BiSの仕掛人、渡辺淳之介×松隈ケンタ対談 2人が別々に起業した理由とは?

渡辺「アイコンでありたいと同時に、裏方でもありたい」

「必要最低限の機材を揃えた」というコンパクトなスタジオにて。ここからBiSのエッジーな楽曲が生まれた。

——会社の5年後のビジョンとかってあります?

松隈:SCRAMBLESにはモデルがあって、海外のフュエルド・バイ・ラーメンっていうレーベルなんですよ。日本だとPIZZA OF DEATH RECORDSさんやLD&Kさんとか、仲間たちが集まってひとつのサウンドやシーンをつくりだしているような、ああいう感じになれたらいいなって。“SCRAMBLES系”みたいなカルチャーをこの先5〜10 年かけて発信していきたいです。だいたいそういう盛り上げ役って、先輩のバンドマンやライブハウスの店長さんとか、そういう方が多いじゃないですか。僕みたいにサウンド・プロデューサーってケースはあんまりないと思うんです。

——確かに。渡辺さんは?

渡辺:5年後は六本木ヒルズですね(笑)。ワンフロアのオフィスで。……っていうのもやっぱり、僕ってインディ界隈の希望の星だと思うんですよ(真顔で)。だから、金の匂いをさせたいなって感じなんです。六本木で秒速で稼いでやろうっていう勢いで、アイコンでありたいなと。それと同時に裏方でもありたい。学生の時から音楽業界の裏方の人って何やってるんだろうなって思ってて。それこそデヴィット・ボウイとか沢田研二さんとか大好きで、そこには絶対裏方がいるはずだったんですけど、当時はぜんぜん見えなかった。そういう意味で、学生の頃からもし自分が音楽をやるなら裏方として出てやろうとも考えてたんです。

——そしてBiSの横浜アリーナの解散ライブにも立ったと。

渡辺:あの会場が借りられたのも正直、超高額チケットのおかげだったりしたんですよ。それまで日本だとファンから結構叩かれるのでやらなかった人が多かったんですけど、開き直っちゃえば叩かれないので。それが皆さんわかったみたいで、高いチケットを売るアイドルさんがだんだん増えてきましたね。この前、『販促会議』を読んでたらそのことが書いてあって。取材とか受けたわけじゃないんですけど、“BiSというアイドルは高額なチケットを売って、ライブの会場代を払っている。それはエクスクルーシブであればマーケティング的には正解だ”みたいなことが書いてあったんですけど、自分でも面白いことしてるなと。

——BiS解散後、メジャーレコード会社から声がかかっていたにもかかわらず、そちらには行かなかったというのは何でなんですか?

松隈:実際、悩んどったもんね。メジャー行きたいなって。

渡辺:松隈さんには一回メジャーに行きたいとは前から言ってたんですよ。メジャーの世界を一度見て独立するって。だけど、タイミングとしてここしかないと思ったんですよ、独立ってところで考えると。あくまでも予想ですけど、メジャーに行ってそれなりのポストを用意してもらってやってたら、たぶん僕はそこで安心しちゃったと思うんですよね。給料もいいし、結婚したりして、子供も授かったりして、それを考えると“ヤベェ……。独立できなくね?”みたいな感覚になって。

松隈:どっかにマンションも買ってね。

渡辺:そうそう。心地のいい世界の中で、自分のギラギラした野望が砕かれていく感じが結構見えたんです。僕も本当は権力とか名声とか安定みたいなものは大好きで、「俺、メジャーレーベルでプロデューサーやってます」とか言いたいですよ。でも、独立するには今のタイミングしかないと思って、豪快に踏み出して後悔してる感じです(笑)。

——(笑)実際は後悔してないですよね?

渡辺:いや、朝起きたりした時、ふと思ったりしますよ。俺って今ひとりだな……って。松隈さんは、まだチームがいるから大丈夫かもしれないけど、ビックリするくらい孤独ですね。WACKが始まって2カ月くらいしか経ってないですけど、夜中にカチャカチャひとりでパソコンを触ったり、事務所に帰ってきた時に誰もいないのに「ただいま」って言ったりとかしてます(笑)。

(取材・文=上野拓朗 / POKER FACE

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THE INTEGRAL POULTRY。

THE INTEGRAL POULTRY
『Sack Of The Dead』
発売:10月8日
価格:¥ 2,160
品番:DDCZ-1979

 紙袋を被った覆面バンド、THE INTEGRAL POULTRYのセカンド・アルバム。BiSのプロデューサー松隈ケンタが手掛ける本格ロックバンドとしても注目の彼らが、デビュー・アルバムより半年、さらに磨きのかかった楽曲をひっさげて送り出す一枚。

【収録曲】
1. TRA-TRA-TRA
2. MAD A MURDER
3. WAR IS OVER
4. no fear!
5. KEEP ON
6. NO WAY
7. PARADISE
8. Hello
9. kuwagata
10. Burning
11. Genie
12. MONSTER

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