8K解像度のイマーシブ映像を、低コストで配信。URALAAが描く日本発LBE構想

URALAAが描く日本発LBE構想

 北海道・十勝の浦幌町に拠点を構えるスタートアップ・URALAAは、10月16日に「一般的な光回線で“8Kイマーシブライブ”を配信する技術を確立した」と発表した。

 同社の調査では「世界初」を謳うこの技術は、VRデバイスではなく、巨大なディスプレイを活用するロケーション・ベースド・エンターテインメント(LBE)に最適化されたもの。海外でも展開が進むこの領域を、比較的低コストな形で実現するための技術でもある。

 10月25日には、この技術に関する記者会見を開催。本記事では、記者会見で語られた事業構想や技術解説に加え、実際に筆者も体験した所感や、今後の展望考察などを伝えていく。

「癒し」から「感動」へ 海外の“没入エンタメ”を日本でも生み出す構想

 まずはURALAAについて背景情報を軽くまとめておこう。同社のこれまでの実績の一つに、森林総合研究所と共同で実施した「デジタル森林浴」が挙げられる。

URALAAが制作した「デジタル森林浴」が体験できる空間。プレスリリースより引用

 これは、廃校になった小学校を改築し、正面・左右・天井にプロジェクターで森の映像を投影する空間を制作した取り組み。ヘッドマウントディスプレイなしに、周囲を森林に包まれた空間に身を置ける没入体験であり、ここから心拍の安定などリラックス効果を示すエビデンスを論文として発表している。

 そして同社は、「癒し」を軸に据えたこの取り組みを「感動」へと発展。アメリカ・ラスベガスの球体型アリーナ「Sphere」や、ロサンゼルスの没入型シアター施設「Cosm」などに代表される、ロケーション・ベースド・エンターテインメント(LBE)市場へ挑むことになった。

URALAA 代表取締役CEO 辻木勇二氏

 URALAA代表・辻木勇二氏によれば、LBE市場は2025年時点で86億ドル、日本円にして1兆円規模で、今後3年で2.8倍に拡大すると語る。そして市場としてのポテンシャルが高い“包まれる”エンタメを、IPは強いがプラットフォームは弱い日本で成長させたい、という抱負を語った。

 具体的な事業構想としては、2027年秋に、東京にフラッグシップ施設を開設。2035年までに全国51カ所・コンテンツ100本の展開を目指す。更地に専用施設を建てるのではなく、既存空間の改修で展開できる点が強みだ。

 同社のパートナーには、出資・業務提携を結んだみずほフィナンシャルグループ、協業の基本合意を結んだ東急不動産ホールディングス、IPコンテンツの空間運営を手がけるシダックス・コミュニティープラスが名を連ねる。記者会見では3社の代表も駆けつけ、URALAAの描く未来に期待を示した。

なぜ「8K解像度」が求められたのか?

 さて、上記の構想を支える配信技術としてのURALAAはどのようなものだろうか。

 コアとなるのは、配信映像の解像度が8K、すなわち7680×4320ピクセル、約3300万画素であることだ。これだけの解像度が求められたのは、URALAAが想定する設備にある。端的に言えば、「非常に大きなディスプレイに映す」からだ。

 記者会見では簡単なデモも行われた。今回用意されたのは、人間の背丈の4~5倍はあるであろう巨大ディスプレイ。それが3面、少しだけ角度をつけた状態で設置されている。「とても巨大な三面鏡」といえば伝わるだろうか。

 デモではこのディスプレイで、2K画像と8K画像が交互に表示された。筆者所感だが、2Kではたしかに若干ぼやけて見える。一方8Kまでくると、人間の顔もある程度は鮮明に見える。テレビなどの一般的なディスプレイでは、ここまでの差異はかなり意識していないと気づきにくい。

 巨大な施設での運用を想定された技術スペックと言えるが、設備面のハードルは低い。専用回線も中継車も不要で、一般的な家庭にも引かれるような、10Gbps級の光回線で機能するという。

従来のライブ配信とURALAAの8Kイマーシブライブ配信の機材・設備比較。プレスリリースより引用

 オペレーションに求められる人員数が少ないこともセールスポイントだ。一般的なスポーツ中継では、視聴者に届くまでに約50名のスタッフが関わるとされる。しかし、この後実施される映像中継では、現地会場に8Kカメラ4台とスタッフ6名、記者会見会場に2名の、計8名で運用したという。

 「解説やデータ放送を含む中継とは単純比較できない」と断りつつも、たしかにかなり少ない。準備コストも少なく、その上で遅延も約3秒程度に抑えられているようだ。

 また、建物を映像に合わせるのではなく、映像の方を建物に合わせる柔軟さも特徴だ。特許技術「自動画角調整機能」によって、そこが四角い教室であろうとドームであろうと、LEDディスプレイであってもプロジェクターであっても、映像を変形させて会場にフィットさせられるようだ。

まるで観客席にいるよう。バレーボールの試合中継で、URALAAの実力を体験

 記者会見の後は、URALAAの実践パートへと移った。女子のプロバレーボールリーグ「SV.LEAGUE WOMEN」 の試合、ヴィクトリーナ姫路 対 PFU ブルーキャッツ石川かほくのライブビューイング観戦体験会である。

 関係者だけでなくファンも訪れた会場は、ひな壇形式の座席も相まって、さながら現実のバレーボール試合会場のよう。そう違和感なく感じさせる要因は、ディスプレイの大きさと形状だろう。

 巨大だがフラットな一枚のディスプレイよりも、客席正面を囲うような映像は、視野全体をカバーしやすい。その構造が「映像を観る」以上に「その場にいる」という感覚をもたらすところだと感じた。

 映像の見せ方も小気味よい。様々なカメラアングルで構成されがちな一般的なバレーボールの中継映像とは異なり、巨大ディスプレイに映る映像は「コートの端」と「観客席」の視点でほぼ固定されていた。人間の目線が存在しやすい位置取りである。

 ゆえに、映像から受ける印象は意外にも主観体験に近かった。筆者は日常的にVRを利用しているが、比較的その感覚に近いところだと感じた次第だ。

スポーツ以外にどんな活用が見出だせる?

 記者会見中の質疑応答で、辻木氏はURALAAをスポーツ観戦を主軸に展開するとしつつも、音楽などのエンタメ領域にも注力したいという意向を語った。回答の中では「実写はもちろん、3Dライバーも」というニュアンスの発言もあり、後者はいわゆるVTuber/バーチャルタレントを指しているかもしれない。

 実際に、エンタメ領域にURALAAを展開する場合、真っ先に考えられる使い道はライブ公演の第二会場、いわゆるライブビューイングだろう。近年では映画館でこうした企画が実施されているが、巨大だがフラットなスクリーンである映画館よりも、臨場感の面では勝る可能性がある。最前列相当の位置にカメラを置いてくれれば、臨場感はさらに高まりそうだ。

 また、没入体験に適した構造なので、派手な空間演出をともなう3DCG映像にもマッチするかもしれない。VTuberの音楽ライブならば、リアルの会場にはできない演出を仕込むことも可能だろうし、先鋭的な空間演出が発展している『VRChat』界隈のアーティスト公演にも適性はあるだろう。

 そのほかにも、地域の伝統芸能や史跡を追体験できるコンテンツなど、応用の幅は比較的広いと考えられる。“ヘッドマウントディスプレイ要らずのVR”を謳うこの技術が、翌年、あるいは数年後にどう浸透していくか、VR愛好家としても気になるところだ。

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