技術が切り拓く、マップ開発の新時代　『World of Tanks』が向き合う“ユーザーの感動”

　オンライン・マルチプレイヤー戦車アクション『World of Tanks』（以下、『WoT』）は、飛行船の墜落や爆撃による地形の変化といったリアルタイムに変動していくマップの新メカニズムを導入した「ランダムイベント」の制作・実装を発表した。ユーザーの声を反映しての制作となり、よりリアルな表現をゲーム内で楽しむことができるようになるという。

　リアルサウンドテックでは『WoT』レベルデザインチームのデザインオーナー/ゲームデザイナーであるイリヤ・シェクロタ氏にメールインタビュー。「ランダムイベント」制作の背景やゲームビジュアルを追求するうえでのこだわり、そしてユーザーとの向き合い方などについて伺った。（編集部）

リアルなビジュアルはプレイヤーの“追体験”を生む

――リアルな表現のアップデートとなる「ランダムイベント」実装について、概要を教えてください。

イリヤ・シェクロタ（以下、シェクロタ）：まず、ランダムイベントを制作するうえで挑戦したのは、コア・ゲームプレイ・フレームワーク（CGF）をWoTに導入することです。これはゲーム開発業界においてもっともモダンでトレンドに乗った技術のひとつである、エンティティ・コンポーネント・システム（※）の一種です。

　WoTにはすでに一部導入されていたのですが、ゲーム内のイベントをリアルに表現するうえで、機能や柔軟性が明らかに不足していました。事実、我々は技術を大きく改善し、新フォーマットでWoTに導入していく必要がありました。

　以前は車両にのみ導入できていましたが、CGFの技術はゲーム内環境において、車両以外のさまざまなオブジェクトにプロパティやつながりを与えるコンストラクタのようなものです。これにより、プロパティやオブジェクトの一部の変更や管理を可能にしています。そして車両とは異なる行動ロジックで、それぞれのオブジェクトへ作用させることができるのです。

　CGFは高度な自動化システムや拡張性を伴い、ゲームコンテンツの制作に使用されます。CGFの補助により、現在はよりシンプルで便利なフォーマットのなかで、ランダムに発生するイベントをスピーディーに制作することができています。

※主にゲーム開発で使用されているソフトウェアアーキテクチャパターン

――ゲームビジュアルの“リアルさ”を追求するうえでこだわっているポイントはどこですか。

シェクロタ：ビジュアル面は現実に参考にするものをベースとする必要があります。弊社のゲームのビジュアルは、写真や動画を通じてよりリアルなものへ仕上げていきます。

　くわえて言えば、「リアルなビジュアル表現」を達成することは、現実に取って代わるという意味に留まりません。プレイヤーが過去に見た映画やほかのゲームで見たグラフィック体験を、より壮観な形で追体験させることにあります。

ユーザーの声で再確認した“正しい道”

――ユーザーからの声を反映したアップデートとのことですが、開発サイドとして印象的だった意見とは？

シェクロタ：ユーザーからのフィードバックで、ランダムイベントをここ最近で最も興味深く、意義深いイベントという声をいただき、大きな収穫だったと思っています。「このようなイベントをすべてのマップに反映してほしい」という声をいただいたことで、我々がコミュニティとともに正しい道を歩んでいるのだと再確認できました。

――このアップデートがゲームプレイに及ぼす影響について、お答えできる範囲で教えてください。

シェクロタ：ランダムイベントの実装は、これまで以上にマップをダイナミックなものに進化させ、ゲームの幅を広げることになります。プレイヤー自身のゲーム内での行動やポジショニングをより考えられる、戦略的にデザインされたイベントなのです。我々のゴールは、ゲームの変化に最初は抵抗を感じるプレイヤーでさえもポジティブな経験ができる、予測できないイベントとしてサプライズ感を演出することにありました。

　くわえて、ランダムイベントでは戦闘中、マップが通常の風景からダイナミックに変化します。新たなメカニクスとして、革新的なマップ開発への新たな道を切り拓くものにもなったのです。

――今回のアップデートに限らず、ユーザー体験の向上のために大事にしていることを教えてください。

シェクロタ：一般的な回答になってしまいますが、世界中に我々のゲームを遊んでくれる数百万のプレイヤーがいて、みんなそれぞれ違って、それぞれ異なる趣向があります。我々にとって一番大事なのは、どのようなものがプレイヤーを納得させ、団結してもらえるか。なにが彼ら彼女らの魂を揺さぶることができるのかを理解し、感動させることがすべての鍵じゃないかと認識しています。

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