1st EP『Sweet Clapper』インタビュー

livetune+が見出した、ポップスとライブの新たな可能性「完璧である必要性はない」

 「Google Chrome -初音ミク編-」のCM曲「Tell Your World」を筆頭に多くの楽曲を手掛けてきたkzによるソロプロジェクトlivetuneと、青文字系モデル&シンガーとして活動するやのあんなによる新ユニット、livetune+のデビューEP『Sweet Clapper』が完成した。

 kzがプロデュースを担当し、やのがボーカルを務めた2013年の『ステラ女学院高等科C3部』主題歌「Shape My Story」の制作を通して出会った2人は、豪華ゲストをフィーチャーしたlivetuneの2014年作『と』の収録曲「オール・オーヴァー」(『魔法少女大戦』のOP曲)でふたたび共演。livetune+として初の作品となるこの『Sweet Clapper』では、タイトル曲を筆頭にきらめくシンセや全編にちりばめられたクラップ、そしてやのの伸びやかなボーカルを生かした、ライブ感のある歌ものポップスを追求している。と同時に、『おもちエイリアン』のDVD作品に提供した「そふとたっち」や、今回初めてタイアップなしでの作業となった「スローペース」や「Darling Darling」のような楽曲には、固定ユニットとして結成されたこのグループならではの成熟した魅力も感じられる。

 互いが影響を与え合うことで、それぞれの新たな表情が引き出されていくlivetune+というユニットは、果たしてどんな風に生まれたのか。2人に訊いた。(杉山仁)

「バンドでのライブにある一回性に惹かれた」(kz)

ーーkzさんとやのさんは「Shape My Story」で初めて出会ったと思いますが、いわゆる「プロデューサーとシンガー」というよりも、よりフレンドリーで何でも言い合えるような関係を築いているイメージがありますね。

kz(livetune:以下kz):でも、「オール・オーヴァー」の頃までは、まだちょっと「プロデューサーとシンガー」という雰囲気だったんですよ。

やのあんな(以下やの):特に最初の「Shape My Story」の時は私もガチガチで。まあ、「オール・オーヴァー」の頃にはそんなに「プロデューサー」って感じではなかったかもしれないですけど。

ーーそもそも、お互いの第一印象はどんなものだったんですか?

kz:“変な人”ですかね(笑)。「Shape My Story」がアニメの曲だったので、「アニメは観ますか?」と訊いたら、まず「今期は……」というワードから始まって、挙げた作品も「そこ行くか」というものばかりで(笑)。

やの:kzさんもアニメが好きだと思ったんでぶつけてみたんですけど、ちょっと引かれちゃって。

kz:別に引いてたわけじゃないよ。「『化物語』と『魔法少女まどか☆マギカ』が好きです!」って言われるよりは全然いいなって思っていましたね。

ーーやのさんは、会う前からkzさんのことを知っていたんですか?

やの:最初は知らなかったです。でも、「ボーカリストを探している」という話を聞いて調べてみたら、初音ミク系の知っている曲を沢山作っている人で「この人だ! すごい」って。

ーーそれから徐々に仲良くなっていったと思うのですが、その中でお互いについて感じるすごさのようなものがあれば教えてください。

kz:(即答で)傍若無人なところですね。やのは失礼なことをしても憎めない人というか。僕はそれって才能だなって思っていて。

やの:でも、そのおかげで(kzさんと)仲良くなれたので(笑)。逆にkzさんのすごいところは、色んなことができるのに、それを「すごいでしょ」という感じにしないこと。

ーーそんな2人が、今回livetune+を結成したきっかけとは。

kz:最初は、僕が一緒に組めるボーカリストを探すところから始まったんです。『と』の曲の中で一番最初に作った「Transfer adding 中島愛」をレコーディングする以前からずっと探してはいたんですが、そうそういるわけでもなく。『と』を作り終わった時に、「そういえば近くにいたじゃん」と、やのの存在に気付いたんです。ユニットを組むとなると、地方を回ったり、クルマで何時間も一緒にいなければいけないので、友達のような関係性の人と始めたいと思っていたので、そういう意味で適任かなと。シンガーとしても、テクニックだけならもっと上手い人はいますが、やっていくうちに成長が見られるのも楽しいと思ったし、すでに完成された人とやっても、想像の範疇にしかならないかなと。そこで1年半くらい前に「一緒にやる?」と声を掛けたのが最初でした。

ーーやのさんは話をもらった時、どう感じましたか。

やの:実は私、昔からずっと音楽をやりたいと思っていて。

ーー高校の頃は軽音部でギター&ボーカルだったんですよね?

やの:そうなんです。「いつかは音楽業界の人になる」って、誰にも言わずに企んでいて。 「Shape My Story」を出してもその実感はなく、「どうやったら音楽の世界に入れるんだろう?」と思っていたので、私としては声を掛けてもらって「よっしゃ!」という感じでした。

ーーそしてこのlivetune+では、kzさんが作る楽曲も変わってきている印象があります。

kz:そうですね。今回はライブをやりたいという気持ちがあって、ゆくゆくはバンド編成でもやることを見据えているんです。今までは打ち込み100%の純然たるダンス・ミュージックが多かったけど、最近はバンドの友達が増えたこともあるし、その友達のライブを観に行く機会も増えて、一周回って「やっぱり楽器っていいよな」というところにいる状態で。だから、後々ドラムの方に参加してもらうこともできるように、柔軟性のある作り方をしています。たぶん、ライブをやっていくうちに、アレンジも全部変わっていくと思いますね。ちょっとしたら全部ライブ用にアレンジを変えると思うし、バンド・バージョンもできるでしょうね。もちろん、DJでも色々なプレイが可能ですが、バンドでのライブには、一回性があるというか。ギター・ソロをミスしたり、入りのタイミングを間違えたとしても、それはそれでひとつの思い出になる。そういうトラブルを起こしたいから生(演奏)にしたいんですよ。

ーー実際、楽曲はライブを意識したものが多いと思いますが、特にタイトル曲の「Sweet Clapper」は、曲調も歌詞もMVの振り付けも、それを象徴する楽曲になっていますね。

やの:そうですね。この曲の振付は、クラップ以外の部分の振りも誰でも出来るものになっているんです。

kz:僕が自分でDJをしたり、友人であるUNISON SQUARE GARDENのライブを観に行ったりすると、みんなAメロなどの平歌でクラップをやるんですよね。それってサビに対するビルドアップとしてのクラップではなくて、平歌でクラップしちゃう「ジャパニーズロックバイブス」のようなもので、それが良いと思えるようになったので、livetune+の曲を作り始めたんです。そこで最初に作ったのが「Milky Rally」の手拍子部分で、そういうクラップの打ち方や、みんなで歌ったりするというベタなライブ感を全部入れて作ったのが「Sweet Clapper」ですね。

ーー具体的に参照元になったアーティストはいたんですか?

kz:いや、単純に自分が行ったライブでの思い出を詰めた感じでした。もしくはZeddのようなシンガロング感とか。きゃりーの曲にもクラップがあるし、バンドだとサイサイ(Silent Siren)さんのライブを観た時にもみんなでクラップをしていて、「楽しそうだなぁ」と思ったりして。でも、ここでやっているのは基本的にクラブ・ミュージックなんですよね。「クラップして歌ってジャンプする」ってただのEDMですから。マインド的には、形を変えたEDMという感じなんですよ。

kz

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