14thシングル『Elemental World』リリースインタビュー

ChouChoが語る「シンガーとしての矜持」、そしてデビュー6年目の“大胆な挑戦”

 『氷菓』『ガールズ&パンツァー』をはじめとした様々なアニメ、ゲーム作品の主題歌を担当し、透き通るイノセントかつエアリーな声で、作品世界をカラフルに彩り続けるシンガー・ChouCho。昨年はデビュー5周年という記念すべき年を迎え、ベストアルバム『ChouCho ColleCtion "bouquet"』の発売を皮切りに、自身最大規模の全国ツアーを開催するなど、精力的な活動を展開。アニバーサリーイヤーを経て、さらなる地平へと羽ばたこうとしている。

 6年目の今年は、その新たな扉の幕開けとなる14枚目のシングル『Elemental World』を2月15日にリリース。表題曲はTVアニメ『政宗くんのリベンジ』(TOKYO MXほか)のエンディングテーマとして起用され、胸弾む陽光眩しいポップなサウンドと共に、今までにない歌詞による表現方法、歌唱法を披露。次なる世界へと進む彼女に、新たな1ページ目を刻んだ記念碑的作品となった。今回リアルサウンドでは、サイト初登場となる彼女に、歌手・ChouChoの誕生秘話や今作の制作話、歌い手としての矜持などを訊いた。(田口俊輔)

「日本のポップスとは違う、洋楽的な縦のノリを感じた」

 

――「Elemental World」、シンプルなポップでありながら、かなり挑戦的な内容になった作品に仕上がりましたね。

ChouCho:そうですね。「Elemental World」は私にとって新たな試みの楽曲になりました。中でも今回は初めて英詞を大胆に使わせてもらったこと、これが大きい。今までタイアップの歌詞は、作品との整合性やリンクを考えて、おおむね日本語詞で書いていたんですよ。英語を使ってもせいぜいワンフレーズくらい。私としては作品の良さを最大限に引き出すことがタイアップ作の詞を書く時に一番必要だなと思っているので、必然的に伝わりやすい日本語詞になるんですよね。それが今回の「Elemental World」は、サビの幕開けを英詞で飾っていますから。デビュー6年目にして大胆なことをしました。

――その試みは意図的にですか?

ChouCho:いえ、基本作詞は楽曲を聴き、原作を読み、観ながら私の中で作品世界観を膨らませることからスタートをしていまして。今回も作曲者のAstroNoteSさんから楽曲をいただいて、原作を観ながらどうしようかな? と考えてたんです。そこでサビのフレーズを聴いてみたら、今までにないビート感がある展開で、まるで洋楽的だなと思ったんです。その瞬間、「これは英語がハマるな!」とパッと思いついて。ならばと思い、タイアップ作品ではありますが歌詞を一度英語で書いてみて、そうしたら、「おっ、いいね!」という良い反応が返ってきまして(笑)。

――歌詞を書く際の注文はありました?

ChouCho:「ヒロインの安達垣愛姫ちゃんの視点で書いてほしい」、と言われた以外は自由にと。私は『政宗くんのリベンジ』を観て、彼女が子どもの頃からずっと心の奥に大事にしまっている、政宗君への大切な想いが印象的だなと思ったんです。私も子どもの頃から歌手になりたいという夢をずっと大人になった今でも抱いていたりと、きっと誰にでも昔から大事にしまっている大切な想いというものを持っていると思うんです。なので、愛姫ちゃんの政宗君への想いと、人が持つ心の中の熱いもの……私の場合で言うと自分の夢への想いをリンクさせながら書きました。なので、聴く人によっては恋愛の歌に聞こえるかもしれないし、夢を追い続けている人なら自分の夢へかける感情が浮かぶのかもしれない。なので、聴いた方によって色んな捉え方ができるような歌詞に仕上がったと思います。

――このタイトルは「根源的世界」とでも訳せばいいのでしょうか?

ChouCho:“Elemental”という言葉は火、水、土、風、いわゆる四大元素を指すんですけど、もう一つ「起源」という意味があって。自分を作り上げてきた心の中の大切な起源……それが恋心や夢だったりするのかなと。歌詞の持つ自分を作り上げた“想い”の意味を、タイトルからも表せたらいいなと思ってこう名付けました。

――因みにですが、英語はお得意ですか?

ChouCho:得意!……なわけないじゃないですか!(笑)。ただ、その昔カナダに半年留学していたこともあるぐらいなので、もっと英語を使いたいなとは思っています!

――満を持して出したものが、見事成功したわけです。

ChouCho:「これでGO!」と言ってくれた制作サイドの皆様には感謝しかありません。本当にストレートに私らしさがポンと表れました。嬉しいことですよ、『政宗くんのリベンジ』という作品の世界と私が表現したいことが、こうして綺麗にマッチしたわけですから。

――ChouChoさんの声の特徴は“透明感とエモーショナルさ”の融和だと思っております。それが、「Elemental World」では、過去の曲では聴けなかった、力強さを携えているなと思いました。

ChouCho:日本のポップスとは違う洋楽的な縦のノリを感じたので、自然とダイナミクスが効いた部分が出たのかなと思います。レコーディング中もまるで洋楽を歌っているかのようでした。それにオシャレな感じもしましたので、そういう部分を活かそうと自然と出たんだと思います……きっと。

――きっと、なんですね(笑)。

ChouCho:いや、絶対に! 元々洋楽が大好きで、よく聴いたり歌っているので、その部分が楽曲によって引き出されたのかな? 歌詞、歌い方ともに私の中の洋楽的な要素が色濃く表れた作品になりました。

――カップリングの「櫛風沐雨」は、今回はTHE JETZEJOHNSONの藤戸じゅにあさんが手掛けた「Elemental World」とは打って変わってのダークな作風のナンバー。まず、タイトルが……。

ChouCho:読みづらいですよねぇ~(苦笑)。“しっぷうもくう”と読み、「雨風に打たれながら、奔走する」という意味です。まず、タイアップ作のカップリングでは、表題とは違う世界観を出したいなと毎回思っていて。最初の印象ではマイナーコードを軸にした影が見える音作りや展開だなと思い、ふと“雨”のイメージが湧きました。なので“雨”をテーマに書きたいなと思い歌詞を書き進めていきました。

――“雨”というイメージに込めた想いとは?

ChouCho:雨と涙を私の中で重ねて書きました。雨の持つ悲しさが涙にすごくシンクロするなと思い、その物悲しさに焦点を当てて、もがき葛藤し続ける自分の想いを書きました。

 

――深みにある自分の気持ちを表現するためには、自分も深みにシンクロしないといけないと思います。それは厳しい作業なのでは?

ChouCho:色んな自分の面や世界を出せるので、むしろ楽しいぐらい。アニメ主題歌歌手としての私の歌をよく聴いてくださる方は、明るい曲のイメージが強いと思うんです。でも私も人間なので、常に毎日を明るく過ごせているわけじゃなくて、もちろん悩んだり、考えたりします。そういった自分の奥底にある部分を楽曲として形にして歌えることって面白いし、普段口では言えない内面を歌詞にして届けられるって、すごくいいことだなと思うんです。この1枚で、私の持つ陰陽が色濃く出たと思います。その双方共に楽しんでいただければ幸いです。

――<淀んだ水たまりさえ 太陽の光たたえて輝く>という、沈みゆく中で希望の光差す終わりを迎える歌詞が印象深いです。

ChouCho:希望を感じさせるフレーズは必ずどこかに入れたい。それはどの作品にも通じています。私の歌を聴く方には、少しでも前向きになってもらいたいという気持ちが強くありまして。暗く、考えるような歌詞を書いた時も、その暗さに共感をしてもらいつつ、それでも前を向いていこうと思ってもらえるような、そんな言葉を選んでいます。

――サウンドもTHE JETZEJOHNSON流エレクトロ・オルタナロックで、今曲も今までChouChoさんが歌われた曲にはないタイプの楽曲ですよね。

ChouCho:勇壮なバンドサウンドですよね。曲の展開もAメロ~Bメロ~サビという普通の流れでは全くないので、私としても普段とは違う感じで表現しようかなと。

――サウンドがロックテイストでありがなら、むしろミッドテンポの「Elemental World」の方が力強さを感じるぐらいに「櫛風沐雨」の歌声は流麗という言葉がピタリとはまる声なのが印象的です。

ChouCho:「櫛風沐雨」は、音の流れがものすごく雄大だなと思ったので、広い灰色の空を頭の中に思い浮かべながら、空の雲の流れのように“流れること”を意識した歌い方になったからだと思います。

――表現、それの発露、さらには歌詞も書かれて……相当大変な作業ですよね。

ChouCho:フフフ、そうですね。でも言葉や歌い方、表現方法って、曲によって引き出されることが多いんですよ。毎回こうして新しい曲をいただく度に、新しい自分を発見できる。それが楽しんですよね。またこうして新たな私が表現できたということで、この「Elemental World」、「櫛風沐雨」で、2017年はいい幕を開けたんじゃないかと思います。

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