1stミニアルバム『神様、僕は気づいてしまった』リリースインタビュー

神様、僕は気づいてしまったが掲げる“アンチテーゼ”とは?「まずやるべきことは10代の洗脳かも」

「僕らがまずやるべきことは10代の洗脳かもしれない」(東野)

──このバンドで表現したいことについては、当初どのようなことを考えてしましたか?

東野:バンド名の由来にもなってくるんですけど、例えば中二病とかメンヘラとか、世の中にそういうネガティブな要素を形容する造語がいくつかあると思いますが、それを表す負の感情というのは十人十色。そういった人によって形が違う感情を、中二病やメンヘラといった括りに無理矢理押し込んで、それをすべて「ネガティブ」と言い切ってしまうのはすごく浅はかなことなんじゃないかと、昔から思っていて。そういう部分に関してのアンチテーゼというか、その押し込んでしまう行為をこのバンドでは「神様」と擬人化しています。そういった「神様」が世の中にいるのであれば、「神様」は大人たちによる中二病、メンヘラになんでも押し込んでしまう単純さみたいなものに、気分の良さを感じていると思うんですよね。だけど、僕はそれに対して「どうなんだ?」と思うし、音楽を通して「ざまあみろ!」と言ってやりたいなと。それをコンセプトに歌詞を作っていくので、歌詞はファーストプライオリティに置いています。

──なるほど。「神様」という言葉が興味深いのは、欧米だったら宗教観の違いによってそれぞれの「神様」が変わるし、それによって争いも起こる。それに対して、日本人は無宗教に近いのに「神様」という言葉を比較的簡単に使いますよね。僕はこのバンド名を知ったとき、そこに対するアンチテーゼみたいなものも感じました。かなり挑戦的ですよね。

東野:おっしゃったとおり、人間ってどうしようもなくなるとすぐに神様を使う。そこと共通している部分があるなと思って、神様という表現を使っているところもあります。

──ということは、リスナー層としては若い世代を想定しているんでしょうか

和泉:若い人だけに限らず、人はそれぞれ悩みを抱えていると思っています。でも、僕たちがコンセプトにしているような苦悩を抱えているのは若い人が多いかなと。

東野:まず他人事としてではなく、実体験がコンセプトになると思うんです。僕たちがそういった悩みを抱えた10代を過ごしたので、だったら同じような10代の子たちを巻き込んで、自分たちが過ごした10代とは違うものにしてもらえたらなと。救いたいとかそういう気持ちとは違った、純粋に共犯者として巻き込んでいきたいし、当事者として聴いてもらえたらなという部分が強いんです。きっと一番当事者になってもらえるのが10代だと思うので、僕らがまずやるべきことは10代の洗脳かもしれないですね。

「2人とも核が似ていて、結果として神僕っぽくなる」(和泉)

──現在発表されている楽曲は、東野さんとボーカルのどこのだれかさんの2人が作詞を担当しています。そのコンセプトがおふたりの中で共有できているわけですよね?

東野:直接「これは違うよね」みたいなやりとりはしませんが、そもそも書く歌詞のタイプが似ているかなと。あとは暗黙の了解になっているので、必然的に持ち寄る楽曲がそういう楽曲になってくるというのもあります。

──そういう楽曲をバンドの皆さんで肉付けしていくわけですが、そこではディスカッションするんですか?

東野:それは、誰が作曲するかで差があって。どこのだれかはわりとメンバーのスキルを信頼して基本的に任せるスタンスで、とりあえずデモを作って「あとは任せた、好きに煮るなり焼くなりしてくれ」みたいな。レコーディングにも立ち会うんだけど、他のメンバーが弾いたプレイに対しては何も文句は言わず、「いいね! じゃあそれでいこう」という感じ。僕の曲に関しては、デモを渡して「とりあえず好きにアレンジして」と伝えるんですけど、そこから「ここはギターを聴かせたいから、ベースはもうちょっと後ろにしようか」とか「ここはベース、もっと前に出そう」とか、そういうやりとりをする感じですね。

和泉:歌メインのパートだったら、控えめに下を支えることに徹するとか。東野の曲ではそういうやりとりはありますけど、どこのだれかの曲に関してはほぼないですね。

東野:そこは完璧主義かそうじゃないかですよね。

和泉:そうだね。東野は完全に完璧主義で、全部理詰めで決めていくタイプなので。

東野:どこのだれかはランダム性みたいなものに美学を感じるというか、自分の想像の範疇を超えたところから良い曲が生まれるみたいなところに哲学がある人なので、そこに期待しているんじゃないですかね。

──意外とそこはバンド的な考え方ですよね。で、それに対して東野さんは最初の話に出たように、そこを理論的に突き詰めると。

東野:そうですね。もちろんメンバーのことは信頼しているんですけどね。だから、こうしたいとは伝えるんですけど、具体的にこういうフレーズにしてとは言わないで、基本的に任せるようにはしています。

和泉:その意思は尊重してくれます。

──新鮮ですね、そういう人間たちが集まって同じバンドを作ったというのは。タイプが異なるソングライターが2人いるけど、見ている方向は一緒なわけですものね。

東野:そうなんですよね。でも、僕はバンドを組んだことがないから、そのへんはよくわからなくて(笑)。珍しいのかな?

和泉:うん。不思議な感じはありますよね。普通は作曲者が2人いたら、わかりやすく方向が違ったりするけど。

東野:そんな変わらないよね。

和泉:2人とも核が似ているのかな。歌詞の雰囲気とかもそうですし、結果として神僕らしくなっているしね。

神様、僕は気づいてしまった - 僕の手に触れるな

関連記事