ご当地限定シングル『MUTOPIA』インタビュー

BIGMAMA金井政人が語る、音楽とエンターテイメントの未来「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」

 

「これまでやってきたことと新しいチャレンジを上手く繋げるストーリーを描きたい」

ーーさきほどEDMとバンドサウンドをBIGMAMAなりのやり方で融合させるということを言っていましたが、そういう発想はどこから生まれてきたんでしょう?

金井:ざっくりと、自分の中では「AVICII以降」という感じなんですね。もともとEDMシーンは自分にとって遠いものだと思ってたんですよ。DJがやってるものだって。でも、AVICIIを聴いた時に、アコースティックな楽器が鳴ってるのも印象的だったし、「あ、こんな解釈も全然あっていいんだ」って思った。あとは、サマソニでZEDDも観ましたけれど、EDMの代表的なアーティストが何万人のオーディエンスを盛り上げる光景を見て、それに対して単純に何を思うかって、ロックバンドとしてのジェラシーなんですよ。

ーー嫉妬を感じた。

金井:でも、ジェラシーだけで終わらないためにやれることもたくさんあって。それこそサマソニでClean Banditも出てましたけれど、彼らはデジタルな音像とバイオリンの旋律を同居させていて。僕らも最近のライブではドラムのリアド(偉武)が生ドラムとエレドラの二刀流になっているんです。そういうところから、新しいチャレンジに対する欲求が強くあった。「ロックバンドとして、しかも日本人的な解釈でやってみたい」と思ったんですね。もともと自分達は速いビートでライブハウスを盛り上げてきたバンドだし、そこに自信も自負もあるけれど、これまでやってきたことと新しいチャレンジを上手く繋げるストーリーを描きたいと思ってたんです。それに、作った時にはもうライブで演奏しているときの無敵感も予想できていたし、10年後も自分が誇っていられると思った。そういうジャッジができていたんで、こういう曲になったんですね。

ーーたしかにここ数年の海外の音楽シーンを見てると、特にAVICIIとMumford & Sonsは象徴的ですよね。一方はEDMで、一方はカントリーの出自で、それがどっちもスタジアム・ロックとして機能している。日本でも当然そういう動きに刺激を受けるミュージシャンはいるだろう、という気がします。

金井:でもそこで、まだ誰も抜きんでていないと思うんです。だからチャレンジしがいがある。今は洋楽と邦楽のタイムラグがあるような状況でもないですからね。そういうことをちゃんと頭の片隅に置きつつ、自分たちがロックバンドとして作ってきた文脈に要素としてどう加えるかというだけの話なんです。そこには自分なりのバランス感覚みたいなものがあって、それは言葉にするのは難しいんですけど。

 

ーーこの曲のビートスタイルっていうのはどういう風に組んでいるんですか? 単純な四つ打ちではないですよね?

金井:ドラムのリアドが単純な四つ打ちを嫌うんですよね。彼はドラマーとしてのこだわりもあるし、飽きさせないドラミングを意識しているんで。仮にキックを四つ打ちで踏んでようと、そう聴こえさせないテクニックを使っていたりする。ビートって、僕は建築の土台だと思うんです。その上に何が乗ってて、曲を聴いた時に何が記憶に残るかが重要。この曲では、バイオリンのリフが、こういうサウンドメイキングの中でいい意味での違和感として残ればいいなっていうのが最初にあって。そこに自分がメロディーと言葉をいい形で想起させることを考えていた。だから、リズムに関してはリアドに任せきってるところがありますね。

ーー実際、この曲はバイオリンの高揚感があるフレーズが一つのキーポイントになっていますよね。これが生まれた時にも手応えはありました?

金井:スタジオでメンバー全員盛り上がりました。たとえば料理だったら、強い火力でパーッと調理したら美味しいものになったりするじゃないですか。この曲ではそれと同じ現象が起きたと思っていて。ほんの数時間のスタジオで、それぞれがそれぞれの気持ちいいものを追求した。みんなで「ここの音符がこうなってて」という会話を作りながらするときもあるんですけれど、この時は全くしてなくて。自然と曲の向かう方向がそうなっていったんです。

ーーその時の感覚として、ライブでも一つのアンセムとして響くはずだという直感があった?

金井:ありました。今までで一番強い曲を書けたと自分の中では思ってます。

ーーそういう曲ができて、歌詞もそれにハマるものが書けたからこそ、バリエーションを変えてもOKっていう発想になった?

金井:そうですね。1曲目の歌詞を変えて出すという形だったら抵抗があったと思います。この曲のあるべき姿、自分が思う一番格好いいものは1曲目で歌ってるものなんです。僕の中では<傷なんて舐め合えば 朝には消えるだろう>っていう一言が言いたくて。ただ、ツアーで歌う中で、場所ごとによって地名を変えたくなったんですよね。それって、自分が好きなバンドのライブを観て嬉しかったことの思い出の中にちゃんとあるものだし。

ーーたしかに、ツアーだとその土地の名前を歌に盛り込んだりしますもんね。それをレコーディングされたパッケージでもやってみよう、と。

金井:ただ、計7回レコーディングして、コーラスを入れるというのは千本ノックのようなレコーディングでした(笑)。ジャケットも7パターンをスタッフと一緒に作ってチェックして、作業は思ったより大変でしたね。

ーーでも、これはやった甲斐はあったと?

金井:思います。手応えはありますね。

 

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