『8芯二葉〜梅鶯Blend』インタビュー
Darjeeling 佐橋佳幸とDr.kyOnが語る、制作への意気込み「“遊んでる”ように見えてたら嬉しい」
楽器でずっと歌ってるわけですよ(Dr.kyOn)
ーーインストの曲についても伺いたいんですけど、僕がもっとも驚いたのは「遥かなる故郷」で。おふたりがこんなにもケルトの感覚を前面に出した曲をやられるとは、と。ケルトやアイリッシュ音楽は以前からおふたりのなかに大きくあったんですか?
kyOn:僕はアコーディオンだから楽器的にもそういうトラッドな要素があるし、あとカンタベリー系なんかをある時期好きでよく聴いてて、それこそFairport Conventionとかを中心にいろいろ聴いていたから。
佐橋:僕はちょっと年下なので、The Poguesとかから入ってますね。それでアイリッシュ・ブズーキ(ギリシャ音楽で使用される弦楽器)を買ったもん。それからケルト面白いなってなって、一時期かなりCD集めて研究しました。
ーーでも、ここまでそれをストレートに出すことは今までなかったですよね。
佐橋:確かに。だから面白かったですよ。
kyOn:またちゃん(パーカッションの三沢またろう)がボーラン(アイリッシュドラム)を持ってきてたんだけど、ボーランをレコーディングに使うなんて普段ないじゃないですか。
佐橋:言われないもんね、「ボーラン持ってきてください」なんて。オレ、一回しかないよ、またちゃんに「ボーラン持ってきて」って言ったの。そしたら「おおっ、嬉しい!」って。「持ってるけど、なかなかやる機会がないからさ」って言ってて。またちゃん、無茶な注文が大好物だから(笑)。でも、「これこれこういうイメージだから」って言うと、それに合う楽器をちゃんと持ってるのがすごいよね。しかも、何を持ってきてもちゃんと本格的にできるわけ。それがすごいよね、またちゃん。
ーー家のなかとか、どうなってるんですかね。
kyOn:倉庫がすごいんじゃないですか? ないものがないから。たいがい、言うとある。地球上で誰かが使ったものはひととおり持ってますからね。ちゃんとクラシックとかで使える楽器から、“とりあえず音が鳴るから楽器と呼んでるけど置いとくだけだったら楽器じゃないよ”っていうものまであるわけだから(笑)。
佐橋:そうそうそう。「これ、ただの紐じゃん」っていうのもあるし(笑)。
kyOn:「ただの石じゃん」とか、そういうのもあるわけよ。だから、“今自分が新しい楽器を創造してるんだ”って感覚なんでしょうね、きっと。特にインストはそれが強く出るというか。
ーーああ、なるほど。それはでも、おふたりもそうですよね。普段あんまり使わないだろうなというような楽器をDarjeelingのアルバムではふんだんに使っている。「2000m above Sealevel」ではシンセパイプオルガンやエレキシタールやアコースティックのバリトンギターが使われているようですし。しかも、それらを隠し味的に使うのではなく、わりとドンと出している。
kyOn:うんうん。
佐橋:「こういうふうに使ったことなかったけど、やってみたら面白いかも」っていうのが大好物なんですよ。
ーーそうやっていろいろ楽しんでいる様子が伝わってきます。「MONTE CRIST BOP」でハープシコード(チェンバロ)を中心にしながらいろんな楽器がそこに乗ってくところとかも。
佐橋:これ、僕のパートだけ聴くとジャンゴ・ラインハルトの感じでしょ。でも1曲のなかでいろんなことが同時進行していて。「ベースいなくて大丈夫ですか?」ってkyOnさんに聞いたら、「エレピの低音でやる」って(笑)。
ーーだから、こう言うとアレですけど、Darjeelingのアルバムっておふたりの遊びの集大成みたいなところがあるんですよね。
kyOn:あ、でも、遊んでるように見えてたら、それはすごい嬉しいです。「あのふたり、遊んでるな~」っていうのが伝わってくれたら、それが一番。
ーーそういったところも含め、やっぱり誰かのプロデュースをしてアルバムを作るのと、自分たちのアルバムを作るのとでは、いろいろ違うものですか?
佐橋:そりゃあ全然違いますよ。今回で言ったら、高野(寛)くんのアルバムを作ってるときとDarjeelingのアルバムを作ってるときではまったく違う。サポートをしてるわけではなくて、Darjeelingのアルバムは完全に自分たちの領域ですからね。しかも今回のは2作目だけど、前作は初めてだったから、すごくいい疲れ方をした。サポートやプロデュースのときとは、やっぱり出してるものが違うんですね、きっと。
終わってkyOnさんと飲みに行ったとき、kyOnさんに聞かれたんだよね。「佐橋くん、ふたりとも長年仕事してるけど、こんなにソロを弾いたことってあった?」って。これまで何千曲とレコーディングしてるけど、やっぱりギターソロのあるポップスなんてほとんどないですから。だから、そう言われてみればレコーディングでこんなにソロ弾いたこと、ないなぁって。
kyOn:しかも、続けて弾いたりもするから。そういう歌はあんまりないから。
佐橋:やってるときは気づかないんですよ。でも焼き鳥屋のカウンターに座った途端、「kyOnさん、なんかけっこうキテるみたいです、カラダに」って思わず言っちゃって(苦笑)。
kyOn:要するに僕ら、ずっと歌ってるわけですよ、楽器で。
佐橋:そう、歌いっぱなしなんですよ。だから終わってグッタリン・ジンになりましたけどね(笑)。
ーー長年やられてても、やっぱりアルバムを作ることでわかることがたくさんあるもんですね。
佐橋:はい。新人ならではの体験をさせていただいてます(笑)。
(取材・文=内本順一)
■リリース情報
『8芯二葉〜梅鶯Blend』
発売:2018年2月14日
価格:¥2,315(税抜)
<収録曲>
1. J・Tea
[屋敷豪太(Drums)、高桑圭(Bass)、三沢またろう(Percussion)]
2. 泣き虫ケトル
[伊藤俊吾(キンモクセイ)(作詞/Vocal)、島村英二(Drums)、河合徹三(Bass)、MONKY(Baritone Sax)]
3. タフ ラブ
[石橋凌(作詞/Vocal)、屋敷豪太(Drums)、小原礼(Bass)]
4. 2000m above Sealevel
5. Funky Tea Race
[中村まり(作詞/Vocal, A.Guitar)、島村英二(Drums)、河合徹三(Bass)]
6. 遥かなる故郷
[三沢またろう(Percussion)]
7. 巳年のぺリカン
[デーモン閣下(作詞/Vocal)、古田たかし(Drums)、納浩一(Bass)、三沢またろう(Percussion)]
8. MONTE CRIST BOP
[三沢またろう(Percussion)]
作/編曲:Darjeeling