ママタルトがテレビでは見せない“ドロっとした一面” 放送作家と語る『ラジ母』3年間の歩み
『ラジ母』は高級住宅街の貴婦人にも届いている
――番組が始まってからこれまで、内容はどのように変化してきたのでしょうか。
檜原:番組開始から2021年までは、アルバイトの話が中心でした。それ以降はライブやテレビに出た話や、ルームシェアでの出来事の話が多いです。
――『ラジ母』を聴けば、ママタルトの芸人としての活動もプライベートも全部わかるんですね。
檜原:『ツギクル芸人グランプリ』(フジテレビ)の決勝に行ったとか、『マイナビラフターナイト』(TBSラジオ)のチャンピオン大会に進んだとか、『キングオブコント』で初めて準決勝に進出したときのことも、全部『ラジ母』で話してますからね。僕らの歴史が分かる内容になっていると思います。
肥満:賞レースでいいところまで行ったのはもちろん、1回戦を突破したときとかも話しているので、本当にこの3年の全てが『ラジ母』に残っています。
檜原:たしかに。そう考えると過去のエピソードが残っていくラジオはいいものですね。
――『ラジ母』を聴く人はなぜ増えてきたのだと思いますか?
肥満:僕らがそれぞれ芸人仲間とルームシェアをしていることが、世間に知られるようになってきて、そこから「ママタルトってなんだろう?」と気になってラジオを聴き始めてくれたんだと思います。それからはライブに来てくれる方も増えました。
――周りからのラジオに対する反響はいかがですか?
肥満:『水曜日のダウンタウン』(TBS)で、一般の方のご自宅にお邪魔して冷蔵庫の中身を食べ尽くす企画に僕が参加したことがあるんですけど、ロケできるお家を探して高級住宅街を歩いていたら「ラジオ聴いてます」って声をかけられて。
檜原:ママチャリに乗った貴婦人にな。
肥満:そうそう。こんな高級住宅街にお住まいの方、主婦層にまで幅広く『ラジ母』が届いていることを知ってびっくりしました。夕飯の支度をしているときに聴くようなものではない、殺伐としたラジオだと思うんですけど。
檜原:ライブのオープニングで最近あった出来事とか話してましたけど、ラジオを始めてからはもっと幅広い人たちに話を聴いてもらえるようになったので、世界が広がっていった感覚があります。
「一生許さないロウソク」が燃え続ける肥満とそうではない檜原
――印象に残っているエピソードを教えていただけますか。
肥満:一番覚えているのは、中津浜線の喧嘩の回(#70〜#71)ですね。ラジオを始めた翌年、『M-1グランプリ』で勝つために大阪のフリーライブに出ようという話になったんです。その最終日のライブに中津浜線ってコンビがいたんですけど、彼らとの接し方で僕らが大揉めしたんです。
檜原:そのころまで、ママタルトは「価値観がほぼ同じ人間が組んでいる」と思っていたんです。でもこのときから「違う価値観の人間がコンビを組んでいる」と自覚できるようになった。
肥満:それまでは「嫌なヤツがいたら一緒にぶっ潰しに行こうぜ」っていう“嫌なチャゲアス”みたいな感じだったね。まぁ、それはいまでもそうか。
――中津浜線の喧嘩回を通して、カップルから夫婦になったような感じですか。
檜原:まさにそうです。それまでは根っこまで完璧に一緒でありたいと思っていたんですけど、それからはまったく違う人間だけど価値観について話し合いながら共に歩んでいくんだと思えるようになりました。
肥満:あの回があって、お互いが違う人間だと理解できて良かったと思います。
檜原:僕は嫌なことがあっても、その人自体のことを嫌いにはならないんですよ。嫌なことは嫌だと言いますけどね。
肥満:僕はその点が違うんです。嫌なことがあったら嫌いになるし、本気で嫌いになったら一生嫌い。「一生許さないロウソク」があって、そこに火がついたら一生燃え続けるんですよ。そういう相手がいま、5人います。
――檜原さんは「嫌なことがあっても嫌いにはならない」、大鶴さんは「嫌なことがあったら嫌いになる」と着地が違うのに、なぜ関係自体が険悪にならずにいられるんですか?
肥満:そもそもお互いのことが好きだからですね。言い合いになったとしてもそれは「お互いをもっと理解する」ためにしているだけで、話し合えば最終的に納得できるので。
檜原:喧嘩したときは「なんでこんなに考え方が違うんだろう?」と思ったんですけど、育ってきた環境やこれまでの人生の背景にあるものが違ったら、考え方も当然違うんですよね。僕には僕の幸せがあって、大鶴肥満には大鶴肥満の幸せがある。別にそれを統一する必要はないと思ったんです。
肥満:その通り。価値観が合っていないと仲良くなれないとか、一緒にやっていけないわけではまったくない。