メジャー1stシングル『生きていたんだよな』リリースインタビュー

あいみょんが明かす、リアルな歌と言葉が生まれる瞬間 「古い人間のままではいたくない」

 注目の女性シンガーソングライター、あいみょんのメジャーデビューシングル『生きていたんだよな』が11月30日にリリースされる。

 その才能をリアルサウンドも早くから追いかけていたわけだが、あいみょんのデビューシングル、やはり破格だった。

 日常で起きた事件を凝視するような表題曲、ポップな曲調にトゲのように刺さる言葉が印象的な「今日の芸術」、そして男性目線で描かれる男女の風景を切り取った「君がいない夜を越えられやしない」の3曲から感じるのは、まるで生まれたばかりの赤ん坊のような強烈な生命力と可能性に満ちた未完成の迫力だ。

 あいみょんが育った環境や音楽的バックボーン、そして曲が生まれる瞬間についてなど、今、この時しか語れない内容満載のインタビューとなった。(谷岡正浩)

「言いたいことを制御してるとか、そういう感じはまったくないです」

ーー大家族だったんですよね?

あいみょん:そうです。甥っ子とかも一緒に住んでたんで、それも入れると9人ぐらいでずっと生活してました。だからポテチなんて普通のサイズのだと一袋3秒くらいでなくなりますよ。そうするとみんな性格悪くなって、お菓子とか隠し出すんですよ(笑)。飲みかけのジュースとかに自分の名前書いて冷蔵庫にしまったり。

ーーいかに自分のぶんを確保するか、みたいな。

あいみょん:そうです。わりと真剣に(笑)。

ーーそういう環境がご自身の表現に影響を与えていると思いますか?

あいみょん:思いますね。最初の頃は何とも思わなかったんですけど、でもよくよく考えたら大家族って今時めずらしいし、大家族ならではの生活をしていたので、曲作りにめっちゃ影響あるんだろうなと思います。ひねくれた性格なんですけど、それも大家族だったからかなとか思ったりしますね。

ーーある意味特殊な環境で育って良かったんじゃないですか?

あいみょん:昔は、コンプレックスというか嫌だったんですけど、今思えば良かったなって思います。一人でいるよりも得られることは絶対多かったんで。

ーー部屋も一人部屋とかではなかったんでしょう?

あいみょん:それが、中学からは一人だったんですよ。ボロいけど大きい家だったんで。ぜんぜんお金持ちとかではないんですけど。

ーーじゃあ一人で音楽に向き合える環境はあったんだ。

あいみょん:いや、そんなこともなくて。やっぱりギター弾いたりしてると、うるさいなあとかはありましたし、曲作って録音してる時に「ごはんやで〜」みたいな(笑)。そういうことはしょっちゅうありました。だから音楽を集中してやれる空間はとくになかったです。

ーー兄弟の中で音楽をやり始めたのはあいみょんだけなんですよね?

あいみょん:そうなんですよ。弟もちょっと興味を持ったりしていたみたいですけど、やってるのはあたしだけですね。

ーーお父さんの影響なんですよね?

あいみょん:それが一番でかいですね。

 

ーー最初の曲ができた時の気持ちって覚えてますか?

あいみょん:あー。恥ずかしいとか普通に思ってたと思います。誰かに聴かせたいって感じではなかったですね。

ーーそれは中学生の時?

あいみょん:そうです。

ーー曲を作ろうと思ったきっかけは? それとも気づいたらできてた?

あいみょん:もともと詩を書くのが好きというか、文章を書くのが得意なんですよ。だからそこから始まったという感じなんですよね。最初は音楽とかなんにも考えずに詩を書いてて、で、家にギターがあったから、ひょんなことからギターを弾くようになり、メロディーを作るようになり……というのを積み重ねていったら曲になってました。

ーー今も曲を作る時は言葉からなんですか?

あいみょん:今は、言葉もメロディーも並行して作るって感じですね。同時進行です。

ーーじゃあ言葉とメロディーが影響しあいながら一つの曲になっていくんだ。

あいみょん:そうですね。どちらかが最初にどかんとできることはないですね。今までそうやってできた曲は1曲もないかな。

ーーデビューシングル曲「生きていたんだよな」は、言葉が先にできたのかなと思ったんですけど。語りから始まるから。

あいみょん:ギターを弾きながら言葉を探って、みたいな感じだったので、いつもと一緒ですね。そんなに時間をかけて作った曲ではないんですよ。曲自体は1日くらいでできたんじゃないかな。これは上京してくる前、実家で最後にできた曲なんですよ。

ーーAメロを語りにしようと思ったのは?

あいみょん:今まで語りから入る曲ってなかったんですよ。だから新しいチャレンジでもあるしって感じですかね。

ーーふと目にした事件を語りで伝えるところから始まる衝撃的な歌なんですけど。順に伺うと、まず、傍観者ではいられない、という思いが強く伝わってきますね。

あいみょん:あ、うれしいです。ほんと、そういう状況です。あたし落ち込むようなニュース見るとすっごい考えちゃうんですよ。その人の気持ちになるとかじゃないんですけど、見てるだけじゃいられなくなるというか。

ーー「生きていたんだよな」って言葉も生々しいですよね。リアルにその場で見ている感じが伝わってきます。だけど全体を通して聴くと、不思議とノンフィクションな手触りはないんですよね。どちらかと言うと、あいみょんの心象風景を覗いたような感じです。だから僕は、この歌は一人の少女が大人になろうとしているまさにその境界を飛び越える瞬間の歌なのかなと思いました。

あいみょん:あーなるほど。この曲へのリアクションが様々で。人によって違う感じ方が返ってくるので面白いですね。そんな捉え方があるんだなって私の方が逆に勉強になるっていうか。自分でもそこはいい意味でふわふわしているんですよ。応援ソングでもないし、野次馬を批判しているわけでもないし、絶対生きなきゃダメなんだよっていう曲でもない。だから聴く人によっていろんな捉え方ができるのであれば、それが一番嬉しいですね。

ーーどの曲にも共通しているんですけど、あいみょんの言葉ってキッパリしてるし強いけど、決めつけるものではないですよね。なんか、善と悪と、右と左と、男と女と、いろいろな物事の真ん中に立っている言葉、というような気がします。

あいみょん:まったく自分では意識的ではないですけどね。ひとつ言えるのは、言いたいことを制御してるとか、そういう感じはまったくないです。放送禁止用語を使うのはやめようとか、それくらいは考えますけど(笑)。あとはぜんぜん。

 

ーー他に詞を書く時に意識していることはありますか?

あいみょん:キレイごとを書かないってことが一番ですね。歌ってる時は自分でも何考えてるんだろって思うんですけど。

ーーん? それはどういうこと?

あいみょん:あたし、歌ってる時って自分でもよくわからないんですよ。べつに楽しいって感情でもないし、ステージからの景色がいいなーとも思ってないし。で、ステージ降りた時に、あの時何考えてたっけ?っていう感じなんですよね。

ーーある種のトランス状態なんですかね。

あいみょん:なんでしょうね(笑)。空っぽで、素直に、とにかく伝わればいいやって感じです。

ーー歌っている時に音楽の中に入っていく、みたいな感じはあるんですか?

あいみょん:いや、そういうのはないです。

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