True Damage、衝撃カムバの『LoL』“Worlds Anthem”に感じた音楽的充実 スタジアム級のブルックリン・ドリルはまさに世界基準!

 今やビデオゲームとポピュラー音楽の関係はこれまで以上に深いものとなっている。その中でも、早くからその壁に挑み続けてきたのが、『リーグ・オブ・レジェンド』(League of Legends、以下LoL)や『VALORANT』などのeスポーツタイトルで知られるRiot Gamesだ。ゲーム内に登場するキャラクターたちが結成するバーチャルバンドは、まるで実在するアーティストのように活躍し、現実とゲームの境目を曖昧なものへと変えていく。

 その中でも、今、もっとも注目を集めているのは、来たる『LoL』の世界大会「2026 Season World Championship」のテーマソング(通称、「Worlds Anthem」)を携えて、2019年のデビュー曲「GIANTS」以来、約7年ぶりのカムバックを果たすTrue Damageだろう。『LoL』に登場する5人のキャラクター(アカリ、エコー、セナ、キヤナ、ヤスオ)によって構成された同グループは、「世界中から最高のアーティストを集めたコレクティブ」として描かれており、驚異的な完成度を誇るミュージックビデオは、そうした背景に大きな説得力を与えている。

True Damage - GIANTS (ft. Becky G, Keke Palmer, SOYEON of (G)I-DLE, DUCKWRTH, Thutmose) | ミュージックビデオ

 まず初めに書いておく必要があるのは、筆者は、ポピュラー音楽のライターも担当しているのだが、その基準で見ても楽曲・MVともに単純にクオリティがずば抜けているということだ。「GIANTS」はプロデュースやライティング、ミックスに至るまでRiot Gamesの音楽チームが中心となって制作した楽曲だが、何も言わずにヒット曲のプレイリストに突っ込んだとしても、これがゲーム音楽だと気付く人はまずいないだろう。それどころか、このMVレベルのクオリティを提供できるアーティストが、果たしてどれだけいるだろうかとも思ってしまう。

 その上でグループの特徴について触れていくと、やはり目を引くのはサイバーなムードを纏うトラップビートを鮮やかに駆け抜けるラップと、サビで響き渡る壮大なセナ(CV:キキ・パーマー)のボーカルのコントラストだ(ここでビート自体はキープし、あくまで歌声とメロディを起点にスケール感を生み出しているのが巧みである)。最初のヴァースはエコー(CV:タトモズ)がソロで担い、徐々にキヤナ(CV:ベッキー・G)やアカリ(CV:ソヨン((G)I-DLE))が入ってくるという構成も起伏が効いている。ヤスオ(CV:ダックワース)の手掛ける音像もかなり奥行きのあるもので、スピーカーで大音量で鳴らしていると、まるでその世界に飲み込まれるかのような感覚に陥ってしまう。

 先日行ったヤスオへのインタビューでは、「True Damageの本質は、誰も予想できない形で各々のスタイルを融合させることにある」と語られていたが、強靭なダンスミュージックと自在にスタイルを切り替えながら邁進するラップ、その中心で優雅に響くボーカルが生み出す、まるでリスナーを翻弄するかのような、それでいて堂々とした佇まいは、まさに唯一無二のものだ。

「『リーグ・オブ・レジェンド』Worlds 2026アンセムをTrue Damageが担当 約7年ぶりの活動再開、ヤスオがその背景を語る

eスポーツにおける世界最大規模の大会の一つとして知られる、「League of Legends World Championsh…

 その背景には、個々のメンバーのルーツが投影されていることは想像に難くない。もちろん、『LoL』自体はゲーム内の世界を舞台としているため、厳密に現実世界と一致したルーツがあるわけではないのだが、それぞれのビジュアルからも分かるように、True Damageのメンバーの背景には、多様なバックグラウンドが存在しており、そうした多様性こそがグループの個性を生み出している。

 特に印象的なのは、アカリが放つ韓国語のリリックだろう。彼女と言えば、同じく『LoL』から生まれたバーチャルK-POPユニット、K/DAのメンバーとしても知られているが、「GIANTS」の前年となる2018年には、同ユニットのデビュー曲となる「POP/STARS」によって、シーンの垣根を超えた大きな反響を呼んでいた。ここからも分かるように、彼女のルーツには(現実世界における)韓国の文化が投影されており、その影響はTrue Damageのサウンドにも明確に表れている(ちなみに翌年に発表されたK/DAの「THE BADDEST」では、プロデューサーとしてヤスオがクレジットされ、ファンの注目を集めていた)。

K/DA - POP/STARS (ft. Madison Beer, (G)I-DLE, Jaira Burns) | Music Video - League of Legends
K/DA - THE BADDEST ft. (G)I-DLE, Bea Miller, Wolftyla (オフィシャルリリックビデオ) | リーグ・オブ・レジェンド

 一方で、キヤナの歌声を担当するベッキー・Gと言えば、言わずと知れたラテンポップ界のスター歌手だ。「Sola」などの自身の楽曲でも披露されてきた、パワフルなビートに身を委ねるような優雅な歌声は、「GIANTS」の壮大なスケール感を生み出す上で欠かせないものだろう。さらに、ニューヨークを拠点とするナイジェリア育ちのラッパーであるタトモズが描くエコーのフロウと、多彩な活躍を続けるR&Bシンガーのキキ・パーマー扮するセナの空間を包み込むような歌声が、楽曲全体に都会的でパワフルなムードを纏わせている。こうして書くと、まさに多様なバックグラウンドが一体となった結果として、この「誰も予想できない」ユニークな楽曲が生まれていることが分かるのではないだろうか。

 True Damageと直接は関係がないのだが、少し触れておきたいのがヤスオの兄弟でもあるヨネがメンバーを担当するバーチャルボーイバンドのHEARTSTEELだ。彼らはつい先日、2023年以来となる突然のカムバックを果たしたのだが、驚くほどにポップに突き抜けた作風でありつつ、やはり『LoL』らしい多様なバックグラウンドが投影された快作となっている。おそらくヤスオも意識しているのではないかと思うので、是非、併せて聴いてみてほしい。

HEARTSTEEL - 「Live My Life」 ft. Anderson .Paak、BAEKHYUN、Connor Price、Nic D(公式ミュージックビデオ)

 『LoL』の音楽が面白いのは、ただ単にバーチャルバンドを生み出すのではなく、そこから新たな物語が紡がれていき、ゲームと現実の境目を行き来しながら、より大きな存在へと膨れ上がっていくところだ。今回、7年ぶりの新曲として発表された「Know My Name」もまた、ここまでに書いてきた内容から「その先」へと線を描いていくであろう強烈な楽曲となっている。

 冒頭から「GIANTS」を超えるスケール感で炸裂するサウンドに圧倒されるが、インタビューでもヤスオ自身が語っていたように、ブルックリン・ドリル(これもまたエコーのルーツを汲んだチョイスだ。また、「Worlds 2026」の開催地がアメリカであることも影響しているだろう)の刻み込むようなビートが、ただでさえパワフルなメンバーの歌声やラップを限界まで引き上げている。興味深いのが、ただビートを使うだけではなく、その音色をマーチングアンサンブルのようなリズムへと転用することによって、まさに世界大会スケールの高揚感を生み出しているということだろう。個人的にもブルックリン・ドリルの楽曲を愛聴しているが、こんな使い方をするのは今まで聴いたことがない(まるで次々と花火が爆発するかのように炸裂するビートアレンジも最高だ)。

 それでいて、アカリの鮮やかな韓国語ラップやセナの艶やかにビートを乗りこなす歌声といった「らしさ」もバッチリ活かされていて、まだたったの2曲目であるにも関わらず「これはTrue Damageの曲だ」と思わせてくれるのだから本当に面白い。冒頭で書いたように、今回の「Know My Name」は「Worlds 2026」のテーマソングでもあるのだが、これまでに担当してきたLinkin ParkやImagine Dragons、Zeddといった現実世界のアーティストにも引けを取らない(どころかそれ以上とも言える)スタジアムクラスのスケール感が炸裂しており、これはまさに『LoL』屈指の存在感を誇るTrue Damageだからこそ実現できたものだろう。

Heavy Is The Crown ft.Linkin Park(オフィシャルミュージックビデオ)| リーグ・オブ・レジェンド Worlds 2024 アンセム

 さて、実は本稿を書いている時点では、まだ楽曲のみで肝心のミュージックビデオを見ることができていない。彼らの表現は、映像を含むマルチメディア体験として味わってこそ、真価を発揮するものだ。インタビューでは明言されなかったが、毎年凄まじい演出が話題を呼ぶ「Worlds 2026」のオープニングセレモニーでも、間違いなく彼らの姿を見ることができるだろう。楽曲を聴いただけでも、今回のカムバックが成功することは確信できる。あとは、それがどれほど巨大なものになるのかを見届けるのみだ。

「『リーグ・オブ・レジェンド』Worlds 2026アンセムをTrue Damageが担当 約7年ぶりの活動再開、ヤスオがその背景を語る

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