『Weekly Virtual News』(2022年11月14日号)
再びメタバースに現れるピューロランドと、アバターの自己表現と販売戦略をめぐる物語
サンリオピューロランドが、またバーチャルに帰ってくる。昨年大いに話題になったメタバース音楽フェス『SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland』が、『SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland』として、来年1月13日から1月22日に開催が決定したのである。
『VRChat』を会場として、リアルアーティスト、バーチャルアーティストのライブや、ミニライブも開催されるパブリックフロア、アンダーグラウンドな雰囲気漂うクラブフロアなど、音楽にあふれたメタバース音楽フェスは、その規模とクオリティから大きな話題となった。国内はもちろん、世界的に見ても重要なメタバース活用事例でもある。
2023年1月に開かれる今回のイベントでは、新たなエリア「VIRTUAL PURO VILLAGE」がオープンし、ピューロランドの名物であるパレードが実施されるとのことだ。さらに、音楽ライブが開かれる2日間の前に先行オープン期間も設けられ、オープンエリアを訪問できるほか、ラジオ体操などのイベント、さらにサンリオキャラクターが出演する有料のミニライブも開催される。”本番”前からバーチャルピューロランドを訪れ、楽しむことができるということだ。
出演アーティストは、今回もリアルアーティストとバーチャルアーティストの両軸が揃い踏みだ。すでに17組が明かされたが、まだ第一弾発表だ。タイムテーブルの都合で、見ることができないアーティストが少なからず出るもどかしさはあるが、それもフェスの醍醐味だ。十分に悩ませてくれる出演陣になることを期待したい。
ピューロランドもオープンするメタバースでは、アバターファッションは欠かせない要素の一つだ。その重要性を示す調査が、世界トップクラスの知名度とユーザー数を誇るメタバース『Roblox』で実施された。
『Roblox』には、俗に「Z世代」と呼ばれる若年層が特に多く存在する。先日、『Roblox』のZ世代ユーザー(米国在住の14歳〜24歳、1,000人)を対象とした、アバタースタイルの調査結果が発表された。(リンク: https://blog.roblox.com/2022/11/insights-from-our-2022-metaverse-fashion-trends-report/)
特に目を引く調査結果は「アバターファッションモールの重要性」について。実に回答者の47%は「アバターファッションによる自己表現」を行い、5人に2人は現実よりも仮想世界上でのファッションを通した自己表現を重視しているとのことだ。調査対象の半数が「毎週アバターの服を変える」とも回答しており、コアユーザーたる『Roblox』のZ世代には、アバターファッションが現実のファッションと同等か、それ以上の重要性を持つことを示唆していると言えるだろう。
アバターファッションの重要性は、プラットフォームに経済性が備わった『Roblox』に限った話ではない。プラットフォームの外でアバター市場が隆盛しつつある『VRChat』では、特に「アバターに対応した衣装の豊富さ」は、そのアバターを手に取る理由に直結し得る。「BOOTH」を中心にアバター対応衣装は数多く展開されてきたが、基本はサンプル画像を参考にした「ウィンドウショッピング」が基本だった。
そこに大きく斬り込んできたのが、「VRC合法チート研究会」だ。『VRChat』アバターに組み込める、便利なアドオン的機能を開発・販売している有志クリエイター・開発者チームだが、その売上を使ってオリジナルアバター「チセ」を先日発売した。制作費150万円という数値にも驚くが、単に発売するだけに終わらず、「チセ」対応衣装を展示する巨大なショッピングモールを作り上げた。それが『VRChat』ワールドの「チセモール」だ。
「チセモール」には数十もの「チセ」対応衣装を間近で見ることができる……だけではない。専用の見本アバターに着替えれば、衣装にふれるだけでその場で試着ができるのである。購入前に実際に着てみて、どんな着心地か文字通りその身で体感できるというわけだ。
気に入った衣装はその場でカートに入れることができ、セルフレジにてカートに入れた分の総額をチェックできるのも特徴だ。『VRChat』のシステム的に決済までは届かないものの、ここまで「服を買う」という営みを再現したケースはおそらく前例がない。『VRChat』向けアバターの販売戦略に、大きな風が吹きそうだ。