連載:作り方の作り方(第十二回)

『愛のハイエナ』はテレビマンとしての“勘”から生まれた 『有吉の壁』など手がけた演出家・橋本和明が放送作家・白武ときおに明かす「エンタメへの欲望」

 プラットフォームを問わず縦横無尽にコンテンツを生み出し続ける、放送作家・白武ときお。インディペンデントな活動をする人たちと、エンタメ業界における今後の仮説や制作のマイルールなどについて語り合う連載企画「作り方の作り方」。

 第12回は、『有吉ゼミ』や『有吉の壁』で知られる演出家・ディレクターの橋本和明氏が登場。約20年間勤めた日本テレビを2022年末に退職し、独立。現在は『愛のハイエナ』(ABEMA)や『名アシスト有吉』(Netflix)など大手配信プラットフォームでコンテンツを手がけながら、SNS領域でのコンテンツ制作も行っている。

 橋本の興味や活動は、バラエティのみならずドラマや舞台、映画など幅広い。そんな彼が日本テレビを退職し、挑戦したいことはなんなのか。また、いまのエンタメ業界をどう見ているのか。同じくプラットフォームや領域にとらわれずエンタメを手がける白武と、今後のコンテンツのあり方について考えた。

独立することで上がった“コンテンツ作りの自由度”

橋本:Xはフォローしてますけど、ゆっくりお話するのは初めてなので、ちょっと緊張しますね。こういうかっちりとした対談じゃなく、居酒屋とかでやりたいくらい。でもまあ、気楽に話せたら。

白武:そうですね。よろしくお願いします。

橋本:白武さんには以前、僕からご連絡しましたよね。

白武ときお

白武:そうですね。僕の書いた『Youtube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)を読んでいただいて、その感想をいただきました。その節はありがとうございました。

橋本:いえいえ、こちらこそ。それからXをフォローし合って、近しいところで活動しているし、お互いの動向はけっこう知っているんじゃないかと思ってます。でも、こうして改めてお話しする機会は意外となかったですね。そういえば『AGASA』(※)観ましたよ、面白かった。

(※)『AGASA』:参加者が本人役としてミステリーの世界に入り、事件の犯人を推理する新たなミステリープロジェクト。ミステリーを用意する案内人には、松丸亮吾・平子祐希(アルコ&ピース)を起用。

白武:嬉しいです、ありがとうございます。

橋本和明

橋本:僕も謎解き好きだし、体験型のコンテンツも好きなんですよ。舞台やコントも作りますし、原点にはやっぱり出身である東大落研がありますし。テレビに最初からがっつり興味があったというよりは、だんだんテレビになじんでいったタイプなので。

白武:実際、橋本さんが手がけられた作品群の幅は、すごく広いなという印象があります。

橋本:時代が変化して、映像コンテンツのニーズや表現手法も変わってきましたし、演者の関わり方も変わってきたじゃないですか。そこでテレビマンが持っている武器って、高速でPDCAを回してコンテンツを作る能力だと思うんです。

 その武器を使って、いまはいろんな場所で試しているところなので、興味や活動の幅が広く見えているんじゃないかと思います。でも別に自信があるわけじゃないから、一つひとつ手探りだし、白武さんが『AGASA』を作ったときもそうだったんじゃないですか?

白武:たしかにそうですね。でも、それにしても興味のある対象、挑戦するジャンルが広いなあと思いますね。

橋本:新しいものをやるときって「わからない」でやるけど、「わからない」からこそ当たるというか。作り手に熱量があって、それがみんなに伝わってが、そうしてコンテンツが当たるものだと思うんですよ。そういう意味で、いまはすごく楽しい時代ですよね。こんなにコンテンツを出す場所があって、なんでもコンテンツが作れて。

白武:それは橋本さんが日テレを出て、より自由に泳げるようになったからこそ感じるものでもあるんじゃないですか? 日テレで『有吉ゼミ』を作った人が、ABEMAで『愛のハイエナ』みたいな刺激的なアプローチもするし、『名アシスト有吉』をNetflixで制作するし。

橋本:辞めることで自由度が上がったところはあると思います。テレビの仕事をやっていると、「この人面白いけど、ゴールデン番組には出てもらえないな」とか「このテーマは面白いけど、地上波でやったら怒られるな」とか思うことはありましたし。

白武:そうですよね。地上波ではできないってわけではないけど、地上波でやってもしょうがないものもあると思いますし。

橋本:観る人の多くが不快に思うこととかはダメじゃないですか。刺激が強すぎるものも難しい。その上で表現としてリアルだったり強度があったりすることはなんだろう、と常に考えています。

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