ゆるめるモ!プロデューサー田家大知が明かすアイドル運営術「すごい表現方法だと感じている」
――『Unforgettable Final Odyssey』に、ここまで話題にした「SWEET ESCAPE」や「あさだ」が入ってないのはなぜでしょう?
田家:あえて外してます。そこにスポットを当てすぎると、カルトアイドルになっちゃうし、そこで終わらせたくないんです。「Unforgettable Final Odyssey」は、SUPER☆GiRLSや乃木坂46のファンにもアピールするように作って、アイドルとして入り口を広げておいて、最後はドゥープな世界に展開させました。
――現在はDEVOなどをモチーフとした「ニューウェーヴアイドル」というキャッチコピーですが、当初の「逃げドル」とコンセプトは離れてませんか?
田家:ニューウェーヴは最初から頭にありました。でも最初から「ニューウェーヴアイドル」と音楽面のことを言うよりも「脱力支援アイドル」や「逃げドル」って言ったほうがわかりやすいかなと思って。DEVOに関しては、DEVOっぽい曲がなかったんですよ(笑)。だから裏ジャケでやっています。
――「Majiwaranai CAts」はビースティ・ボーイズのイメージですか?
田家:ビースティ・ボーイズの「サボタージュ」ですね。誰にも負けないビースティ・ボーイズ愛があると示したかったんです。作詞をしている小林愛さんもビースティ・ボーイズが好きで、だから曲名の「MCA」の部分が大文字になってます。
――本当だ、言われて気づきました! スカの「ぺけぺけ」、エレクトロディスコの「スキヤキ」のほか、「場viewer」や「DO FUFU」はどういうイメージで作ったんですか?
田家:「場viewer」は、曲を揃えてみたときに「BPM早いのないな」って思って、デス・セットっぽいエレクトロヒップホップパンクを作りました。彼らもビースティ・チルドレンだから共感できるんです。「DO FUFU」は、実は「ゆるめるモん」「なつ おん ぶる ー」(『HELLO WORLD EP』収録)と同じく僕のバンドの曲をリアレンジして、ストロークスをイメージして作り、そこに女の子のわちゃわちゃ感と裏打ちを混ぜました。
――そしてスペイシーな「OO(ラヴ)」と、ポップ・グループ+アニマル・コレクティヴな「たびのしたく」で終わる、と。
田家:アイドル好きな人は「長い」とか言いますね。ポストパンクっぽいし、ロッキンオン系の人が喜んでくれればと思うんですけど、まだ届いてないんだろうな。知名度が低すぎて悲しくなりますね……。
――実際に「Unforgettable Final Odyssey」はどういう層にフックしてますか?
田家:狭いですね。BiSやBELLRING少女ハート、でんぱ組.inc界隈の方は聴いてくださるんですが、その外に出たいんです。ファンの方は「素晴らしい」って言ってくださるけど、甘えてはいけないし、アイドルを聴いたことのない人の感想を聞いてみたいんです。「あさだ」でみんなでカウベルを叩いて、よだれを垂らしながら恍惚の表情で宗教感を出すほどには至れていない。頭のおかしいことをしたいんです。アイドルは遊び放題で、すごい表現方法だと感じているし、面白がってくれる人もいっぱいいるし、ドラッギーな曲をどんどん出したいです。「アイドルだからこんなに面白いことができるんだよ」とメンバーにも伝えたいですね。
――田家さん自身が作曲した曲も多いですよね。
田家:自分の自己評価は低いですね。ヘンテコな曲担当ならいいんですけど。音楽的知識がまったくなくて、打ち込みもコードもわかってなくて専門的なことは人に投げてる。展開とか音色とか全体像とか、そういうことばかりは思いつくので、イメージ担当ですね。
――音楽ライターをされていた影響はあると思いますか?
田家:あると思います、ロック史を体系的に聴いてきたんで、音楽史が体の中にある。「ここをやったら、次はここをやったらいいかな」って。見出しになりやすい打ち出し方を、言葉ありきで考えてるところもあるかもしれませんね。
――田家さんのメンバー評を聞かせていただけますか。
田家:ももぴは、頭の狂いっぷりが僕と似てるんです。事務作業がまったくできないけど、直感で振り付けをするセンスはすごいなと。天才肌だと思います。ゆみこーんは、バランスの良さがすごい。みんなをまとめることができるし、いい意味で常識人で助かってますね。けちょんは、一番こういう世界に縁がない。そんな子が活動してるのを勝手に感動してます。どんどん伸びていくのを楽しんでほしいです、ゆるめるモ!の奇跡だから。しほぉんは、手が掛かる子なんですけど、そんな子が一生懸命やって歌やダンスの表現力が上がると感動するんです。変人が多いけど、彼女みたいな普通の子がいることで、ファンの人も勇気付けられてるんじゃないかな。ようなぴは、意見も言える子だし、グループにいい影響を与えてる。ありがたいのは、社交的で舞台裏でのつながりを大事にしてくれていることですね。ちー坊は、底知れぬものを持ってる。感性も変わってますし、かなりの変人だと思いますね。しかも普通に素直な子だから吸収するスピードも早い。あのちゃんは、存在が感動的ですよね、元引きこもりだし。ギターをゆるめるモ!に入ってから始めて、指から血が出るほど練習して、この子は本当に頑張ってると言いたいですよね。ゆいざらすは、努力家具合が凄まじいんですよ、学校が忙しくてもレコーディングは寝ないで全部覚えてくる。苦労を圧倒的な明るさでまったく外に出さないでポジティヴ。僕もそういう風に生きたいから共感しますね。
――LIQUIDROOMでのワンマンライヴは、何をもって成功としますか?
田家:お客の入りは大事ですよね。あと、ツインドラム、トリプルギターって狂ってるじゃないですか(笑)。他のアイドルとは別の方向に進もうとしてるヴィジョンを提示したいし、音楽的なことに真面目に立ち向かってると示したいですね。メンバーも演奏に参加するし、シンプルでローファイなレインコーツやシャッグスみたいでもいいから、自分たちで音楽を演奏できる楽しさを見せたい。バンドとしての1ページ目を提示したいですね。今までなかった存在にならないと意味がないし、渦を起こして、そこに巻き込まれたことを後々に語ってもらえるようになりたいですね。
(取材・文=宗像明将)
■ライブ情報
『2014:A Space Odyssey On Liquid RooMo! ~リキッドルーモ!号で行く、2014年宇宙の旅~』
日時:2014年8月9日(土)
会場:恵比寿リキッドルーム 開場:17:00 開演18:00
価格:全席立見 ¥3,000(税込)
※ドリンク代別
※3歳以上有料
※チケットぴあ/ローソンチケット/イープラス/楽天チケットで好評発売中。
■リリース情報
『Unforgettable Final Odyssey(忘れがたき最期の旅路)』
発売:2014年7月9日(水)
価格:¥2,500+税
<収録楽曲>
1.Majiwaranai CAts
2.ゆるめるモん
3.べぜ~る
4.逃げろ!!
5.生きろ!!
6.場viewer
7.ぺけぺけ
8.私の話、これでおしまい
9.スキヤキ
10.DO FUFU
11.なつ おん ぶる ー
12.OO(ラブ)
13.たびのしたく