音楽との距離感を再定義するイヤホン Shokz × サカナクションの山口一郎モデルを「使って分かる」思想と技術

 2026年3月上旬に発売された『Shokz OpenFit 2+』×サカナクションの山口一郎モデル。即完売で本モデルは既にオンライン版は販売終了しているが、単なる限定コラボとして語るには勿体ないプロダクトだ。ベースとなったShokz『OpenFit 2+』自体の完成度の高さに加え、山口一郎氏とのコラボによって提示されたのは、「音楽との距離感」を見直すひとつの具体的な答えでもある。本稿では、実際の使用体験をベースに、その思想と製品としての実力の両面から改めて語りたい。

環境音前提の「オープンイヤー」ならではのリスニング体験

 イヤホンは長らく「どれだけ音に没入できるか」を軸に進化してきた。ノイズキャンセリングはその代表例で外界の音を遮断し、音楽だけに集中する体験を前提としている。一方でShokzが独自に進化させてきたオープンイヤー型は、この前提とは異なるアプローチを取る。耳を塞がず、周囲の音を取り込みながら音楽を再生する構造だ。実際に使ってみると、この違いは想像以上に大きい。

 装着直後は、環境音がそのまま入ってくることに戸惑う。カフェやオフィスでは会話音や作業音が重なり、音楽への集中度は明らかに下がる。ただし、この状態に慣れてくると評価は変わる。周囲の音を遮断しないため、作業中や移動中でも状況把握がしやすく、イヤホンの着脱頻度が減る。結果として、日常の中で音楽を流し続ける使い方に適している。そして「外さなくていい」という点は、実用上のメリットとして大きい。

 装着はイヤーフック式で安定感があり、長時間使用でも耳への負担が少ない。圧迫感がないため、数時間連続で使用しても疲労は感じにくい。音質は密閉型と比較すると低音の量感は控えめだが、全体のバランスは良好。中高域はクリアで、ボーカルや細かい音の分離も十分だ。重要なのは、前述した通り環境音が混ざる前提で考えられている点だ。音を強調しすぎず、外音と重なっても聴き取りやすい設計になっている。操作面では、物理ボタンとタッチ操作の併用により誤操作が少ない。バッテリーも日常使用には十分で、ケース込みで長時間の運用が可能だ。総じて、「ながら聴き用途のイヤホン」としては完成度が高い。

ユーザーの実体験からも見える「ながら聴き」の新体験

 既に筆者はShokzのオープンイヤーを複数試してきたので、今回はリアルサウンドテック部の姉妹メディアである「リアルサウンド(音楽部)」でサカナクションのファンだという女性編集者に初装用してもらって感想を聞いてみた。

 第一印象として「軽くて装着感が良い。耳に触れる部分が柔らかく、長時間でもストレスが少ない」とインプレッション。音質については「今回初めてオープンイヤー型を使ってみたが、“耳をふさがない感覚”に感動。周囲の音が自然に聞こえるので、装着したままの会話もスムーズ。音楽と日常の音が違和感なく並行して流れてくるのは衝撃でした。音質もとてもよく、明瞭でありながら音楽が耳の中に広がっていく感じがすごく心地いい」とShokzのオープンイヤー初体験での新鮮な感想を口にした。

 装着感としても「最初はこの位置で合ってる?」と少し不安があったが、ハマる場所さえわかれば安定感も問題なし。耳にガッチリと触れる部分が少なくてとにかく付け心地が優しいので、数時間付けっぱなしにしてもまったく耳が疲れず、まさに付けているのを忘れる心地よさでした」と高評価であった。

 また、ファン目線としても見どころは多く「デザインモチーフとして、さりげなく『0106』と入っているのがとにかくかわいい! 山口さんの『イチ(1)・ロー(6)』を冠したシンプルなデザインなので、ファンとしても持っているだけで気分が上がります。何より、山口さんが携わっているということで、イヤホンの性能に対する信頼感もぐっと増しますし、実際に聴いてみてその納得感はさらに深まりました。ちなみに、私はこのイヤホンで一番最初に『Ame(B)』を聴きました」と興奮気味に語ってくれた。

単なるコラボモデルとしての存在を超える価値観

 その山口一郎氏は2026年3月からShokzのアンバサダーに就任。以前からShokzのオープンイヤー型イヤホンを日常的に使用しており、その体験をベースに今回のコラボが成立した。朝から夜まで、時には眠りにつく瞬間まで、日常のパートナーとして Shokzのオープンイヤー型イヤホンを愛用してきたそうだ。 音に強いこだわりを持つ表現者でありながら、「耳をふさがない」という新しい聴き方を、日常の中で自然に実践してきた存在でもある。そのため、プロダクトには彼の価値観が反映されている。ケース内部に刻まれた「No turning back — only the becoming of what’s yet to be.」というメッセージはその象徴だ。

音楽との距離感を再定義するイヤホン『Shokz OpenFit 2+』

 このイヤホンを使い続けて感じるのは、「ながら聴き」に対する認識の変化だ。これまでは、集中して聴くことが前提で、その外側にある行為とされてきた。しかしこのプロダクトは、むしろ日常の中で音楽を聴くことを前提にしている。歩く、働く、考える。そのすべての時間に音楽が重なる。音楽はイベントではなく、環境になる。

 Shokzと山口一郎のコラボモデルが提示するのは、単なるオープンイヤー型のイヤホンではない。それは、音楽との距離の取り方を更新するガジェットの価値。遮断して没入するのではなく、開いたまま共存する。そして重要なのは、それが理念だけでなく製品として成立していることだ。思想と技術、その両方が揃ったときに価値観は変わる。音楽はもっと自由でいい。そのことを、このイヤホンは体験として教えてくれるのだ。

関連記事