連載:それは、TikTokからはじまる。(第四回)
MAISONdes「ヨワネハキ」がTikTokなどで大ブレイク asmiのルーツと次なる目標は?
TikTokによって人生が一変した表現者たちに話を聞き、彼らのルーツやブレイク前後の秘話、改めて振り返る“バズ”の思い出や、TikTokというプラットフォームに思うことを記録していく連載「それは、TikTokからはじまる。」。
今回は、MAISONdes「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」でブレイクを果たした現在二十歳のシンガーソングライター・asmiが登場。Billboard JAPANの「TikTok HOT SONG Weekly Ranking」で4週連続1位を獲得し、再生回数は1億回を突破。さらに『THE FIRST TAKE』にも出演し、大きな話題を集めた。
高校卒業後に本格的に活動をスタートさせ、リアルな恋愛ストーリーを描いた歌詞、エアリーかつフェミニンな歌声、R&Bやジャズのエッセンスと取り入れたサウンドによって同世代のリスナーを中心に支持を広げているasmiに、これまでのキャリアや音楽のルーツ、「ヨワネハキ」のヒットによる活動の変化などについて語ってもらった。(森朋之)
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Goose houseへの憧れから始まった音楽キャリア
——2020年9月に1stアルバム『bond』をリリースし、今年に入ってからもEP『humming』、シングル『Call me』などを発表。作品ごとに音楽性の幅が広がってますよね。
asmi:そうですね。思うこと、感じることもどんどん変わってくるし、まだ音楽をはじめてそんなに経っていないので、進化もしているし、成長できてるなと自分でも実感しています。
——シンガーソングライターとして活動をはじめたのは、高校を卒業した後だとか。
asmi:はい。高校を卒業して専門学校に入って。最初はピアノ・ボーカルの女の子とユニットをやっていて、その後、本格的に一人で曲を書き始めました。
——もともとはどんな音楽が好きだったんですか?
asmi:歌うことに興味を持ったきっかけは、Goose houseさんなんですよ。動画をめっちゃ観てて、歌が大好きになったし、いろんな曲も知って。よく覚えてないけど、当時はたぶん「(Goose houseに)入りたい」と思ってた気がします(笑)。シンガーソングライターでいちばん好きなのは、片平里菜さん。柔らかい声でやさしく歌う曲も好きだし、芯を突いているというか、言葉にしづらいことを歌として表現しているのもすごいなって。まだまだ私にはできないことなので、憧れてるし、尊敬もしてます。aikoさん、YUIさんもカバーさせてもらってました。バンドもよく聴いていて、back numberさんの曲をキーを上げて歌ったりもしてました。ただ、以前は歌が得意だとは思ってなかったんですよ。高校のときも軽音楽部でボーカルをやってたんですけど、自分の声もそんなに好きじゃなかったので。
——話し声も特徴があるし、歌に向いていると思いますけどね。
asmi:自分ではぜんぜんそう思えなかったんですよね。意識が変わったきっかけは、専門学校主催の大会に出たことなんです。学校の先生が観てくださって、「あなたの声は歌に向いている。素晴らしい」って褒めてくれて。そこからですね、ちゃんと歌ってみようと思い始めたのは。
——なるほど。asmiさんのオリジナル曲はラブソングが多いですよね。
asmi:そうですね。ストリーミングで聴けるいちばん古い曲は「osanpo」(2019年)という曲で。曲を書き始めた最初の頃の曲なんですけど、当時から恋愛の歌ばっかり書いてました。「osanpo」も、その頃の失恋がもとになっているんですよ。
——いちばん身近なテーマが恋愛だった?
asmi:はい。自分が恋愛体質っていうのもあるのかなって(笑)。まだ二十歳なので“人生山あり谷あり”みたいなわけでもないし、伝えられるメッセージもそんなになくて。恋愛の歌は聴いてくれる人にも伝わりやすいと思うんですよ。普段から恋バナも好きだし(笑)。
——〈恋というのはほんと残酷ね〉ではじまる「memory」、“好きな男性に夜中に電話で呼び出される”シチュエーションを描いた「Call me」もそうですが、歌詞もすごくリアルで。“御堂筋”“阪急電車”など地元の風景が描かれているのも印象的です。
asmi:大阪が大好きなので、“御堂筋”や“阪急電車”が歌詞に入ってきちゃうんですよ(笑)。歌詞の内容も赤裸々にしたほうが楽しいし、聴いてくれる人もおもしろいんじゃないかなって。“失恋したからasmiの曲を聴く”とか“阪急電車に乗ってみたい”みたいな感想をもらえるのもすごくうれしいです。
——MEISONdesの「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」についても聞かせてください。今年5月にリリースされた楽曲ですが、この曲を歌うことになったときはどう感じました?
asmi:ずっと自分で作った曲を歌っていて、人に書いてもらった曲を歌ったのは「ヨワネハキ」が初めてだったんです。今まで視野に入ってなかった感じというか、和風な曲調だったり、サビで転調してバーン!と開けるメロディもそれまで歌ったことがなかったんですよ。なので最初は「大丈夫かな? 私に歌えるのか?」って戸惑ってたんですけど、いざリリースしてみたら、めっちゃ反響があって。自分にとっても新しい世界が開いた感覚がありました。
——『THE FIRST TAKE』にも出演し、TikTokでも大反響を呼びました。
asmi:すごくビックリしたし、いまも実感が湧いてないです(笑)。TikTokはそんなに触れてこなかったんですけど、私よりも年下の高校生くらいの子が使っている印象があって。「ヨワネハキ」を使った動画がたくさんアップされるようになってからはめちゃくちゃ観てますね。いろんな人が使ってくれていて、友達や親戚の子も「ヨワネハキ」を使った動画を送ってくれて。そうやって楽しんでくれてるのはすごくうれしいです。
@amatsukiofficial そういやさ そういやさ #ヨワネハキ #和ぬか #asmi #歌ってみた #cover #歌い手 #シンガーソングライター #天月
——「ヨワネハキ」のヒットによってasmiさん自身も幅広いリスナーに認知されました。オリジナル曲がTikTokで使われることも増えてますよね。
asmi:そうなんですよ。「Call me」の歌い出しの〈会いたいっていうから 洗い物もレポートも置いてきたのに〉に合わせてローカルカンピオーネさんが振り付けしてくれたり。ストリーミングでいちばん聴かれているのは「memory」なんですけど、サビ前の「会いたいの電話許されますか」を気に入ってくれた人が多いみたいです。Bメロの〈Call me〉もBメロの〈スリーコール流れる間に ビートはこんなの流れる〉を使った動画もあって、「サビじゃなくて、そこなんや?!」って(笑)。
@localcampione そういやさ、俺らグループはもちろんやけど、個人の名前も知ってる?🥰知ってるよね?🥰夏に向けて薄っぺらい人間じゃなくて、俺らはムキムキ人間目指すよー❤️🔥😆 #そういやさチャレンジ #ローカルカンピオーネ #ヨワネハキ #maisondes #和ぬか #asmi
——意外なフレーズがピックアップされている、と。
asmi:そうなんです。もちろん楽しんでくれてるのはすごく嬉しいし、TikTokをきっかけにしてフルバージョンを聴いてくれる人も増えていて。「memory」は去年リリースした曲なんですけど、今年の春くらいから急に広がったんですよ。ぜんぜん予想してなかったので、ビックリしました。
——それも「ヨワネハキ」がTikTokで広がった影響なのかも。自分の曲が幅広い層のリスナーに広がっている実感があるのはどんなときですか?
asmi:いちばんわかりやすいのはSpotifyの“今月のリスナー”の数字かな。聴いてもらえるのが1番だし、めっちゃありがたいです。
——asmiさん自身は普段、TikTokでどんなコンテンツを楽しんでますか?
asmi:動物とか赤ちゃんの動画がよく流れてきますね。気が付いたら1時間がくらい観てたりするんですけど(笑)、癒しを求めてるのかな?
——(笑)。音楽系はどうですか?
asmi:もちろん観てます! マカロニえんぴつのはっとりさんと番組でご一緒しているんですけど(音楽番組『OTONARI! by TikTok & SPACE SHOWER TV』。asmiははっとりとともにMCを担当)、新曲の「なんでもないよ、」がTikTokでもすごく広がっていて。リリースされたときからずっと聴いてるんですけど、TikTokで流れるたびに「やっぱりいい曲やな」と思いますね。あと、番組にゲストで来てくれた鈴木鈴木さんの「海のリビング」もTikTokで知ったんですよ。〈きんきんに冷えたコーラ/ファミチキ食べて気分豪華/車のナンバーかくしてはいチーズ〉というパートをよく聴いてたんですけど、番組で初めてフルバージョンを聴いたときに「これってサビじゃなくて2番のAメロだったんだ!?」って(笑)。
——『OTONARI! by TikTok & SPACE SHOWER TV』のなかで発見したり、刺激を受けることも多そうですね。
asmi:はい。もともとおしゃべりが好きで、インスタライブとかでもめっちゃ喋っちゃったんですよ(笑)。番組のMCもやってみたいなと思っていたときにいただいたお話だったので、すごくうれしくて。めちゃくちゃ勉強になってるし、いい経験になってます。曲を作ること、歌うことが第一ですけど、MCの仕事もがんばりたいですね。もっと自分自身を知ってもらって、好きになってもらいたいという気持ちもあるので。