ゆるめるモ!プロデューサー田家大知が明かすアイドル運営術「すごい表現方法だと感じている」

ゆるめるモ! "生きろ!!"(Official Music Video)

――もともと「アジアとつながろう」として「アジポタ」というサイトを立ち上げて、「自殺するぐらいなら逃げてもいい」というメッセージを機能させるためにアイドルグループを作ったんですよね。そして代表曲のひとつ「逃げろ!!」が生まれた。現時点での手ごたえはどうですか? 

田家:アジアは長期戦ですね。

――諦めてないんですか!?

田家:全然諦めてません。前に一度インドネシアのロックバンドと共演させたんですけど、まだ無名だったからか、あまりにも注目されなくて……。日本でもうちょっと地場を固めてから再挑戦したいですね。「逃げてもいい」と訴えることはできてると思います。「逃げろ!!」を聴いてホッとした、という声がちょこちょこあるんです。ただ、BiSやBELLRING少女ハート、でんぱ組.inc.あたりのファン層には知られていても、SUPER☆GiRLSや乃木坂46あたりのファンには全然知られていないので、まだまだですね。

――田家さんのヴィジョンの明確さと、人としてのメンバーへの優しさがゆるめるモ!を形成しているのではないかと思うんですが。

田家:そこに気づいていただけるのはありがたいです……。考えてますね、心を砕いてる。グループをバーンと作っても、1年半続けてくるのは本当に大変です。他のグループを見ていても、女の子が幸せそうに見えないと、そういうことを考えない運営の人が見える気がするんです。

――とはいえ、メンバーが鬱々としていることもあるし、脱退もありますよね。メンバーのメンタルケアも大変なんじゃないんですか?

田家:実際そうです、途轍もないです。でもそれをしなかったら速攻辞めてると思うし。8人いて、忙しくなってくると、話す時間がなかなか取れてないのはヤバいなと思います。ゆいざらすにも本当に辞めてほしくなかった。でも保育士になるために時間がないから、物理的に仕方ないんです。

――昨年9月の5人(しふぉん、ようなぴ、ゆいざらす、あの、ちー坊)加入は、グループとして大きかったんではないでしょうか?

田家:あの5人は迷いがなかったんですよ。最初は「入れるとしても2、3人かな」と思っていたら「この5人は誰も落とさない」というくらい、いい子たちに出会って。もちろん人数が増えたら大変なんです、ワイヤレスマイクを買わないといけなかったり。でも、たとえば3人が本物のマイクで歌って、残りがダミーのマイクとかはやりたくないんです。全員が輝けるようにしたいんです。

――音楽面では、『New Escape Underground!』のジャケットはノイ!のパロディで、「SWEET ESCAPE」は10分越えのクラウト・ロックで衝撃を受けました。いきなりクラウト・ロックに向かったのは?

田家:「やるぞ」と考えているネタはたくさんあるんです。当時メンバーののんちゃんが辞めちゃったんですけど、この曲のインパクトならこのタイミングでも出せるぞ、と。のんちゃんが音楽的柱としてたくさん歌う子だったから、インストの部分が多ければパワーダウン感を出さないで済むと思ったんです。

――僕はその「SWEET ESCAPE」でゆるめるモ!に一気に注目したタイプですが、一般的な反応はどうでしたか?

田家:意外と叩かれなかったんです、本家のノイ!ファンからあまり反応がなくて。昔のかっこいいバンドでも、日が当たらなかったバンドがいますよね。そこにメジャーなスパイスを振りかければ、音楽史に埋まっていたバンドを、音楽を少しでも好きな人に届けられると思うんです。「掘り返しても楽しいんだよ」ってみんなで共有できたらいいな、って。m-floはヴォーカルを変えながら、やりたいことをやりますよね。ゆるめるモ!は、ヴォーカルは変えずになんでもありの空間にしたいし、やりたいことを全部実現したいです。

――「箱めるモ!」では、箱庭の室内楽とがっつり共演しましたが、あのきっかけは?

田家:僕は早めにアイドルでペイヴメントみたいなUSインディーロックをやりたかったんです。そこで箱庭の室内楽のハシダカズマさんに会ったら、話が合いすぎて、やりとりしてたら、最初1、2曲の予定が6曲もできたんです。

――あのアルバムだけT-Palette Records(タワーレコード傘下のアイドル専門レーベル)からリリースされたのは?

田家:いい作品だと確信したので、もっと多くの人に聴かれるレーベルから出したくて、タワーレコードの嶺脇育夫社長に「企画盤として出していただけませんか?」とメールをしたんです。

――「箱めるモ!」のジャケットはウィーザーの「ウィーザー」のパロディですね。

田家:ノイ!よりはもうちょっとわかりやすいものがいいかと思って。あの6曲を聴きながら、青春っぽい水色とウィーザーのジャケットが浮かんだんですよね。裏ジャケのギャング・オブ・フォーの「エンターテインメント!」のパロディは、アイドルとバンドの握手ということで。

――『Electric Sukiyaki Girls』は、「あさだ」からESGオマージュのベースラインが最高ですね。

田家:ESGが大好きで。それまでの作品を振り返って、「踊れる要素が少ないな」って思ったから、シンプルな音数の中で踊らせることにしたんです。

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