1年で株価が7割下落、メタバース事業も低迷……Meta社の失敗と課題を考える

 GAFAの例を挙げれば、Google・Apple・Amazonにはいずれも「ユーザに多様なコンテンツを提供し、自社のサービスに”居座ってもらう”仕組み」がある。こうした多様な自社サービスのプラットフォーム化とそれによるユーザの囲い込み・サブスクリプションの提供といったビジネスモデルとMetaのビジネスは根本的に異なるものだが、Metaはこうしたプラットフォーマーへの転換・発展に挑戦し続けている。

 Metaという会社の歴史を一言で説明すれば、「企業買収を繰り返し、プラットフォーマーを目指し続ける会社」だと言えるかもしれない。InstagramやOculusといった有名企業の買収はもとより、VRゲームメーカーや半導体制作企業など、ソフトもハードも横断したさまざまな企業を買収しながらMetaは拡大を続けている。

 しかし悲しいかな、これらの施策が大成功しているとは言い難い。かつての事例においても「Facebook Messenger」は思うようにシェアを伸ばせず、買収したInstagramとFacebookの連携機能はInstagramのユーザ数と広告収入を大きく上昇させたものの、ユーザにもたらす恩恵は軽微だった。近年Instagram・Facebookいずれにも導入された新機能「リール」は明らかにTikTokを模倣した機能で、Instagramでは人気を獲得したがそもそもFacebookとの親和性が高いとは思えないサービスだ。

 さまざまな企業を買収し、自社サービスに新たな機能をどんどん追加しているにもかかわらず、これらのサービスの連携はお粗末で、ユーザビリティとホスピタリティをいずれも欠いている。こうした前提を踏まえると、Metaがメタバースに注力する理由が見えてくる。つまり、Metaはメタバース領域におけるプラットフォーマーとしての立場を盤石にしようと躍起になっている。ユーザにサービスをプラットフォームとして活用してもらうためには、ハードウェアとソフトウェアを強く結びつけ、自社製品が自社サービスの入口となるような仕組みが不可欠だ。2014年に傘下に加えたOculusブランドを活用し、社名を変え、メタバースの世界で再び「巨人」として君臨することが同社の野望なのかもしれない。

 昨年Metaが発表したソーシャルVRサービス「Horizon Worlds」は、同社の提供するVRグラス『Meta Quest』でアクセスできるVRサービスで、自身のアバターを作ってバーチャル空間で過ごせるものだ。バーチャルオフィスとしての活用が想定されている「Horizon Workrooms」と、自宅のようにくつろげる空間として提供される「Horizon Home」が盛り込まれており、仕事にもプライベートな生活にもVRグラスを活用できる。ライバルになるのは「VRChat」や「Spatial」のようなサービスだろう。

 「Horizon Workrooms」の多様な機能やその先進性は話題にはなったものの、実際に稼働し始めると今度は悪い意味で有名になってしまった。今年8月、マーク・ザッカーバーグがFacebookに投稿したアバターの画像が低クオリティで話題になったからだ。

 また、「Horizon Workrooms」のアバターには"足がない"こともユーザの非難を受けた。VRに慣れていないユーザは不自然に感じたようで、先月行われた年次のイベント「Meta Connect 2022」では「Horizon Workrooms」のアバターに足を追加することが発表された。また、年内にはアバターのコスチュームストアサービスが始まるということだ。

Meta Avatars Store

 このように、Metaのメタバース事業においては、巨額の投資金額とスケールの大きさで話題になったものの、実際に稼働してみるとそのクオリティに非難が集まるというようなニュースが続いてしまっている。

 個人的にはこうした新興テクノロジーの発展に巨大企業が旗を振ることの意義も感じつつ、ターゲティング広告におけるFacebook時代のプライバシー管理への不信感から、Metaがメタバース領域での活動と広告事業を結びつけるのではないか、という不安もある。同社のメタバース事業が実を結ぶのか、今後も注視したい。

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