誰でもゲームが作れる時代の到来? 人生シミュレーター『80億分の1』が巻き起こした反響

 個人開発者のJin Hwi-eus氏が開発した『80億分の1』というブラウザゲームが、大きな話題を呼んでいる。この世界のどこか産まれた1人の人生を追体験するという“人生シミュレーター”であり、シンプルながら深いテーマ性を含んでいる。

 またAIを使った“バイブコーディング製”ゲームの先駆けとしても注目を浴びており、今後のゲーム業界にも無視できない影響を及ぼしそうだ。

統計からたどる、もう一つの人生

 同作は基本的に文字ベースで展開していくシミュレーションゲーム。プレイヤーはまず、172の国と地域の中からランダムで生を受けることになる。生まれる世界は現在のほか、「過去の世界」や「これからの世界」も選択可能で、時代や環境の制約を受けながら成長を遂げていく。

 最大の特徴は、国連・世界銀行・WHOなどの統計データが用いられていること。病気や貧困といった境遇も、仕事や恋愛などのライフイベントも、公開統計をもとにシミュレートされる。

 学校に通わせてもらえず、読み書きができないまま家の仕事を手伝うことになったり、結婚して生まれた子どもをすぐに病気で失ったり、災害に見舞われて借金を背負ったり……。シビアな現実が次々と襲い掛かってくる。

 時折人生の岐路となる決断が発生し、プレイヤーがそれを選ぶこともできるものの、根本的に生き方を変えることはできない。人の一生がどれだけ生まれた環境に大きく左右されるのか、深い実感とともに理解させられるゲームだ。

 ありそうでなかったゲームの内容に、多くの人が感銘を受けたようで、SNS上では“第二の人生の結果”を報告するユーザーが続出。そのなかには『ドラゴンクエスト』の生みの親、堀井雄二氏も含まれている。

 なお、開発者のJin氏は同作をたった一人で手掛けているとのこと。AnthropicのAIである「Claude」と自然言語でやりとりを行い、コードを書かせているという。いわゆるバイブコーディングと言われる手法だ。(※1)

 韓国メディアのインタビューに答えて、最初のプロンプト入力からリンク公開までわずか4時間だったことを明かしている。(※2)

動物版や日本版にも広がる人生シミュレーター

 同作の登場は、「すぐれたアイデアさえあれば誰でも面白いゲームを作れる」という時代の到来を示しているのではないだろうか。実際に多くの人がこのブームに触発され、類似の人生シミュレーターを続々と生み出している。

 たとえば日本の個人アプリ開発者・ムシツギ氏は、出生の範囲を“生物全体”にまで広げた『人間に生まれる確率』を公開。こちらは線虫などの微小な動物まで含めた地球上の動物の中からランダムで生を受ける人生シミュレーターで、ゲーム内で人間として生まれる確率は1011億分の1とされる。

 実際にプレイしてみると大体が線虫や昆虫など小さな生物として生を受け、瞬く間に生を終えてしまう。天寿を全うすることが極めて困難で、多くの場合捕食されたり飢えたりして終了という結果になるため『80億分の1』と比べてかなりハードモードだ。

 また、AIを活用した個人制作の先行例として、フライトシミュレーター『fly.pieter.com』も挙げられる。ブラウザ上で航空機を操縦できるゲームで、ほかのプレイヤーと同じ空間で飛行を楽しむマルチプレイにも対応している。開発にはAIコーディングツール「Cursor」が使われており、AIを活用した個人によるゲーム制作が進んでいることがうかがえる。(※3)

 いずれも従来のゲーム開発からは考えられないほどの低コストで開発されている模様。コードを書く能力すら必要なく、AIとのやりとりだけでゲームを作れる時代にあって、個人制作のハードルは極端に下がりつつある。

 才能を持ったアマチュアが成功しやすい環境なので、今までにない発想のゲームが爆発的に増えていく可能性も考えられる。バイブコーディングがゲーム業界の未来をどんなふうに変えるのか、今後も注視していきたい。

参照

※1 https://1in8b.life/ja/terms/
※2 https://www.kmib.co.kr/article/20261009500526
※3 https://fly.pieter.com/

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