2ndアルバム『孫ノ手』リリースインタビュー
島爺が明かす、”割り切れなさ”を歌う理由 「わかりやすい単純な状態で済ませられない」
「『生きろ』というより、『死ぬな』という感覚のほうが強い」
――8曲目の「現代ササクレ学入門」(なす)にはコメンタリーが入るなど少し遊びがあり、そこから「R.O.C.K.E.T」、先ほどの「ラットが死んだ」と続き、このあたりは特に「歌ってみた」を追いかけてきたファンにはうれしいブロックになっています。
島爺:このあたりはライブ『冥土ノ宴』のセットリストと重なっていて、ライブでノリのよさを引き出してくれて、かつリスナーさんの喜んでいる顔が浮かぶ選曲になっています。コンセプトをガッチリ固めて曲を集めたとしたら、それもまた違うものになったんじゃないかと。理屈的なところは何もなくて、ただイメージがあったという感じです。それに、めぐり合わせもありましたね。ちょうど選曲し始めたくらいのタイミングで、「天樂」(ゆうゆ)のことをTwitterで書いている人を見かけたり。歌いたいとずっと思いながら、忘れていた部分もあって。
――なるほど。「天樂」は和楽器バンドのカバーなどでも話題になった有名曲ですが、キー調整もされて新鮮な気持ちで聴けますね。新規歌唱曲で言うと、18曲目に収録された「エンドロールに髑髏は咲く」がとても印象的でした。歌の力がよく伝わるロックバラードです。
島爺:Twitterでたまたま見つけて、すぐに歌いたいと思った曲です。頭の片隅にずっとあったので、このタイミングで歌えてよかったなと思います。
――そして、「エンドロール」というタイトルを差し置いて最終曲になった「生きろ」。『冥土ノ宴』でも最後に弾き語りを披露した曲で、思い入れも強いのでは?
島爺:そうですね。「生きろ」という言葉と、曲調的には、「力強く生きていってくださいね」というポジティブなメッセージとして捉えている方も多いと思うんですが、僕自身、個人的にはかなり残酷な歌だと思っていて。生きていく意味が見いだせなくても、辛いことがあっても、それでも生き続けなさい、というニュアンスが感じられると思うんです。
――島爺さんの歌唱もそうですが、それを泣きながら訴えているようなイメージがあります。
島爺:そういうことを踏まえながら歌いました。「生きろ」というより、「死ぬな」という感覚のほうが強いかもしれないですね。この曲も、最後に置くのは厳しい曲やな、という思いもありつつ、やはりしっくり来たんです。
――選曲について、Twitter上では「言葉にするのは難しい」という趣旨の発言もされていますが、本作を聴いた感想として、島爺さんは「割り切れないもの」を歌うシンガーなのではないかと思いました。「なんで生きてんだろう~」に<悲しみで踊っちまいそうだ>というフレーズがありますが、やりきれないけど元気づけられるとか、楽しいけど痛いとか、強い意志を持ってブレ続けるとか。いま伺った「生きろ」も象徴的ですね。
島爺:ああ、そうかもしれません。僕自身、音楽をやりはじめて、バンドをやっていた頃も、ずっとぶつかっていた壁があって。それは、「広くみなさんに聴いてもらうためには、わかりやすいメッセージが必要だ」ということなんです。「そうしなければ」と思いながらも、やっぱり「そういう単純ものだけじゃないよな」という思いのほうが大きくて。どうしても、わかりやすい単純な状態で済ましてはおれない性分なんですよ。いまの“島爺”が置かれている状況もすべて含めて、ずっと迷いながら歩いていますね。
――そういう部分が、ポジティブな意味で表現に出ているし、選曲にも表れていると思いました。シリアスなメッセージも含みながら、全体としては決して重い印象になっていないのも、島爺さんのアルバムらしいですね。
島爺:完全に、100%悲しいこととか、100%辛いことってないと思うんです。とても打ちひしがれている状態でも、テレビで面白いことをやってたら笑ってまう、みたいなことってあるじゃないですか。
――逆に、笑っていてもどこか片隅に悲しい思いがあったり。前作よりも、そういう割り切れない部分が色濃く出ていると思います。
島爺:そうかもしれないですね。前作のことを言えば、「ブリキノダンス」(日向電工)が動画の再生数的にも群を抜いていて、ともすればその輝きで他の曲が見えづらくなることもあったんです。この曲を1枚目に収録して、さて2枚目となったときに、すごく光り始める曲がたくさんあるんですよね。
――眩しすぎる曲という意味では、1stシングルの表題曲「ガッチェン!」も弾き語りバージョンが通常盤のボーナストラックとして収録されるにとどまりました。
島爺:やっぱり、そのまま入れても違うな、と。アコギ一本で歌うのは、だいぶ難しかったですけどね(笑)。
――9月からは北海道から沖縄まで、初の全国ツアー『孫を訪ねて82万里~冥土 in Japan~』が始まります。このアルバムを引っさげて、ということになりますが、『冥土ノ宴』でも、収録曲が多く披露されました。あらためて、初ライブを振り返ってもらえますか。
島爺:まあ反省点は山ほどありましたね。ただ、あの光景を見れたということは、僕の人生的にも、ミュージシャン人生的にも大きかったと思います。ぶっちゃけて言うと、僕はあんまりライブというものが好きではなかったんですよ(笑)。でも、それが若干、変わりましたね。赤坂BLITZはとても著名で大きいライブハウス、というイメージですし、ほんまの気持ちとしては、一回ゴールにタッチしてきたような(笑)。でも、そんな経験もして、ツアーへの取り組み方も変わってくると思います。
――ツアーについて、どんなことを楽しみにしていますか?
島爺:ツアーの最初と最後で、いろいろな状態が変わっていると思うんです。バンドのメンバーさんとか、スタッフさんとか、一緒にやってくれる人との関係性もそうだし、演奏のクオリティもそう。その変化で、来てくれるお客さんの見え方がどう変わっていくのか、ということが楽しみです。
――赤坂BLITZのチケットをとれなかったファンも多いと思います。“孫”のみなさんにも一言いただけますか。
島爺:できるだけ、自発的に楽しむという気持ちで遊びに来ていただけたらうれしいですね。もちろん、僕からもいろんなものを見せよう、という覚悟で行きますし、みなさんからもいろいろ見せてもらいたいと思います。
――最後に、この大ボリュームのアルバムをどんなふうに受け取ってもらいたいですか?
島爺:曲順で悩んだということもあるので、できれば最初から最後まで、一度は通して聴いてもらいたいです。いい曲ばかり集めたのではなく、最初に感謝の気持ちというイメージがあって、そこに引き寄せられて、集まるべくして集まった曲たちだと思います。いま現在お孫さんな人たちも、初めて聴く人も、気になった楽曲のクリエイターはすぐにチェックしてください!
(取材・文=橋川良寛)
■リリース情報
『孫ノ手』
発売日:2017年8月2日(水)
価格:初回限定盤 ¥2,700(税別)
通常盤 ¥2,300(税別)
Jacket Illustration:瞬く
<収録曲>
【DISC1】
1.なんで生きてんだろうってすげえ思うんだ(作詞・作曲 ヘルニア)
2.チェゲラナ(作詞・作曲 niki)
3.タイトロープドリーマー(作詞・作曲 ねじ式)
4.なんにもない(作詞・作曲 薄塩指数)
5.不毛!(作詞・作曲 ぽてんしゃる0)
6.ハダカネズミ(作詞・作曲 雨の介)
7.エイリアンエイリアン(作詞・作曲 ナユタン星人)
8.現代ササクレ学入門(作詞・作曲 なす)
9.R.O.C.K.E.T(作詞・作曲 Torero)
10.ラットが死んだ(作詞・作曲 P.I.N.A.)
11.真夜中の微笑み(作詞 ナナホシ管弦楽団 作曲 岩見 陸)
12.人造人間ナマミマン(作詞・作曲・編曲 マッハ人生)
13.シャルル(作詞・作曲 バルーン)
14.川沿い(作詞・作曲 アキ)
15.再考(作詞・作曲 プロペリン)
16.すきなことだけでいいです(作詞・作曲 ピノキオピー)
17.天樂(作詞・作曲・編曲 ゆうゆ)
18.エンドロールに髑髏は咲く(作詞・作曲 さまぐら)
19.生きろ(作詞・作曲・編曲 100回嘔吐)
20.ガッチェン!(弾き語り)(作詞 ナナホシ管弦楽団 作曲 岩見 陸 編曲 島爺)※通常盤のみ収録
【DISC2】
『島爺ノ弾き語り独りライブver.Ⅱ』※初回限定盤収録
1.デイドリーム・ビリーバー(原題 Daydream Believer)(作詞・作曲 John Stewart 日本語詞 忌野清志郎)
2.悲しみの果て(作詞・作曲 宮本浩次)
3.若者のすべて(作詞・作曲 志村正彦)
4.酒と泪と男と女(作詞・作曲 河島英五)
5.福笑い(作詞・作曲 高橋 優)
6.世界の終わり(作詞 チバ ユウスケ 作曲 ミッシェル・ガン・エレファント)
7.翳りゆく部屋(作詞・作曲 荒井由実)
<全国ツアーチケット先行抽選応募シリアルコードCD封入>
2017年8月2日(水)18:00 〜 8月13日(日)23:00まで
■ライブ情報
『孫を訪ねて82万里~冥土 in Japan~』
9月22日(金)福岡 DRUM Be-1
9月23日(土)熊本 B.9 V2
9月30日(土) 大阪 BananaHall
10月1日(日) 大阪 BananaHall
10月5日(木) 仙台 darwin
10月11日(水) 名古屋 Electric Lady Land
10月13日(金)広島 CAVE-BE
10月21日(土) 札幌 Sound Lab mole
10月27日(金)川崎 CLUB CITTA'
11月5日(日)沖縄 桜坂セントラル
前売チケット:¥4,200(税込・ドリンク代別)
※4歳以上チケット必要