世界一の携帯電話評論家・山根康宏のスマホ進化論(第22回)

AIやSNS疲れの救世主? 音楽プレイヤーにもなるギミックが楽しいスマホ『Sidephone』を試してみた

 生成AIやSNSで常に情報に接する時代。そんな流れに逆行するように登場したのが『Sidephone』だ。どんどん性能があがるスマートフォンに対して「必要最小限のアプリが使えればいい」とばかりにカナダのスタートアップのSidephone社が開発。一見するとガラケーのように見えるが、実はキーパッドを交換して多彩な使い方にも対応するスマートフォンなのだ。

ミニマリスト向けのシンプルなスマホ

 『Sidephone』の名前の由来は、メインのスマートフォンの横で2台目として使える簡単操作端末から来ている。日常のすべての連絡やSNSを1台でこなすスマートフォンの代わりに、週末やプライベートの時間だけ持ち歩く「横(Side)に置いておくための電話」というコンセプトで開発されたのだ。パッケージもミニマルで、フタを開けると本体の横に10キーパッドが並んでいるという、思わずニヤリとしてしまう小さなサプライズが用意されている。

開封すると、キーパッドが分離した状態になっている

 ミニマルコンセプトな製品ながら、キーパッドが取り外しできて交換できるというギミックは、自分のライフスタイルにぴったりな使い方にカスタマイズできるという楽しみを与えてくれる。キーパッドはマグネット式で本体に装着。交換も簡単だ。

マグネット脱着式のキーパッド

 電源を入れるとシンプルな製品名『Sidephone』のロゴが表示される。ディスプレイのサイズは2.8インチだ。なおチップセットは非公開のため性能は不明だが、起動にやや時間がかかることからエントリークラスのものを搭載しているようだ。通信方式も5Gには非対応で、4G対応となっている。

シンプルな起動画面

 本体サイズは実測で128.5 x 55.0 x 13.2mm。ちょっと前のガラケーのような大きさだ。バッテリーはエントリークラスの製品性能であることや、画面サイズも小さいために、1日使える容量であるという。なお、非公式だがネット上には2000mAhという情報もある。

ガラケーサイズのボディー

 メタリックな仕上げの本体はチープさがなく、日々使っていても飽きることはなさそうだ。カメラも公式には性能は公開されていないが、撮影した画像サイズから判断すると1200万画素相当のものを搭載している。外部端子はUSB Type-Cのみで、ヘッドフォン端子は非搭載だ。

メタリック調のボディー

デジタルデトックスを考えたシステムか

 『Sidephone』のOSはAndroidをベースにしたModern OSというもので、極力シンプルなデザインとなっている。たとえばアプリアイコンの下にアプリの名前は表示されない。待ち受け画面もアイコンが並ぶだけと非常にシンプル。まさしくデジタルデトックスに向いたOSだと言えるだろう。

待ち受け画面はとてもシンプルだ

 Androidをベースにしているが、アプリストアは非搭載。そのため購入した時点では通話やカメラなど必要最小限のことしかできない。もちろんその使い方こそがデジタルデトックスになるのだが、そうは言ってもブラウザやメッセージなど、ある程度のアプリは入れたいところだろう。『Sidephone』から公式サイトのQRコードを読み込むことで基本的なアプリを入れることが可能な他、自己責任になるが「野良アプリ」と言われるアプリを入れることもできる。

公式サイトからQRコードでアプリの入手も可能

 ある程度アプリを入れてみたが、公式からはグーグル関連のアプリは入れることができないため、ブラウザも他社のものを入れてみた。このようにアイコンだけが並ぶので、多数のアプリを入れたとしてもこれはこれでシンプルなユーザーインターフェースだと感じられる。

アプリを多数入れた状態

 2.8インチの画面だが、ブラウザを使っても必要最小限の情報は得られるし、日本語入力もアプリを入れることで可能になる。なお10キー入力だけではなく、画面にキーボードを表示しての入力も可能だ(日本語入力システムによっては、10キーからの直接入力はできない)。地図アプリはやはりグーグルマップを入れたいところだ。

ブラウザの表示。日本語入力もOK。公式から入れる地図アプリは情報が少ない

 カメラは1200万画素であればこれも必要十分な性能と言える。明るい屋外ならば結構きれいな絵が撮れるし、多少の画質の悪さは「エモい」系の絵にも見えるだろう。望遠倍率の変更や細かい設定も不要、カメラを起動してサクサク撮れるのは快適だ。

カメラも必要最小限の性能なので十分

キーパッド交換でより楽しくカスタマイズ

 『Sidephone』を楽しくしてくれるアクセサリが交換式のキーパッドだ。現在は音楽プレーヤーとして使うためのサウンドダイヤルキーと、高速で文字入力が可能なQWERTYキーが別売されている。透明なパッケージもおしゃれな小物、といった感じだ。

別売のキーパッド

 前述したようにキーパッドはマグネットで張り付けられるため、簡単に取り外して交換できる。たとえば駅のホームでブラウザを見たりメッセージをしつつ、電車が来て乗車したら、サウンドキーをポケットから取り出してさりげなく交換、移動中は音楽を聴く、なんて使い方ができるのだ。

キーパッドの交換は簡単だ

 サウンドキーを取り付けると、その外観はスマートフォンやケータイではなく、音楽プレイヤーそのものになる。なおこの状態でも画面のタッチ操作はできるので、急なメッセージが来てもその場で返信も可能だ。

音楽プレーヤー風の外観になる

 サウンドキーは音楽の再生、停止、前後の曲へのスキップと、操作性はシンプルで、手軽な音楽プレーヤーとして使える。画面をタッチせず再生コントロールできるのは便利だ。スマートフォンを使っているときは、検索やAIやメッセージなどやることが多いが、『Sidephone』はできることがある程度限られているため、むしろ音楽プレーヤーはよく使う機能として使用したくなる。できればヘッドフォン端子があればもっと気軽に音楽を楽しめると感じられる。

音楽プレーヤーとして使いたくなる

 音楽再生中に『Sidephone』からサウンドキーを取り外してみたが、そのまま音楽再生もできた。実は10キーも含め、『Sidephone』はキーパッドを外した状態でも操作ができるのだ。キーパッドを外した部分だけを覆うカバーが今後出てきたら面白いだろう。

キーパッドを外しても動作する

 QWERTYキーは10キーパッド風だが、1つのキーに、アルファベット2文字を割り当てるという、ちょっとトリッキーなーキーパッドだ。これは古くはメッセージ端末としても知られていた『BlackBerry』の一部のモデルが採用していたもので、小さいキーサイズながら高速な文字入力ができる。ただし変換操作が必要な日本語入力には不向きで、日本語入力アプリでは対応していない。

高速な文字入力が可能

 2026年6月時点では、システムは日本語表示に対応しているものの、日本語入力は別途アプリを探して入れる必要があるなど、日本で使うにはやや敷居が高い製品だ。だが無駄のないシンプルなボディーデザインや軽快なOS、そしてキーパッドを交換できるなど、魅力は多い。できれば正式な日本対応モデルを販売してほしいところである。

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