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Hello Sleepwalkersの曲展開はなぜ読めない？　主要楽曲をプレイヤー目線で分析

　男女ツインボーカル、日本語と英語、さらに彼らはトリプルギターのバンドでもあり、あらかじめ様々な手駒を持った上に、パートごとに順番に曲を作るという手法が加わって、唯一無二の個性が生まれているのは確か。しかし、この「何でもできてしまう」という自由度の高さは、ときとして焦点がぼやけてしまうという弱点にもつながりかねない。そこで登場するのが、今回アルバムの共同プロデューサーとして招聘された、イギリスのロックバンドHARD-Fiのリチャード・アーチャーだ。HARD-Fiというバンドは、ロックやレゲエ、ファンクなどの音楽性に、クラブ・ミュージックの要素を加え、同じように折衷的なスタイルを持つパンクバンドであった「The Clashの再来」と呼ばれたバンド。HARD-Fiの曲はHello Sleepwalkersほどの曲展開こそしないものの、「一曲の中でさまざまな要素を組み合わせる」という方法論は共通していると言える。つまり、ときに暴走しかねないハロスリの自由な発想力を、音楽の多文化的な背景をよく理解したリチャードの手によって、ポップソングに落とし込むこと。これがこのコラボの狙いであったはず。

　そして、この狙いは、アルバムの一曲目を飾る“猿は木から何処へ落ちる”で、見事具現化されていると言えよう。この曲も構成を確認してみると、「イントロ→A→B→C→サビ→A→間奏→D→サビ→A→アウトロ」と、やはり一筋縄にはいかない。1回目のAと2回目のAはやはりバックの演奏が異なっているし、3回目のAはCと組み合わされているので、ほぼEと言ってもいいぐらいのものだ。しかし、各パートの個性をより明確化し、メインとなるリフや抜けのいいキャッチーなサビなど、美味しい部分はシンプルに繰り返すことによって、曲展開の面白味とポップソングとしての旨味がしっかりと融合されている。

Hello Sleepwalkers「猿は木から何処へ落ちる」MUSIC VIDEO

　1月にシングルカットされている“午夜の待ち合わせ”は、ポップソングとしての機能性がさらに顕著な一曲。HARD-Fiと同時期に英国のシーンに登場したARCTIC MONKEYSにも通じるギターリフに、ミクスチャー要素を加えたようなこの曲も、やはり同じパートでも違ったアプローチが用いられ、サビのすぐ後にAを配置する構成によって、変わった印象を与えるなどの小技も効いている。しかし、それでもこの曲は2分50秒とコンパクトにまとめられ、明確にポップソングとしての印象を残すのだ。

Hello Sleepwalkers「午夜の待ち合わせ」MUSIC VIDEO

　昨年末OKAMOTO’Sのオカモトコウキのツイートをきっかけに、「今の日本のバンドは音楽のルーツが00年代邦楽に収束されてしまっているのでは」という議論が繰り広げられたのを覚えている人は少なくないだろう。Hello Sleepwalkersの曲の情報量の多さというのは、間違いなく00年代の邦楽を通過したバンドならではだと思う。もちろん、それ自体は決して悪いことではないし、むしろその個性を生かしつつ、さらに音楽の多文化的な背景をよく知る海外のミュージシャンの視点を加えることで、あくまで日本人らしく、それでいてユニバーサルな楽曲が生まれ得るのではないか。『Masked Monkey Awakening』は、そんな可能性の一端を示しているように思う。
（文＝金子厚武）

Hello Sleepwalkers『Masked Monkey Awakening』（A-Sketch）

■リリース情報
『Masked Monkey Awakening』
発売：2月19日
価格：￥2,300（税抜き）

〈収録曲〉
1.猿は木から何処へ落ちる
2.午夜の待ち合わせ　※TVアニメ「ノラガミ」オープニングテーマ
3.Bloody Mary
4.Comic Relief
5.砂漠
6.天地創造
7.23
8.越境
9.Countdown
10.円盤飛来

Hello Sleepwalkers『猿は木から何処へ落ちる』（A-Sketch）

■配信情報
2月12日よりiTunesにて『猿は木から何処へ落ちる』を配信開始。

■ライブ情報
『Hello Sleepwalkers 2014 “TAKE YOUR MASK OFF”』
5月3日（土）大阪 心斎橋Music Club JANUS
OPEN/START 17:30/18:00 前売り2,800円/当日3,300円（＋１ドリンク）
プレイガイド：e＋、チケットぴあ、ローソンチケット
一般発売：3月2日（日）
お問い合わせ：キョードーインフォメーション　06-7732-8888

5月4日（日）名古屋 ell.FITSALL
OPEN/START 17:30/18:00 前売り2,800円/当日3,300円（＋１ドリンク）
プレイガイド：e＋、チケットぴあ、ローソンチケット
一般発売：3月2日（日）
お問い合わせ：サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

5月18日（日）渋谷CLUB QUATTRO
OPEN/START 17:00/18:00 前売り3,000円/当日3,500円（＋１ドリンク）
プレイガイド：e＋、チケットぴあ、ローソンチケット
一般発売：3月2日（日）
お問い合わせ：ディスクガレージ　050-5533-0888

『Hello Sleepwalkers presents”走りだす生命体”』
2月12日（水）渋谷ＷＷＷ
OPEN/START：18:30/19:00
W/ ecosystem / reading note and more…
チケット：前売り2,500円　当日3,000円（ドリンク代別）
お問い合わせ：ディスクガレージ 050-5533-0888

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