作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第14回

作詞家 zoppが語る、クリスマスソングの作詞術 「back numberはある種、王道」

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまでの本連載では、ヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”としての役割などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。第14回目となる今回は、クリスマスソングをテーマに使われる言葉の特徴や現代と過去の歌詞の違いなどについてじっくりと話を聞いた。(編集部)

「“ロマンス離れ”して、地に足のついた歌詞が増えている」

ーークリスマスソングのサウンドはベルの音が入っているなど、分かりやすい特徴があります。歌詞の面での特徴や、クリスマスを感じさせる言葉はどんなものがありますか?

zopp:トナカイとか、サンタとかのストレートなワードに加えて、「願いを叶える」というような歌が増える気がします。もちろんどの季節にもあると思いますが、クリスマスというイベントが重なることによってより説得力が増して、共感しやすくなる。

ーー願いを叶える、ということは明るい感じの曲が多いのでしょうか。

zopp:前回の連載(作詞家 zoppが明かす、“夏うた”への危機感「季語を使う不便さが顕著に出てきた」)でもお話ししたように、“夏うた”の場合夏の前半は底抜けに明るくて、後半はちょっと悲しげで……という感じですが、クリスマスは短いので、同時期に切ない曲も明るい曲も出てくる気がします。でもBoAさんの「メリクリ」や山下達郎さんの「クリスマス・イブ」など、いわゆる名曲とされるものはバラードが多いんですよね。寒いから、聴いている人が心身ともにぬくもりが欲しくなるような。

ーーzoppさんがクリスマスソングを書かれる時に意識していることなどはありますか。

zopp:「街がキラキラし始める」とか、イルミネーションに関連したワードを使います。あとはクリスマスって他の季節やイベントと違って、赤と緑というカラーの印象が強いので、クリスマスと言わずにその色で季節や時期を感じさせている曲が多いです。それと「クリスマス・イブ」の影響もあってか、「雪が降る」という言葉が出てくると“切ない”とか、冬が深まる、という印象が強まりますよね。

ーーなるほど。他にクリスマスを思わせる言葉はありますか?

zopp:バレンタインデーの場合は「プレゼント」と言わずに「チョコ」と言うので、「プレゼント」もクリスマスを感じさせる一つのキーアイテムではないでしょうか。あとは「聖なる夜」とか。クリスマスソングの舞台は朝と昼の歌が少なくて、ずっと夜なことが多くて。ミュージックビデオも夜を舞台にしていたり。冬はイルミネーションが綺麗ですからね。それと、日本人の中に夏は昼、秋は夕方、始まりの季節の春は朝、というような季節ごとに持っているイメージがある。冬は1年の終わりで、良くも悪くも終わりを迎える季節でもあると考えると、終末感がある歌詞や、“二度と会えない”というような白黒はっきりつけた言葉も多いかもしれません。

ーークリスマスソングは歌詞が切なくても、曲調は明るいものが多い印象ですが、それにも意図があるのでしょうか。

zopp:曲全体としては悲しい感じだけど、オープニングは明るくて、まず良かった頃の話をして、今は君はいなくて……というある種、お決まりとなっている流れがあるんじゃないでしょうか。ただ“クリぼっち”なんて言葉もあるみたいに、クリスマスってだんだん一人で過ごす人も増えている気がします。だからそういう世相も曲に反映されてきている。

ーー具体的に、今と昔では歌詞にどんな違いがあるんでしょうか。

zopp:松任谷由実さんの「恋人がサンタクロース」のような、恋人や家族など身近な人をサンタに例える歌が減りました。“ロマンス離れ”して、地に足のついた歌詞が増えているのかもしれません。あとはそもそも、「サンタ」などのストレートなワードが減った気もします。

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