アルバム『ROLL-B DINOSAUR』インタビュー

織田哲郎✕ダイアモンド✡ユカイが語り倒す、ROLL-B DINOSAURの“ロックンロール哲学”

織田哲郎

「バカになった時のロックって最強」(ユカイ)

ーーそれが今回のアルバムであるということなんですね。今作はパンキッシュな面もあって、UKロックの香りが強い印象がありました。

ユカイ:自分の憧れた世代的なことを考えると、まあ、全部イギリスのバンドだったんだよね。だから自然と、少なからずパンクの影響を受けた自分の表現方法というものも出ているのかな。RED WARRIORSもデビューした頃はパンクみたいな面もあったし、それも含めてロックンロールっていうか。だから、「Roll-B Dinosaur」という曲は、ブルー・ノート・スケールの、ロックのおいしいところがみんな入っている楽曲で。面白いのは、それでもポップなんだよね。こういう楽曲って今時あるようでないなと思う。それは自分の得意な場所でもあって。

――確かに、ロックンロールを追求すると渋くなってしまうケースもあるかもしれませんが、今回の作品はとにかく弾けています。

織田:俺にとって、ロックンロールってずっとポップな音楽だったからね。今でもそうじゃなければいけないと思ってる。同時に、ロックンロールはあくまでブルースがメインで進化してきた音楽だから、それを表現できるボーカリストは、やっぱりユカイくんくらいしかいないと今も思う。ポップさはあっても、ブルースがきちんと感じられる歌じゃないと、やっぱりイヤなんですよ。結果としてポップなものでありたい、というだけで。その時その時にいい音楽って、俺は全部ポップだと思っていて。例えばピストルズなんて、大ポップだしね。

ユカイ:すごいよね。今聴くと、みんなポップな曲だと思う。

織田:普通にポップスだよね。だからハードロックであれ、パンクであれ、どういうジャンルでも、やっぱりいい曲はポップなんだ。そういう“アピール力”っていうのは、強いものじゃないとやっぱりつまんないなと思うから。だから、あくまで俺はそういうもののつもりで作ってる。制作も神懸かり的な勢いでできていきましたね。作詞は特に一日おきにできるっていう感じで。

ユカイ:ドライブから帰ってきたら、もうできてる(笑)。

織田:コースがあるんですよ。あのコースにドライブすると一曲書けちゃうっていう。

ユカイ:その詞がすごくいいなって思って。俺はとにかくいい曲を歌いたいという気持ちが強いから、うれしい限りだよね。

織田:でもね、例えば「教訓」なんかにしても、「Roll-B Dinosaur」にしてもね、ユカイくんは歌詞を作るにあたって面白いことを言うのよ。特に「Runaway from Chicago」はすごかったね。“アル・カポネから逃げてるストーリーで!”なんて言われて、俺そんなこと頭になかったから、かなり新鮮だった。それで、バーと書いちゃったんだけどね。

ユカイ:アル・カポネから逃げる男。そこにもしかしたらラブストーリーもあったりして……とか、映画的な感じで言ったかな。そういうテーマみたいなのを言ったら、“いいね~!”とか言うからさ(笑)。そしたら、次の日にはもう歌詞ができてた。 

ーーユカイさんのイメージが曲になっていることも多いんですね。

織田:いいコンビネーションで面白いものができたなって思いますね。

ーー「馬の耳に念仏」はユカイさんが詞を書かれたんですよね。

ユカイ:最初に聴いた時、いいメロディーだなっていうか……何処にもないようなメロディーだと思ったんだよね。で、すごいエンターテイメント色も強いし、ジャジーで、それでいてロックなんだ。歌詞について言うと、“バカなオトコ”がテーマになって。みんなそういった側面は持ってるじゃない? フェイセズのアルバムの邦題で『馬の耳に念仏』(1971年)というのがあったのを思い出して、たまたまライブで「馬の耳に念仏」って言ったら、それがタイトルになっちゃった、みたいな(笑)。歌っているのはオトコの情けない部分なんだけど、それが自分の世界だし、バカになった時のロックって最強だしね。バカみたいなことが素敵で、それがすべてなんだ、ということを歌いたかった。シャンパンの泡みたいにすぐに消えちゃう瞬間がすべて。『あしたのジョー』が燃え尽きて白い灰になるみたいに、馬鹿でカッコよく刹那に歌おうと(笑)。

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