YouTuberがよく投稿する「●千万円の〇〇買いました！」と題した高額商品の購入報告動画。このお馴染みのコンテンツが今、新たな局面を迎えている。

　2014年10月に「好きなことで生きていく」というキャッチコピーを打ち出したYouTubeのCMが大々的に展開されてから8年余り。その間、YouTuberの社会的地位は飛躍的に向上した。今や多くの人が憧れる“稼げる職業”の一つと認知され、それに伴い、最上級ブランドの腕時計やスーパーカー、豪邸など、一般人が手も出ないような高級品の購入を報告する人気YouTuberも増えてきた。

　YouTuber黎明期の頃は数十万円の商品を購入したことでさえ“快挙”扱いだったところから、いつしか数百万円程度の商品を手に入れることが当たり前になり、今や数千万円規模の「買いました」動画で、ようやくニュースバリューがあるといった具合に、年を経るごとにエスカレートしていくYouTuberの高額商品の購入。そのインフレのピークともいえる2本の動画が、2021年夏、世間をにぎわせた。

　1本目は、21年8月10日に公開された、ヒカキンによる「【億超え】ヒカキン、人生最高額の衝動買いをしてしまう…【ROLEX ロレックス】【高級時計】」と題した動画。かねてより腕時計好きとして知られていたヒカキンは、本動画の中で、5280万円の「ロレックス コスモグラフ デイトナ レインボー Ref.116595RBOW」と、5980万円の「ロレックス コスモグラフ デイトナ レインボー フル ペイブ ダイヤモンド Ref.116595RBOW」を2本同時購入。総額1億1260万円を支払うという大盤振る舞いをして見せた。

　2本目は、はじめしゃちょーが21年8月28日に公開した「3億円の豪邸を買いました！」と題した動画。本動画の中ではじめしゃちょーは、自身ゆかりの地である静岡県某所に建つ豪邸を約3億円で購入したと報告。以降この豪邸は、企画の撮影場所として彼のチャンネル内で度々活用されている。

　YouTubeのトップランナーと言える2人が同時期に「億越え」の買い物をしたことにより、価格帯を前面に打ち出した購入報告動画は、一つの臨界点に達した感がある。価格帯のインパクトでこの2つの動画を超えることは難しいと考えられ、そのためか、2022年は、高額商品の購入よりも企画に主軸を置いた動画が人気を集めた印象がある。

　YouTuberが一年のうちにもっとも力を注ぐのは、子どもたちが夏季休暇に入り、動画の再生数を稼ぎやすくなる8月だ。事実、21年はヒカキン、はじめしゃちょーともども8月に1億円超の腕時計と3億円の家を購入する動画をそれぞれ公開しているわけだが、22年の8月を見てみると、このレベルの高額商品の購入は互いにしていない。はじめしゃちょーは「街を貸し切ってかくれんぼ日本代表とかくれんぼしてみたwwwww」「【検証】アイスを全種類混ぜてもう1回凍らせたら何味のアイスになる？」といった企画動画が人気を博しているし、一方のヒカキンも最も高額な予算を掛けた動画は、1億3000万円の資金を投じた鬼ごっこ動画（※のちに非公開）だったが、一方で、1日1000万円でプライベートジェットを貸し切りにする動画や500万円かけて巨大ヒカキン像を作る動画もそれぞれ700万再生超えと高い再生数をマークしていた。ちなみに1億円超のロレックスを購入した動画の再生数は671万回（23年1月3日時点）。その10分の1以下の予算で、700万再生以上の動画を作れると考えたら、ずいぶんとコスパがいい。

　さらに、これまで羽振りの良さを前面に押し出すスタイルで人気を博してきた“金持ちYouTuber”のヒカルも、昨年8月は自身率いるYouTuberユニット「NextStage」メンバーとの企画動画が大半を占め、目立った高額商品の購入はなかった。

　世間はもう、人気YouTuberが高給取りであることを知っている。そのため、「●千万円の〇〇を買った」と言われても、かつてほどのインパクトはない。そして、21年にヒカキンとはじめしゃちょーによって、高額商品購入の到達点ともいえる動画が公開されている。で、あるならば、今後は「何を買ったか」ではなく「何に使ったか」といったように、モノではなく企画の内容により強くフォーカスが当たる時代になるのではないだろうか。2023年、人気YouTuberたちがどんなお金の使い方をしていくのか注視してみよう。