『フリースタイル日本統一』#14ーー現役最強・呂布カルマの初陣は“予想外の判定結果”に

“試合の流れ”が目に見える形に “チーム戦”や“ビート”をキーワードに解説

 裂固は開幕早々、先攻で〈俺はカルマさん勝ってたと思ってたぜ〉と、誰もが気になっていただろう部分を指摘。そのまま得意のライムで畳み掛けるも、歩歩も〈俺はネアンデルタール人 レペゼン旧石器 急接近でチューでもしようか?〉〈ポポポポーン〉など、おそらく過去にフリースタイルバトルで誰も使ったことがないだろう語彙を乱射し、ここにきてギアを上げてくる。そんな彼の攻撃をしぶとく耐え抜き、なんとか持ち堪えたのが裂固。結果は、3-2の僅差で裂固が勝利を勝ち取った。

 この勝敗について、いくつか感じたことがある。まずは、このバトル後にKEN THE 390の講評でも触れられた通り、呂布カルマ戦を経て、観客の歩歩に対する目が冷ややかになっていたこと。

 呂布カルマが放った数々のラインはもちろん、登場時の「俺が笑いを教えたるわ」といったバトル外での言葉にも意味があった。歩歩は、ここまでの連戦でのスタミナ切れや、突飛な行動が徐々に減りつつあったのも事実だが、そうしたわかりやすい要因ではなく、呂布カルマの浴びせた冷や水が、徐々になって効いてきたに違いない。バトル自体はあくまで個人戦ながら、全体的な勝敗を決めるのはチーム戦。複数のラッパーがバトンを繋ぐ面白さや“流れ”の大切さが、このあたりによく現れていたと思う。

 “流れ”という意味では、ビートとの相性も重要だと改めて感じさせられた。順に、楓戦はGottz & MUD「Adrenalin - Remix」、KANDAI戦はICE BAHN「LEGACY」、呂布カルマ戦はBAD HOP「Kawasaki Drift」、裂固戦はELIONE「Winner's Circle」と、歩歩は合計4つのビートに乗ったわけだ。そのうち「LEGACY」は得意かと思われるブーンバップだったほか「Adrenalin」もトラップビートのなかではノリ重視な動きのある方。

 一方、後半の「Kawasaki Drift」「Winner's Circle」には、歩歩のエンタメ重視なスタイルが乗せづらく、どうしても格好よい言葉の方が相性がよい。その方が観客にも刺さりやすいし、“ビートが喋る言葉”にも近づけられる。「Kawasaki Drift」なんて、血が滲み、黒く汚れた油がまとわりついた印象を抱いてしまう。ただそれは、これが川崎の悪環境を生き抜いたBAD HOPのビートだと、すでに先行イメージを抱いてしまっているからかもしれないが。

 なんにせよ、チーム戦やビートと、さまざまな“流れ”がわかりやすく捉えられた歩歩の4連戦。勝利した裂固は次週、TEAM東海を勝利まで引っ張れるか。楓の兄貴分として、男の背中を見せてくれ。

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