4thアルバム『Opportunity』インタビュー
花澤香菜 × 北川勝利 × 山内真治が語る、4thシーズンの集大成 「UKを今のチームで切り取った」
「「誰の曲でも花澤香菜の曲にしよう」というトライがある」(北川勝利)
ーーそして、今回のアルバムのトピックとして大きいものは「FRIENDS FOREVER」ですね。これはSimply Redのミック・ハックネルが作曲を担当しています。これはどういう経緯で実現したんでしょう?
北川:『Blue Avenue』では「Dream A Dream」をSwing Out Sisterのアンディ・コーネルとコリーン・ドリュリーに書いてもらうというのが、いろんなタイミングと幸運が合わさって実現して。今回は「UKサウンド」ということで、UKのアーティストの誰かに参加していただきたいっていうみんなの夢がありまして。それでいろんな方にお願いしたい候補の中に、ミック・ハックネルの名前が出てきて。
山内: Swing Out Sisterのときはいろんな偶然が重なったんです。たまたま彼らが来日していたり、たまたま繋がりがあったり、ある種の奇跡だったんですね。だから今回はそんなに簡単なことじゃないぞ、と思ってたんですけれど、繋がる糸を全部手繰り寄せていったら、結果実現したという。
ーーなるほど。
山内:きっとケンジ・ジャマー(鈴木賢司、Simply Redの中心的メンバー)さんの存在も大きかったと思います。アニメのシーンへの理解もあると聞いていましたし、花澤香菜という名前も知っていていただいてたそうです。
北川:タイミングもよかったみたいで、バンドのみなさんが集まってツアーのリハーサルをしてたみたいみたいなんです。だからデモをミック本人が歌って、ツアーバンドのメンバーで録っていただいた曲がすぐに完成形で送られてきて。
ーーそれはチーム一同盛り上がりますよね。
北川:そうですね。「完全にSimply Redだ!」って。
山内:ただ、いかんせんキーが合わなくて。7音半くらい変えたんですけれど。
北川:そこはいろんなチャレンジがありました。で、このサウンドを活かすために日本語の歌詞を付けるとするなら西寺郷太くんだと思って連絡して。「Simply Redのミック・ハックネルに曲書いてもらってるんだけど歌詞書く?」って言ったら「書く書く! 今すぐやる!」って、すぐに書いてくれました。
ーーミトさんもそうですけど、花澤香菜プロジェクトは関わるミュージシャンがみんな前のめりなんですよね。
北川:そうですよね。返事が食い気味でした(笑)。
ーー花澤さんはSimply Redから曲が届いて、どういう印象でしたか?
花澤:ミックの歌声がとても自由で「こんな風に歌えたら、楽しいだろうな」っていうくらいの表現をされてたんですね。なので、この感じを混ぜて歌えたらいいなって思いました。
北川:結局「誰の曲でも花澤香菜の曲にしよう」というトライがありますからね。郷太くんにも歌録りに来てもらって、「もっとこういう方がいいかな」みたいな話し合いをしながら進めていきました。
ーーSpangle call Lilli lineは「星結ぶとき」を提供しています。彼らもかなり独自のスタンスで活動してるグループですけど、これはどういう化学反応があった感じでしょうか?
北川:Spangle call Lilli lineは2ndくらいのときからお願いしたかったんですけど、その時はタイミングが合わなくて。そこで今回改めてお願いしました。メンバーのギターの笹原(清明)くんからは「花澤さんに寄せた方がいいんですか?」みたいに言われたんですけど、「そうじゃなくて、スパングルのそのままで1番いいものを作ってほしい」って話をして。彼らはデモを作らないんですよ。サポート含めたメンバーでスタジオに入って、ジャムセッションをしながらオケを作って。それをボーカルの大坪(加奈)さんが家に持ち帰ってメロディやコーラスを乗せる。だから「完成までどうなるかわからないんです」みたいな話だったんですけど、最終的には歌詞もプロジェクトでずっと関わってくれてる宮川弾くんにお願いして、すごくいい感じに着地しました。
花澤:この曲はデモをいただいたときから、おしゃれで素敵だなって思って、ずっと聴いてました。ただ、歌うときに表情をつけすぎちゃうと曲の良さとぶつかってしまうかなと思って、結果的にクールに歌ってます。
ーー「FLOWER MARKET」は片寄明人さんが作曲に参加しています。
北川:片寄さんもずっと前からお願いしたいと思っていた方ですね。
山内:それこそ『claire』の時から片寄さんの名前は話には上がっていたんですけど、なかなか巡り合わせが合わなくて。で、ようやく今回実現となりました。実際に北川さんと一緒に片寄さんに会って、一緒に楽曲制作の話しを始めたら、すごく前向きな感じで話が広がっていって。実はこの曲ができていく中で、方向性は二転三転したんです。
北川:片寄さんもいろんなUKのイメージを持ってるんですよね。「こういうのもあるし、こういうのもあるけど、どれがいい?」ってどんどんアイディアを出してくれて。そこから出来上がったのがこの「FLOWER MARKET」だったんです。で、曲が決まってから「メンバーは誰がいい?」って聞かれて。「初期のGREAT3のメンバーとかどうですか?」って言ったら、「いいね」って即答してくれて。
――高桑(圭一)さん、白根(賢一)さんが参加されていますね。
北川:エンジニアに南石(聡巳)さんも呼んで、GREAT3が初期にずっと録ってた大久保のフリーダムスタジオでレコーディングしたんです。2016年末で閉鎖しちゃったんですけど、あそこはみんなの思い出のスタジオなので、そこでみんなでやれたらいいなって。
山内:しかも、演奏メンバーと南石さんのスケジュールとスタジオの空きがピンポイントでピッタリあったんですよ。
北川:そうしたらギターのアイゴン(會田茂一)も「俺も弾きたい」って言ってやってきて。フジファブリックの金澤(ダイスケ)くんも来てくれて。
山内:レコーディング、あっという間に終わりましたね。3時間かからなかったくらいでした。
北川:録り終わったあとはフリーダムスタジオで90年代にどんなひどいことが起きてたかっていうのをずっとみんなで話しててね(笑)。それだけじゃなくて、いろんな人が挨拶にやってきて、写真を撮っていったり、差し入れを置いていってくれたりもして。みんなには「いい機会をありがとう」って言われたんですけど、そこに立ち会えて僕らも光栄です。
山内:「その時になんで私を呼んでくれなかったんですか」って香菜ちゃんが後で拗ねてたんですけど(笑)。
花澤:フジファブリック、大好きなんです! だからなぜ金澤さんがいるときに呼んでくれなかったのかって。
――ははははは(笑)。でもGREAT3が再結成した後にオリジナルメンバーで演奏している機会もそうそうないですし、片寄さんはフジファブリックのデビュー時のプロデューサーですし、そういう繋がりも考えると本当に貴重な機会だと思います。
花澤:そうなんですね。だから、『Opportunity』で悔いが残っているのはそこに私が一緒にいられなかったことだけです(笑)。
山内:ちなみにこの曲、歌詞も面白いんですよ。岩里(祐穂)さんが書いてくれてるんですけど、「UK」「ロンドン」っていうものをモチーフにするという話の中で「撮影に行くならFLOWER MARKETがいいよ」みたいな、そういう現地ガイドを兼ねたキーワードを入れていただいたんです(笑)。
花澤:そうそう。写真をわざわざ持ってきてくださったんです。
北川:「ここのイングリッシュガーデンはいいのよ」ってずっと説明してました。
ーー岩里さんも花澤香菜プロジェクトに関してはいつも前のめりですね。
山内:はい。いつもライヴを観にきてくださいますし、打ち上げにも歌録りのときも必ず顔を出してくれて。仮歌も歌ってくれますからね。
ーー北川さんは5曲ほど作曲していますが、ご自身の中で思い入れのあるもの、ポイントを語っていただいてよろしいでしょうか。
北川:「Marmalade Jam」は、歌と曲調に関してはちょっとチャレンジがありますね。
花澤:そうですね。毎回いろんなことに挑戦させてもらえるんですけど、今回の「Marmalade Jam」は新鮮でした。
ーーセクシーさというか、いわゆる大人の女性の感じが出ている曲ですね。
花澤:そうですね。ロンドンガールの自由気ままな感じとか、ちょっと芯の強い女性の感じとか、セクシーな感じをイメージして歌うは初めてのことだったので。
北川:すこしブラック・ミュージックの感じもあるし、ロックのワイルドさもあるし、可愛い感じではない歌にしようと思ったんです。どういう格好よさに落とし込もうかを探りながら作っていきました。