「降伏する会計担当」に「ただACに乗りたい戦闘狂」……個性的な『AC6』ヴェスパー部隊メンバーたちの背景を考察

 8月25日に『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』(以下、AC6)が発売。『ARMORED CORE VERDICT DAY』以来約10年ぶりの新作とあって、既存のファンはもちろん、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』や『ELDEN RING』といった最近のタイトルからフロム・ソフトウェアのゲームを知った入たちからも注目を集めている。

 『AC6』の舞台は、辺境にある「開発惑星ルビコン3」。かつて“アイビスの火”という大災害を引き起こして焼失したはずの“コーラル”という物質が再び発見されたことで、アーキバスやベイラムといった星外企業が侵略を始める。さらに、ルビコンへの渡航を防ぐ惑星封鎖機構や、ルビコンの自由のために戦うルビコン解放戦線も入り乱れる事態に。プレイヤーはハンドラー・ウォルターの指示のもとでルビコンに密航。コーラルを求めて惑星を探索するというのが本作のあらすじだ。

 本稿では、星外企業・アーキバスに所属しているヴェスパーという精鋭部隊に焦点を当てて、その隊長格のなかでも印象的なキャラクター4名の魅力や設定、そこから見える背景などについて解説していく。

※本稿は『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』のネタバレを含みます。

戦闘中に降伏する部隊長、V.VII スウィンバーン

 ヴェスパーの第7隊長。冠する数字が小さい隊長ほど強いようで、IからVIIIまでいるヴェスパーのなかではかなりの格下でもある。また、第1から始まり、作中では第10までの世代が存在する強化人間のうち、彼は第7世代であり、コーラル代替技術によって強化人間手術を受けた初めての世代だと言う。

 補足しておくと、強化人間は作中における戦闘兵器・ACを操作するために最適化された存在を指す。その強化人間になるための手術は、世代によって使われている技術が異なるようで、大別すると、“コーラル”という物質を使っていた第1~第6世代、コーラルの代替技術が導入された第7~第10世代に分かれている。

 ミッション“ヴェスパー7排除”でプレイヤーはスウィンバーンの暗殺を試みるのだが、彼の体力を一定まで削ると、金と引き換えに自分を見逃すかどうかスウィンバーンから取引を持ち掛けられる。拒否して倒してもいいし、逃がしてやってもいい。どちらを選ぶかはプレイヤー次第だ。

 戦闘中に降伏する敵は、『アーマード・コア フォーアンサー』で登場したパッチ・ザ・グッド・ラック以来、ふたり目。彼と同じ“パッチ”の名を持つキャラクターが、その後の『デモンズソウル』を始めとする「ソウル」シリーズで騙し討ちの常連になったように、もし新作が今後出るのなら、降伏する敵は「アーマード・コア」シリーズのお約束になりそうな気がしなくもない。

 ちなみに、本人の言うことが正しければ、スウィンバーンはヴェスパー部隊の会計責任者でもある。精鋭部隊の財布を握っていることから、事務能力についてはヴェスパー内やアーキバスからそれなりの評価をされているのだろうが、そもそも裏方の人間がなぜ前線に出張らなくてはならないのだろうか。もともと会計担当だったが、戦闘適正もあったからV.VIIに抜擢されたのか。あるいはヴェスパーに入った後に会計役を兼ねるようになったのか。どのような経緯があったのかはわからない。

 なお、彼の搭乗機であるガイダンスは、頭部を始めとするフレームパーツはアーキバス系列を中心とし、武器にはほかの企業製も取り入れた四脚。四脚の強みである滞空能力を使って浮きながら、ミサイルやグレネードを撃ってくる。近接武器に“スタンバトン”を持っているのも特徴で、連撃によって対象に強制放電(APが一定量減少する)を引き起こす。作中では「指導」にこだわるセリフもあるので、さながら警棒を手に犯罪者を取り締まる警官といったところだろうか。

『AC6』のテーマに深く根差した存在、V.IV ラスティ

 ルビコン解放戦線が拠点にしている要塞・通称“壁”の攻略や、巨大な自律兵器・アイスワームの撃破など、ストーリー中の重要なミッションでプレイヤーと肩を並べて戦ったのが、ヴェスパー部隊の第4隊長ラスティ。後述のスネイルから酷な扱いを受けるプレイヤーに対して同情的で、こちらを“戦友”と呼んで慕ってくれたりもする。自己申告だが、彼は第8世代の強化人間だそうだ。

 ミッション“未踏領域探査”では、相討ちを目論むアーキバスの手引きで戦うことになってしまうふたりだが、ここでラスティが撤退する際に放つ「理由なき力ほど、危ういものはない」というセリフが印象深い。この戦いのなかで、ラスティはプレイヤーの戦いぶりになにも見出せないというような言葉を言っており、この時点でラスティは、主人公が上司のハンドラー・ウォルターに盲従しているだけだと思っていたのだろう。

 物語序盤から、主人公は“レイヴン”というパイロットの身分になりすますのだが、レイヴンとは代々受け継がれてきた称号であり、自分の遺志で何かを選び取る者にこそふさわしいと作中で語られる。ほかのミッションには、「選ばない奴とは敵にも味方にもなれない」というセリフもあって、『AC6』では“自分の意志で何かを選ぶ”のが重要なテーマになっていると考えられる。

 最終盤で重大な決断をしたプレイヤーに対し、それまでとは違う新たな機体に乗ってきたラスティは、戦いのなかで主人公が選択したことを悟り、強さの質が変わったことを語る。このとき、自分の道を選んだプレイヤーには戦う“理由”があるわけで、そうしたなかでラスティとくり広げる2回目の一騎打ちは、なかなか燃えるシチュエーションだ。本作のストーリーの根底にある“選択”をよく体現しているのが、ラスティというパイロットなのかもしれない。

 彼の機体は2種類あるが、最初はアーキバス系列のフレームで構成された高機動の軽量逆関節機、スティールヘイズに乗っている。スピードで敵をかく乱しつつ、プラズマミサイルやバースト系の射撃武器で相手のACSに負荷をかけ、スタッガー状態になったところを近接武器のレーザースライサーで仕留めるという構成だ。スタッガー中の相手に大火力をぶつけるのが『AC6』における戦闘の基本であり、スティールヘイズの武器構成もそれとよく噛み合っているだろう。

 2機目がスティールヘイズ・オルトゥス。逆関節機だったスティールヘイズと異なり、こちらは二脚になっている。腕と背中に持っているニードル系武器が強力で、弾速も速くACSへの負荷も大きい。油断しているとあっという間にスタッガー状態になり、レーザースライサーで細切れにされてしまう。1機目も2機目も、強敵と言うにふさわしい強さだ。

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