ニューアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』インタビュー【後編】

RHYMESTERが示す、プロテストとしての音楽表現 DJ JIN「美しくあろうという気持ちが大切」

「歌に時代の空気を落とし込む」(Mummy-D)

――それを踏まえた13曲目の「サイレント・ナイト」では、Dさんがお子さんに対してストレートにメッセージを送っています。

Mummy-D:アルバムを通してずっといろんな話をしてきてさ、「人間交差点」でひとつになる瞬間があって、その後、みんな別の方向へ行くわけじゃん? だから、RHYMESTERの曲ではあるんだけど、それぞれ、メンバーが家に帰ったあとのオフみたいな雰囲気が出ればいいなぁと思って、オレはパーソナルなことを歌っちゃったっていう。

――テーマとしては、「WELCOME2MYROOM」(『グレイゾーン』収録曲)と近いわけですけど、あれから10年経って、RHYMESTERも変わったんだなぁと思いました。

宇多丸:そうだよね。あれは、凄い汚い部屋のことを歌ってるじゃない。物と一緒に、世の中への不満も溜め込んでるような。今回の部屋はそんなに汚くないよね。ちゃんと整理してる。

――あと、「サイレント・ナイト」の、〝ひとり〟がテーマであっても、家族がいたり、だからこそ、ひとりの時間を貴重なものとして捉えていたりするところにも時間の経過を感じました。

宇多丸:みんなもっと、ひとりの時間とか孤独な時間と上手く付き合えばいいのになって思うんだよね。孤独ってそんなに嫌なものじゃないよ。孤立じゃなくて、孤独ね。孤立は悲しいけど、孤独とは上手く付き合うべきだと思っていて。みんな、寂しがりすぎだよ。寂しくないじゃん。

――「寂しいの楽しいじゃん」って?

宇多丸:そうそう、何故なら寂しくないから。本当には。

――宇多さんのヴァースは結婚したのにひとり感あるなぁと思いました。

宇多丸:やっぱりひとりっ子だし、ひとりの時間が心地良いんだよね。だから、「オフの話を書こう」ってなった時も、「オレはひとりの話だな」って思った。「ひとりでいいんだぜ」って。いわゆる〝お一人様〟じゃないけど、オレはひとりで<USJ>行ったりとかするしさ。 もちろん、奇妙な振る舞いに見えたかもしれないけど、オレは本当に冗談抜きで〝ひとり<USJ>〟が最高に楽しかったの。全然問題ないっす。そりゃあ、一生ひとりだったら悲しいけど、夜はみんなで一緒にごはん食べるんだもん。全然寂しくない。今回、その感じが出せないかなぁと思って、ちょっとそこで、SNSに嫌みを言ってしまいましたが。四六時中、繋がってなくてもいいじゃないと。

ーー「人間交差点」で多様性の大切さを歌ったあとだからこそ、個の大切さが沁みてくるというのもあります。

宇多丸:同じことだからね。他人と認め合えるっていうことは、自分をしっかり持つということだから。

――多様性も大切だし、孤独も大切だと。

宇多丸:そうそう。

――さて、ラストの「マイクロフォン」です。ここで、戦いがモチーフになっているから、さっき言ったような戦前的なイメージを持ったのかもしれません。

宇多丸:そこは本当に無意識だな。ただね、〝スタイル・ウォーズ〟って言葉が好きで。それこそ、多様性を認めた上で、個と個がぶつかりあうっていうか。あと、この曲をつくってた時にDと話していたのは、マイクっていうのは意見を伝えるためのものだから、単なるラップのボースティングものを超えて、普遍的な意見を個として言う曲にしょうってことで。責任を持ってものを言う全てのひとに向けた曲になればいいなと。

――「そしてまた歌い出す」(11年発表、アルバム『POP LIFE』収録曲)を思い出したりしました。あの曲は3.11の直前に発表されて、その後、謹慎ムードの中で音楽が鳴り止んだ状態と歌詞の内容が奇しくもリンクしてしまったわけですが、もともとは、3.11以前から感じていた閉塞感について歌ったものでしたよね。つまり、『Bitter, Sweet & Beautiful』は、「そしてまた歌い出す」の延長線上にあるとも言えるのではないでしょうか。

Mummy-D:そうだね。〝歌は世につれ〟じゃないとダメだなとは思う。それをメッセージにすることに関してはまだまだなところもあるし、ちょっと直接的過ぎんじゃねーかって悩む時もあるけど、やっぱり、歌に時代の空気を落とし込めてないと。

宇多丸:そもそも、アルバムをつくる上で時事ネタっていうか、「いま何を思ってるか?」っていう話から始めてるんで、当然っちゃ当然なんだけど。次のアルバムはもっと戦前色強くなったりしてね。嫌ですねー。そうしたらもうあれですよ、シングルは戦意高揚曲。

一同 笑

Mummy-D:急に転向?

――ホーン使いまくって。

宇多丸:しかもそれがライムスター史上、いちばんキレの良いメッセージになって。そして、初の大ヒット。

――そうならないためにも、いま頑張っておかないとっていう。

宇多丸:実際、そういう時代になったら、自分は流されてしまうかもしれないっていう思いもあるんで。だからこそ、いま、ブツクサ文句言っておくっていうね。

――言えるうちに言っておけば、その言葉が自分に「あの時、こう言ってたじゃないか」って刺さってくるわけですからね。

宇多丸:幸いにも、今が前の戦前の繰り返しじゃないのは、戦前とか戦中に言ったことが記録として残っていて、「あいつはこんなこと言ってた」「それなのに、戦後はこんなこと言ってやがる」みたいなことが検証されてるわけだからね。みんな、戦争があったとして、戦後にどう見られるかっていう視野も持ってる。そこは進歩していて、だから、まったく繰り返しにはならないと思うんだけど。

(取材・文=磯部涼)

■リリース情報
『Bitter, Sweet & Beautiful』
価格:初回限定盤A (CD+BD) ¥3,800(税抜)
   初回限定盤B (CD+DVD) ¥3,500(税抜)
   通常盤 (CD) ¥3,000(税抜)
<収録曲>
1. Beautiful – Intro [DJ JIN and SWING-O Produce]
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク [PUNPEE (PSG) Produce]
3. Still Changing [BACHLOGIC Produce]
4. Kids In The Park feat. PUNPEE [PUNPEE (PSG) Produce]
5. ペインキラー [KREVA Produce]
6. Beautiful – Ineterlude [DJ JIN and SWING-O Produce]
7. SOMINSAI feat. PUNPEE [PUNPEE (PSG) Produce]
8. モノンクル [PUNPEE (PSG) Produce]
9. ガラパゴス [BACHLOGIC Produce]
10. The X-Day [Mr. Drunk (Mummy-D) Produce]
11. Beautiful [DJ JIN and SWING-O Produce]
12. 人間交差点 [DJ JIN Produce]
13. サイレント・ナイト[PUNPEE (PSG) Produce]
14. マイクロフォン [BACHLOGIC Produce]

<初回限定盤特典収録映像>
・ “6 minutes of #nkfes” 全アーティスト収録・主催フェス「人間交差点 2015」スペシャルダイジェスト映像
・「SOMINSAI feat. PUNPEE」(人間交差点 2015)ライブ映像 
・「Still Changing」MV
・「人間交差点」MV
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー

■ライブ情報
KING OF STAGE VOL. 12
Bitter, Sweet & Beautiful Release Tour 2015

公開リハーサル
公演日:2015年9月24日(木)
会場:川崎 CLUB CITTA’
時間:18:00 Open / 19:00 Start
料金:オールスタンディング ¥3,000(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841

公演日:2015年9月27日(日)
会場:大阪 Zepp Namba(Osaka)
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:1F 指定席、2F 指定席 ¥5,000(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:夢番地大阪 06-6341-3525

公演日:2015年10月4日(日)
会場:高知 X-pt.(クロスポイント)
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:祝初!高知ライブ・特別価格 オールスタンディング
   ¥4,000(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:デューク高知 088-822-4488

公演日:2015年10月9日(金)
会場:東京 Zepp DiverCity(Tokyo)
時間:18:00 Open / 19:00 Start
料金:1F スタンディング ¥5,000(税込)ドリンク代別
   2F 指定席 ¥5,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841

公演日:2015年10月12日(月・祝)
会場: 名古屋 Zepp Nagoya
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:1F 前方指定席 ¥5,000(税込)ドリンク代別
   1F 後方スタンディング ¥4,800(税込)ドリンク代別
   2F 指定席 ¥5,000(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:サンデーフォーク 052-320-9100

公演日:2015年10月18日(日)
会場:青森 SUNSHINE
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841

公演日:2015年10月20日(火)
会場:仙台 Space Zero
時間:18:00 Open / 19:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841

公演日:2015年10月25日(日)
会場:福岡 DRUM LOGOS
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:BEA 092-712-4221

公演日:2015年11月1日(日)
会場:静岡 SOUND SHOWER ark
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:BOOM BOOM-BASH 054-264-6713

公演日:2015年11月3日(火・祝)
会場:水戸 VOICE
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841

公演日:2015年11月8日(日)
会場:沖縄 桜坂セントラル
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:PM AGENCY 098-898-1331

公演日:2015年11月10日(火)
会場:鹿児島 SR HALL
時間:18:00 Open / 19:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:BEA 092-712-4221

公演日:2014年11月15日(日)
会場:岡山 YEBISU YA PRO
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:夢番地(岡山)086-231-3531

公演日:2014年11月22日(日)
会場:富山 MAIRO
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841

公演日:2014年11月29日(日) 
会場:札幌 PENNYLANE24
時間:17:00 Open / 18:00 Start
料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別
お問い合わせ:ウエス 011-614-9999

・ チケットは一人で、4枚までのお申し込みが可能。
・ 取材、作品用の撮影カメラが入る場合あり。
・ 6歳未満無料(座席が必要な場合は要チケット)
・ スタンディングで参加のお子様連れのお客様は充分に注意。
お問い合わせ総合:チッタワークス・044-276-8841(平日12:00~19:00)

http://www.rhymester.jp/

関連記事