物理キーボード付きケース『Clicks』は硬直したスマートフォン業界に“新たな風”を吹かせるか

 イギリスのモバイルアクセサリーブランド「Clicks Technologies」が、12月3日に物理キーボード付きiPhoneケース『Clicks Keyboard』シリーズの日本での発売を開始した。

 『Clicks Keyboard』は、iPhoneケースとQWERTY配列の物理キーボードが一体となったアイテムだ。内部のUSB-C及びLightningコネクタを差し込みながら、通常のケースと同じ要領ではめ込んで使用する。

 接続後は、特別なアプリのインストールや設定を行う必要もなく、すぐにキーボードとして使用できる。シンプルな設計、シンプルなデザイン、そしてシンプルな機能を持ったアイテムだ。

一番の魅力は「ショートカット機能」

 キーボードとしてはミニマムなUS配列となっている。基本的なアルファベットキー、Backspace、Enter、Shift、command(cmd)キーに加え、音声入力キー、数字入力への切り替えキー、入力方式を変更する地球儀マークのキー、キーボード呼び出し用のキー、アクションキーが搭載されている。

 たとえば数字を入力する際は、数字切り替えキーを1回押すと次の入力が数字に切り替わる。2回押すと数字入力にロックされる。記号を入力する際はShiftキーを使って同様の操作を行う。

 ここまでは基本操作。注目すべきはショートカットキーだろう。たとえば「cmd+H」でホーム画面を呼び出したり、「Space」「Shift+Space」で画面のスクロールも可能だ。『Safari』上では「cmd+N」で新しいタブ、「cmd+W」でタブを閉じる、などPCやiPadと同様の操作が可能となる。もちろん「cmd+A(全選択)」「cmd+C(コピー)」「cmd+V(ペースト)」といった基本的なショートカットキーにも一通り対応している。

 さらに専用アプリと組み合わせることで、ワンボタンでタスクの実行やスマート家電の操作なども行える点はかなり便利だ。

 またキーボードを画面外に出したことで、テキスト入力時に画面を広く見ながら操作できるのも意外な利点。これは長めのテキストを書くときに嬉しい恩恵だ。

「モノ」としての魅力

 機能的であるに越したことはない。しかし『Clicks Keyboard』の本質は、文字通り“物理”的に存在している点にある。つまり佇まい、質感、打鍵感といった、モノとしての魅力だ。

 Clicks共同創業者でCEOのエイドリアン・リ・モウ・チン、共同創業者のCMOジェフ・ギャドウェイは「自分たち以上にモバイルデバイスの物理ボタンにパッションを持ち、詳しいチームはない」と語る。

Clicks共同創業者、CEOのエイドリアン・リ・モウ・チン

 特にジェフ・ギャドウェイは「BlackBerry」でおよそ10年間デバイス開発に携わってきた経験を持つ筋金入り。「BlackBerry」といえば、カナダで生まれたモバイルデバイスメーカー。すでにモバイル事業からは撤退してしまったが、ガラケー時代からスマホ時代にかけて一貫して物理キーボードを搭載したモバイルデバイスを開発。日本でこそ流行らなかったが、“元祖スマートフォン”とも呼ばれ、欧米を中心に親しまれた。

Clicks共同創業者、CMOのジェフ・ギャドウェイ

 当然、キーボードの質感や打鍵感には相当のこだわりを持っている。打鍵してみると、硬すぎず、柔らかすぎず、適度なクリック感が心地よい。キーストロークもほどよい。浅すぎないので、しばらく使っていても指が痛くならないし、逆に深すぎて他のボタンを押してしまうこともない。

 またキーボードの右半分は、右側に、左半分は左側にそれぞれ少しだけ傾斜しており、両手で持ちながら入力しやすい作りとなっている。最初期のプロトタイプから100回以上の改良を重ねて生み出されたという。

スマホの物理キーボードは日本に馴染むのか?

「Tokyo Smoke(東京スモーク)」

 『Clicks Keyboard』は、日本では現在Amazonで購入できる。日本で展開するモデルは『iPhone16 Pro』用と、『iPhone16 Pro MAX』用の2種類だ。カラーはそれぞれ「オニキス」「サーフ」「スパイス」の3種展開。また発売は未定となっているが、白をベースとした「Tokyo Smoke(東京スモーク)」も発表された。

左から「サーフ」「オニキス」「スパイス」

 また現在日本からの公式サイトからは、『iPhone14 Pro』以降の全シリーズに対応したモデルを購入できる。

 今後『Clicks Keyboard』が日本で普及するのかはわからない。出先からスマホで頻繁にテキストを打つ時間が多い一部のビジネスマンには需要がありそうだが、一般ユーザーに必要なものとは思えない、というのが正直なところだ。

 一方で要、不要の基準で考えずに単なデバイスを触る喜びやこだわりに目を向ければ、魅力を感じる人も少なくないはず。CEOのエイドリアンも「日本人はテックに対して前のめりで新しいもの好き。職人技や細やかなこだわりに理解を持ってくてる人が多い」と期待感を示している。

 『Clicks Keyboard』によって硬直したスマートフォンの風景に変化が訪れることを期待したい。

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