしって感じで慌てるのは、高校生であれ、今の私たちであれ同じですから。で、その心配させたくないし、バレたくないから、泣くのをガマンしたくなる女の子のことならイメージできるから、高校生当時の霧島若歌という人が片想いしてたらどんな声を出すんだろう? って考えながら歌いました。……というか、この歌詞と曲を聴いてたら切なくなっちゃったので、一度しっかり泣いてからレコーディングに臨みました(笑)。

ーーこだまさんは今回の3人の歌声をどう聴きました?

こだま:「こういうふうに表現してくれるんだ!」ってうれしくなったっていうのが、まず第一にあって。高校生を意識したとはいえ、当然『アイカツ!』のときよりも全然大人っぽいし、出だしからすごく情熱的じゃないですか。3人の声はすごく知っているつもりだし、その声が頭の中で鳴っている状態で歌詞を書いたんですけど、それよりもはるか上を行かれた感じがしましたね。

リス子:成長を見せられたかな、と(笑)。

こだま:歌詞の世界に生身で踏み込んで表現してくださってるなって思いました。

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