ゲームを利用したAI研究の最新情報が興味深い 「AIが暮らす街」をシミュレートした結果に驚愕

ゲームを利用したAI研究が興味深い

 AIエージェントのハッキング事件が度々報じられていることからわかるように、AIの進化はまだ減速する気配がない。その一方で、AIの性能評価に用いられる一問一答方式のベンチマーク問題集は、AIの進化に後れを取っている。

 こうしたなか、ゲームによるAIのベンチマーク(性能評価)は依然として盛んに行われている。というのも、チェスや囲碁ではトッププロ棋士に勝利するほど進化したAIであっても、アクションジャンルのような素早い操作を求められるゲームや、複雑なルールを持つゲームでは人間に遠く及ばないこともあるからだ。

 本稿では、ゲームによるAIベンチマークの最新事情を、「GPT-6 Astra」によるゲームプレイ、ゲームプレイによるAIランキング、AIエージェントの長期間プレイ、そして汎用ゲームエージェントへの挑戦といった4つの観点からまとめる。

『Portal』や『WoW』の初期クエストをクリアした「GPT-6 Astra」

 2026年9月9日、OpenAIは同社の最高性能AIである「GPT-6 Astra」を発表した。同AIの性能を評価するために、世界中の有志たちが同AIにゲームをプレイさせた結果を共有している。

 そうした事例のひとつとして、ゲームハードウェア専門メディア・VideoCardz.comは2026年9月、GPT-6 Astraが3Dパズルゲーム『Portal』をクリアしたことを報じた(※1)。同ゲームは、「ポータル」と呼ばれる2つの穴を開けて空間をつなぐことで、マップからの脱出を試みるゲームである。

Portal:コンパニオンコレクション [Nintendo Direct 2022.2.10]

 GPT-6 Astraは、同ゲームのプレイにあたってスクリーンショットを撮りながら、ポータルを開ける場所を決定した。こうした決定に際する推論では、ゲームを一時中断した。このようにして同AIは同ゲームをクリアしたものの、プレイ時間だけで2時間を要し、一時中断時間も合わせると24時間近くになった。

 人間プレイヤーであれば、初見でも3~5時間ほどでクリアできるので、『Portal』のプレイに限って言えば、同AIは人間に遠く及ばないと言えるだろう。

 2026年10月には、ゲームハードウェア専門メディア・Tom’s Hardwareが、世界的に有名なMMORPG『World of Warcraft』(以下、「WoW」)の初期クエストクリアにGPT-6 Astraが成功したことを報じた(※2)。

 同ゲームはエルフのような人間以外の種族を選んでプレイできるのだが、GPT-6 Astraのプレイではオークが選ばれた。そして、同AIが挑戦した初期クエストとは、「レベル1のオークとしてスタートし、『試練の谷』のすべてのクエストを完了し、センジン村でプレイを終える」というものだった。

 もっとも、GPT-6 Astraは人間プレイヤーのように画面を見て、オークを操作したわけではなかった。テストプレイ用に構築したWoWサーバと同AIがデータを交信することで、プレイを進めた。その結果、以上の初期クエストをクリアしたのだった。

 以上の事例のように、AIは従来ではプレイ自体が困難と思われていたゲームもプレイできるようになった。しかしながら、そのプレイレベルは、まだ人間には及ばないというのが実情だ。

続々と発表されるゲームプレイによるAIランキング

 AIがゲームをプレイすることで達成するスコアによって、AIをランキングする試みも依然として続いている。そうした事例には、法務をはじめとしたさまざまなタスクに関するAIの性能を評価する研究機関・Vals AIが2026年9月に公開した、AIゲームプレイベンチマーク「CUA-bench」がある(※3)。

 同ベンチマークは、サンドボックスゲームの『Minecraft』、シューティングゲームの『SUPERHOT』、サッカーゲームの『eFootball』というそれぞれのジャンルのゲームと、それらとペアになった非公開のゲームの合計6種類をAIがプレイできる環境となっている。非公開ゲームを取り入れたのは、販売済みゲームだけではAIが学習によってスコアを増やす可能性があるためである。学習によって増えたスコアの比較は、ゲームプレイ能力ではなく学習能力の評価になってしまい、ベンチマークの目的がずれてしまうのだ。

 Vals AIは、GPT-6 Astraを含む8つの最新AIをCUA-benchを使ってランキングした。以下の画像が、そのランキング表である。8つのうち上位5つがOpenAIとAnthropicが開発したAIで独占されていることから、この2社がAI開発をけん引していることが改めて証明された。

 なお、ベンチマークしたすべてのAIは1分間に2~26件の入力を実行していたが、人間の場合では1秒間に数件の入力を実行する。このベンチマークに限れば、AIは人間よりはるかにプレイが遅いのである。

 ゲームベンチマークによるAIランキングには、データサイエンス系コンペティションのプラットフォーム「Kaggle」で運営されている「Kaggle Game Arena」もある(※4)。このベンチマークには、囲碁やチェスのような古典的なボードゲームや、アスキーアート(文字アート)を使った単語伝達ゲーム「Word Art」を含めた20のゲームが収録されている。

 2026年9月23日更新の最新ランキングでは、やはりOpenAIとAnthropicが開発したAIが1位から5位までを独占している。

 ゲームベンチマークによるランキングは、ゲームが多種多様に存在することから今後もさまざまなランキングが公開されるだろう。

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