横山健が今の音楽業界とインディーズ・レーベルのあり方に切り込む (後編)

「90年代みたいな夢はもう辿れない」横山健のシビアなシーン分析と、レーベルが目指すもの

11月16日からは自身のドキュメンタリー映画『横山健 -疾風勁草編-』も公開される

――いい諦め、というのかな。でもこれ、文字にするとネガティヴに受け止められそうですね。話してる横山さんの表情はイキイキしてるんだけど。

横山:ねぇ? 確かに、けっこう絶望的なことばかり言ってるけど……でも俺自身はちっともネガティヴじゃないの。なんだろうね? 楽観視とは違うけど。もしかすると自分と、その仲間と、ピザオブデスのことしか考えなくなっちゃったかもしれない。以前はシーン全体のことを考えてたし、もっとCD買えよって説教したかった。また名前出すけど、サカナクションの山口くんと以前そういう話になって「ミュージシャンの組合を作ってくださいよ。健さんが旗振ってくれたら俺は何でもしますよ」って言われたの。そこで何か利権が生まれちゃうのも嫌だなぁと思ったけど、でも、それぐらい保護しないと誰も生き残れないっていう危機感もあったから。

――今はどうですか。新たな攻めのアイディアはある?

横山:ピザオブデスで始めたレーベル内レーベルなんて最たるものかもしれない。Jun Grayが自分にはコネクションのないバンドを引っ張ってきてくれたんだけど、そこでしっかり話をして。「今はCDがほんとに売れない時代だから、どうしたらバンドを長く続けられるかを、みんなで一緒に考えよう」って。もっと言えばね、同世代のいろんなバンド、「今はもう◯◯からCD出せなくなった」っていう声が多いと思うんだけど……みんなピザ来いよって思う。今。そしたらなんとかCD出せるように考えっから。

――その受け皿体制はある、と。

横山:もちろん知ってるバンド全部来られても困るし、考えた挙句、趣味の問題でキミらは無理っていうこともいっぱいあるだろうけど(笑)。でもそういう気持ちは周りのバンドに対してもすごくある。その、組合みたいなものを作るわけにはいかないけども、気持ちがある奴らは、なんとなく近くにいて、まとまっていけばいいんじゃないかなって。やっぱり数字として「100万売れるはずだったものが20万も売れない」って言い方をしちゃえば絶望的にはなるけれども。でもライブでの、目の前のお客さんからの声。求められ方。それは僕だけじゃなくて他のバンドにも絶対にあって。そこに嘘はないから。だから、やる気ひとつ、考え方ひとつで、残ってく奴が残っていけるんだろうなと思ってる。
(取材・文=石井恵梨子/写真=石川真魚)

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