nano.RIPE きみコが語る、メンバー“卒業”と新体制の決意「ここでバンドを終えるのは絶対に違う」

「“効率よりもおもしろさ”ですね（笑）」

——きみコさん自身のバンド観についても聞かせてください。nano.RIPEはメンバーチェンジを何度か繰り返しながらも、基本的には4人編成で活動を続けていて。きみコさんのなかにも“バンドは4人”というイメージがあるんでしょうか？

きみコ：うん、ありますね！　ずっと4人編成のバンドに憧れてきたので。3ピースもカッコいいし、鍵盤がいるバンドもいいなと思うし、デュオで素晴らしい音楽をやっている方々もいらっしゃいますけど、自分がやるのは4人編成のバンドで、しかも“女ひとり、男3人”っていうのが何となくあるんですよね。どういう憧れなんでしょう（笑）。最初のきっかけはスピッツだったんですけど。

——nano.RIPEはきみコさんが作詞作曲、ササキジュンさんが作曲を担当していて。ふたり体制でも活動はできると思いますけどね。

きみコ：そうなんですよね。来年以降、しばらくは新メンバーを探すのではなくて、ふたりで曲をたくさん作ろうと思っているんです。今回のアルバムでもいろいろなアレンジャーさんに参加してもらって、「こういうnano.RIPEもあるんだな」という発見がたくさんあったし、この機会を活かして、新しいアレンジャーの方やリズム隊の方と曲を作っていこうかなって。ただ、ライブは4人でやりたいんですよ。しばらくはサポートの方に手伝ってもらうことになると思いますけど。

——バンドというスタイルがホントに好きなんでしょうね。

きみコ：そうですね（笑）。いまは機材も発達しているし、すごいクオリティの曲をパソコンだけで作れるじゃないですか。それはそれでいいと思いますけど、「このままだとバンドがいなくなってしまう」という寂しい気持ちもあって。レコーディングスタジオもなくなっちゃうんじゃないか、とか。そこに抗いたい感じはありますね。nano.RIPEの楽曲にもいろんな音が入ってますけど、スタジオに入って、4人で“せーの”で音を出すレコーディングはこれからも続けていきたいので。

——『スペースエコー』もベーシックは4人で録ってるんですよね？

きみコ：はい。ジュンはいろんな音楽に興味があって、すべて打ち込みで完成させることも出来るし、いまはそっちのスキルを上げようとしているんです。それは彼の財産になるし、この先いろいろな形で活かせると思うんですけど、nano.RIPEとしては“4人で作って、4人でドカンと録る”っていうのが理想ですね。

——オーソドックスなバンドのスタイルですよね。

きみコ：非効率的ですけどね（笑）。打ち込みだけで完成させた音楽も素晴らしいけど、なかなか想像の範囲を超えないと思うんです。nano.RIPEではジュンがデモ音源を作っていて、その段階でドラムとギターはガッチリ入ってるんですけど、バンドでやってみると予想を遙かに上回るんですよ。もともと他人である4人が集まって、nano.RIPEという目的だけでつながる——それはすごいことだと思っていて。たったひとつの目的のために4人が音を出して、そこで化学反応が生まれるわけじゃないですか。それはすごく人間らしいし、おもしろいんですよね。ライブではそれが特に出ますね。そのときのテンション、お客さんの空気感によって、曲もいろんな表情に変わっていくので。“効率よりもおもしろさ”ですね（笑）。

——効率の良さよりも、メンバーと一緒に音を出したときのおもしろさを選ぶと。

きみコ：大変なこともありますけどね。人間的に合わないとめんどくさいし、どんなに相性が合っても、どうしてもズレはあるので。ただ、そっちのほうがおもしろいんですよ、やっぱり。

——そういうスタンスだと当然、ライブが大事になりますよね。

きみコ：うん、そうですね。もちろん曲作りも好きだし、制作の過程も楽しいんですけど、それも全部ライブをやるためなので。ライブのために新しいCDを作って、それを持ってツアーに行くっていう。CDをリリースしただけでは、決してゴールではないんですよね。

——スピッツも毎年のようにツアーを続けてるし。

きみコ：いまも長いツアーをやってますからね。あたしも3回観に行かせてもらいましたけど、すごく良かったですし、そういう活動の在り方にも影響を受けてるんです。草野マサムネさんはすごいところまで上り詰めた方なのに、プロデュース業や楽曲提供がすごく少なくて、あくまでもバンドマンというか、ずっと”スピッツの草野マサムネ”じゃないですか。ソロもやらないし、そういうのは本当にカッコいいなって。あたしもあくまでも“nano.RIPEのきみコ”として永遠に歌っていきたいんです。

——終わるときが来るまで、ずっとバンドで歌っていきたいと。

きみコ：はい。今回抜けるリズム隊のふたりは、ベーシスト、ドラマーとしてさらに技術を磨くために脱退という選択肢を選んだんです。だからぼくらもnano.RIPEをもっと進化させていかないと。あのふたりに「nano.RIPEカッコ良くなったな」と思ってもらわないとダメだという気持ちがすごくあるんです。

——めちゃくちゃ前向きですね！

きみコ：そうですね。今回“卒業”という言葉を使ってるんですけど、「いつか訪れるときが来た」という感じなんです。卒業式って、寂しさと同時に“この先に新しい人生が待ち受けている”というワクワク感もあるじゃないですか。あたしもまさにそういう感じなんですよね、いま。

（取材・文＝森朋之/撮影＝はぎひさこ）

■リリース情報
『スペースエコー』
発売中
価格：初回限定盤　￥3,400 (tax out)
　　　　　　　　通常盤　￥3,000 (tax out)
　　　　　　　　ハイレゾ版　￥3,500 (tax out)

＜収録内容＞
【初回限定盤(CD＋ライブCD)】
01.　SN1998A
02.　ルミナリー
03.　ライムツリー
04.　システム
05.　こだまことだま
06.　アナザーエンド
07.　ティーポットのかけら
08.　日付変更線
09.　スノードロップ
10.　在処
11.　イタチ
12.　ものがたり
13.　ディア
14.　終末のローグ

・ライブCD（nano.RIPE LIVE TOUR 2016 ｢百式｣ 東京公演）
2016.05.22 Live at Shibuya CLUB QUATTRO
01.　SE 百式
02.　タキオン
03.　うつくしい世界
04.　バーチャルボーイ
05.　ライムツリー
06.　こだまことだま
07.　神様
08.　希望的観測
09.　ナンバーゼロ
10.　最短距離で
11.　嘘と月
12.　リアルワールド
13.　サクゴエ
14.　ハロー
15.　ツマビクヒトリ
16.　空飛ぶクツ
17.　ハナノイロ

【通常盤(CD)】
01.　SN1998A
02.　ルミナリー
03.　ライムツリー
04.　システム
05.　こだまことだま
06.　アナザーエンド
07.　ティーポットのかけら
08.　日付変更線
09.　スノードロップ
10.　在処
11.　イタチ
12.　ものがたり
13.　ディア
14.　終末のローグ

【High-Resolution Audio】
形式：flac【96kHz/24bit】 / WAV【96kHz/24bit】
e-onkyo
mora
music.jp

■ライブ情報
『nano.RIPE TOUR 2016　「ルミナナリー」』
2016年10月22日（土）東京都 WWW
2016年10月23日（日）東京都 WWW
2016年11月3日（木・祝）大阪府 OSAKA MUSE
2016年11月5日（土）石川県 Kanazawa AZ
2016年11月12日（土）北海道 COLONY
2016年11月20日（日）愛知県 ElectricLadyLand
2016年11月26日（土）宮城県 仙台MACANA
2016年12月3日（土）福岡県 DRUM SON

『nano.RIPE TOUR 2016 FINAL「スーパーノヴァ」』
日程：2016年12月25日(日)
会場：東京都 新宿ReNY
時間：OPEN 15:30 / START 16:00
チケット：前売 ￥4,500(税込・ドリンク料金別)
プレイガイド：一般発売日 2016年11月26日(土)
チケットぴあ　（Pコード：297-119）　TEL : 0570-02-9999
ローソンチケット　（Lコード：73802）　TEL : 0570-084-003
イープラス

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