チラズアートが手掛ける「8番出口ライク」な最新作 『新幹線 0号』に期待される要素は?
2024年1月26日、Chilla’s Art(チラズアート)は、最新作『新幹線 0号(Shinkansen 0)』のSteamストアページを公開した。
昨年末、界隈で話題となった『8番出口』に着想を得ているとされる同タイトル。ホラーゲームの制作に定評のあるチラズアートが自らの主戦場を舞台に、そのフォロワー作品を手掛けることにはどのような意味があるのか。『8番出口』発売以降のゲームカルチャーの状況を踏まえ、『新幹線 0号』に期待される要素を考える。
ホラーに特化し、数々の人気作を生み出してきた制作チーム・チラズアート
チラズアートは、ホラーのジャンルに特化して作品を発表し続けている国内の制作チームだ。アメリカ育ち・日本在住の兄弟によって設立され、これまでに『Parasocial | パラソーシャル』や『Aka Manto | 赤マント』『Night Security | 夜間警備』など、20以上のタイトルを開発・発売している。
今回発表となった『新幹線 0号』は、2023年末に界隈で話題を呼んだインディー作品『8番出口』にインスパイアされたもの。チラズアートにとっては、2024年の第1作目にあたるタイトルとなる。ホラージャンルを主戦場としてきた彼らが、トレンドの作品をどのように解釈するのかに注目が集まる。
2024年2月1日現在、価格/発売日ともに未定。Steamストアページには、近日登場予定と謳われている。
増える『8番出口』フォロワー。『新幹線 0号』に期待されるのは唯一無二の作品性?
ゲームカルチャーでは直近、『8番出口』のヒットを背景に、同作のフォロワーに分類されるタイトルのリリースが相次いでいる。『8番出口』とは、2023年11月29日にSteamにて配信が開始されたウォーキングシミュレーションゲーム。プレイヤーは無限に続く地下通路で、同じような風景のなかにあるちょっとした変化を探し出し、脱出ルートである8番出口への到達を目指す。いつもと異なる点があるにもかかわらず、確認を怠ってその道を進み続けると、ふりだしへと戻されてしまう。地下通路のロケーションなど、ゲームデザインの各所にホラー/サスペンス的要素が散りばめられていたこともあり、同ジャンルを愛好するフリークたちのあいだで話題を集めた。低価格かつミニマルなボリュームが実況・配信の文化とも好相性で、そうしたコンテンツを通じて爆発的に拡散された。
多くの『8番出口』フォロワーは、この成功例に追随するべく、類似するゲームデザインでユーザーを取り込もうとしているのだろう。ここ数日のあいだでも、PlayStationプラットフォームで『出口 9』、Steamプラットフォームで『10番商店街』と、ルーツを意識した名前・ゲーム性を持つタイトルが発表/発売されている。それ以前まで含めると、簡単には紹介しきれない数のフォロワーが生まれている現状だ。
本稿で取り上げている『新幹線 0号』もそのうちのひとつ。『8番出口』のゲーム画面を観たことがある人ならば、(前項冒頭に挿入した)新幹線内の通路を写したスクリーンショットに既視感を覚えるはずだ。タイトル名にもモチーフからの影響を感じる点が、一連の風潮をさらに印象的なものとしている面もある。
一方、それらがある意味で目論見どおりにユーザーを獲得し、『8番出口』に並ぶ評価を手にしているかと言われると、そうではない。ほとんどが“二番煎じで味の薄いゲーム”と成り果てている実態がある。なかには順序が逆であれば(フォロワーとして生まれているのだから無理な話ではあるが)一定の評価につながったであろうものも見受けられるが、そもそも同じ土俵で話すレベルに達していないタイトルも少なくない。玉石混交と言っても過言ではない状況が現在進行形で続いている。
そのようななかにあって、『8番出口』にインスパイアされたタイトルをチラズアートが手掛けることにはどのような意味があるのか。先にも述べたとおり、チラズアートはホラーゲームの制作に定評のあるチームだ。『8番出口』が好意的に受け止められている界隈は、彼らにとって主戦場のような場所でもある。だからこそ、『新幹線 0号』には、オリジナルやその他のフォロワーにはなかった、チラズアートならではの切り口が盛り込まれる可能性もある。
『8番出口』を制作したゲーム開発者のコタケノトケケ氏は、類似ゲームが数多く誕生している現状について、「全く同じ場所やシステムでない限り、オマージュゲームを歓迎する」「同作やそのフォロワーが分類されるサブジャンルを『8番ライク』と呼んでほしい」と、その胸中を明かしている。ゲームカルチャーの歴史を振り返ると、さまざまな人気ジャンルはこのようにしてオリジナルとフォロワーが相互作用を繰り返すなかで発展してきた経緯がある。少なくともこれまでは“二番煎じ”の多かった「8番ライク」の分野だが、『新幹線 0号』に変化が盛り込まれるのであれば、ジャンル確立への大きな分岐点となっていくのではないだろうか。
もとを正せば、『8番出口』もまた、簡素で静か、超現実的で不気味な空間を指して使われるインターネット・ミーム「リミナルスペース」に着想を得ており、そのプレイ感は、2014年から2015年にかけてPlayStation 4向けに配信されていた、ゲームデザイナー・小島秀夫氏によるサバイバルホラー『P.T.』からの文脈を感じさせるものだった。どのような要素を集め、どのようにデザインしていくか(ボリュームや価格の設定も含む)が、制作者のオリジナリティであり、その部分が時代にマッチしたからこそ、同作は成功を勝ち取ってきたはずだ。
『新幹線 0号』に期待されるのは、チラズアートなりのオリジナリティだろう。それこそがこれまでに発表されてきた多くの『8番出口』フォロワーに欠けていた、最も重要なパーツでもある。同タイトルは『8番出口』に匹敵する成功を収めることができるか。リリース後の界隈の盛り上がりを注視していきたい。
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