アメリカを拠点とする堀口恭司は、日本のファンと“距離感の近い”コミュニケーションをどう成立させているのか?

 総合格闘家として世界トップクラスの実力を持ち、“史上最強の日本人ファイター”と呼ばれる堀口恭司。現在はアメリカ・フロリダ州に拠点をもち、海外団体を中心にファイトを続けているが、その活動をダイレクトに伝えるプラットフォームとして、Bitfanにてオフィシャルファンクラブを開設。そのファイトスタイルにも似た、アグレッシブでフレンドリーなコミュニティを形成しているという。

 前人未到の挑戦を続ける世界のキョウジ・ホリグチに、戦うことへのモチベーションやファンとの距離感などを聞いた。

「距離も時差もあるけど、メンバーと繋がってる」

ーー『RIZIN.38』で1年9カ月ぶりに日本で試合を行い、見事な勝利を飾られました。やはり日本のファンの前での対戦は気持ちの入り方が違いますか?

堀口:世界のどこであろうと、試合でやることは変わらないです。ただ、日本の大会は試合前の作り込みがすごいと改めて感じましたね。試合への持っていき方はもちろん、運営側の選手に対するケア、会場の演出、それにファンの方々の声援も含めて、みんな盛り上げ方が上手いですよ。

ーーモチベーションという意味ではいかがでしたか?

堀口:それも変わらないですね。どの試合でも、しっかりと気持ちを作って勝ちにいく。もちろん個人としての勝利というのは目指す所なんですけど、やっぱりチームに対しての恩返しもあるし、ファンからの気持ちに応えたいというのもある。それが1つになってという感じですよね。

ーーファンとのコミュニケーションツールという意味では「オフィシャルファンクラブ」というのは大きなポジションを占めていると思いますが、このファンクラブ開設というは堀口さんの発案なんですか?

堀口:これは僕がやりたいって言いだした気がします(笑)。以前から、ファンクラブはあったらいいんじゃないかというのは言ってたんですけど、マネージャーからは「正直、そんなにお金にならないから」という話で……。

ーーそこはシビアな判断が(笑)。

堀口:でも自分はやっぱりファンとの交流はした方がいいという気持ちはあって、それでちょっと強引に始めさせてもらいました。そこに、Bitfanのようなシステムが出てきてくれて、非常にありがたいというか。

ーーBitfanは様々なサービスが可能なオールインワン型プラットフォームです。そのコンテンツを含めて、堀口さんが意見を出しているという感じですか?

堀口:Bitfanで何がどこまでできるかというすべては把握してないですけど、自分としては動画の生配信ができるというのが大きかった。いまは月2回というスケジュールでやってますけど、本当はもっと回数を増やしたいくらいですね。

ーー動画配信には手応えを感じてますか。

堀口:自分的には充実してますね。ファンクラブのメンバーの方も、テレビ電話みたいな感覚で楽しんでもらえてると思います。内容的には格闘技の話よりも、私生活のことだったりとか、他愛のない話が多いですけどね。

ーーメンバーにとってみたら、堀口さんの他愛のない話が聞けるというのが貴重だと思いますよ。格闘技に対して非常にストイックなイメージもありますし。

堀口;貴重なのかはわからないですけど、たしかにこの場でしか話さないようなことが多いですね。格闘技に対してはストイックというか、それしかやることがないだけです(笑)。格闘技が趣味でもあり、仕事でもあるんで……。でも、やっぱり趣味がたくさんあった方が、入り口が増えるというか、より多くの方にアピールできるのかなとは思いますよね。人は共通点があると興味が湧くじゃないですか。釣りとか、バイク乗ったりとか趣味はあるんですけど、まだそこまで出せるほどでもないというか……。

ーーぜんぜん出していいと思いますよ! 共通点という意味では、「犬好き」という部分は引きがあるんじゃないですか?

堀口:たしかにロイ(堀口選手の愛犬のピットブル)の存在は大きいですね。ロイはタレント性があるというか、たぶん自分の人気を超えてます(笑)。

ーーロイくんをデザインしたTシャツも作成して、ファンクラブで限定販売も行っています。

堀口:あのTシャツは、もともと自分が着たかっただけだったんですよ。でも、作ってみたらみんなほしいというので、グッズ化したら大人気で。Tシャツに限らず、グッズは自分がほしいとか、こういうのがあったら便利だなとか、そういう発想で作ってますね。それで、みんなで共有する。メンバーの方々の意見を聞いてると、ファンクラブ限定のグッズがほしいとは言われます。やっぱり形に残るものを持っておきたいというのがあるみたいです。

ーー相互に意見を言い合えるような、アットホームな雰囲気なんですね。ファンクラブを飛び越えて、サークル活動のような。

堀口:ほかの人のファンクラブがどんな雰囲気なのかはわからないですけど、せっかくファンクラブに入ってるのにアットホームじゃなかったら、ちょっと嫌だなって自分なら思いますね。自分はメンバーの方々に積極的に話しかけちゃいますし、初対面でもめちゃめちゃイジりますから。

ーーファンクラブに入ると、堀口さんにイジってもらえるという特典付き(笑)。とはいえ、堀口さんが基本的にアメリカを拠点としていて、メンバーの大半は日本で暮らしている。その距離感みたいなものはあったりしませんか?

堀口:そこはBitfanというツールのおかげか、ほとんど感じませんね。距離も、時差もあるけど、メンバーと繋がってるという感覚はあります。それに自分がアメリカにいる時は基本的に日本語を喋らないじゃないですか。なので、自宅のリビングで日本語を喋ってるだけで新鮮というか、あれ、いまどこにいるんだっけ、という気持ちになりますね。

ーー堀口さんが日本に滞在している間は、食事会のような直接会えるミーティングイベントをファンクラブ主催で開催されています。

堀口:これも自分が勝手にやりたいって言い出したんですよ。マネージャーは頭を抱えてましたけど(笑)。実際に時間や場所を調整するのはめちゃくちゃ大変だったと思います。コロナもまだあるので、今回は人数限定になったんですけど、ホントだったらメンバー全員を集めた食事会をやりたいですよね。

実際に行われた『食事会』の様子

ーーリアルに会った時でも、堀口さんはフレンドリーな感じなんですか?

堀口:それは変わらないですね。いつも応援してもらってるのに、実際に会ってツンってしててもしょうがないじゃないですか。自分、そういうの嫌いなんですよ。みんな同じ人間だよっていう考えで。

ーーそれはメンバーのほうが緊張してしまいそうですけどね。本物の堀口さんだ、ヤバい!って。

堀口:向かいあえばみんな同じですよ。それは試合で対戦する相手にも思いますから。だから、メンバーにも色々な人はいますけど、見て、話して、こういう方がいるんだなって感じられるのが嬉しいんですよね。だから自分はどんどん距離を詰めていきますよ。

ーー相手の捉え方も、速い出入りからの踏み込みも、堀口さんの格闘スタイルと一緒ですね。いつの間にか距離を詰めている。

堀口:それがスタイルなのかはわからないですけど(笑)、自分は自分のことを作れないタイプなんですよ。好き嫌いもハッキリしてるし、嫌いな人には明らかに態度に出ちゃう。そこは不器用だなとは思いますけどね。

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