永遠に13歳のVTuber・鈴木勝、未知への挑戦を続ける求道者としての魅力
そんなカッコいいとカワイイを共存させつづける彼なのだが、どうしても「カワイイ」の声が大きくなってしまいがちだ。その理由は彼のゲーム配信にある。幼少期にはテレビゲームを禁止されていたため、有名タイトルですらプレイするのは配信活動を開始してからで、ヘビーなゲーマーが比較的多いにじさんじ内において、全くゲーム経験のない彼のナチュラルな反応や捉え方は初心者らしくみえ、なによりゲーム中の反応がウブな少年に見えてくる。
『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』やChilla's Art制作のホラーゲームではひっきりなしに驚き、アイマスシリーズ初体験となった『アイドルマスター シャイニーカラーズ』では三峰結華のSSRコミュ『NOT≒EQUAL』などを通してそのキャラ造形・人物描写に心打たれるなど、ジャンルを問わずにプレイして真っすぐに感情を見せてくれる。
そのなかでも『リングフィットアドベンチャー』を筆頭にしたエクササイズ〜フィットネスゲームとの出会いは、その後の配信などに影響を与えることになる。エクササイズ配信として届けるでなく、ホラーゲームの罰ゲームとしても利用した。配信を休む日にも欠かさず筋トレに励む彼にとって、筋トレや体力作り目的にしたこのゲームは最適で、リスナーと一緒に励むための専用ハッシュタグも設けるなど、彼とそのファンをつなぐゲームとして欠かせない存在になった。
彼の配信で欠かせないものといえば、やはりASMR配信だろう。演劇部で音響効果も担当していたこともあり、「音」へのこだわりは人一倍ある。バイノーラルマイクを使用したASMR配信を率先しており、募集したセリフからつくりあげた脚本をベースにしたオリジナル劇、タイピング音・心音・雨音・花火の音など自ら採音した無声動画、「最高の音を探す」と題し様々な音を鳴らしてみる「夜のおとあそび」シリーズに、王道の睡眠導入系などさまざまなASMR配信を届けてきた。
その姿勢や内容ともに、どこか求道者じみた色合いも強くなってきており、どこまで道を究めていくのかは気になるところだ。
にじさんじ内のライバーらで結成されたボーカルグループRain Dropsの一員としての活動をスタートし、同グループの結成・メジャーデビューをきっかけにして上京、より配信活動・アーティスト活動に重きを置くようになった。演劇などでもみせるナイーヴで少年らしい声色が特徴で、一聴して彼とすぐにわかるほどのオリジナリティを感じさせてくれる。
ここ1年ほどはピアノ弾き語り練習と称した配信も継続中で、楽譜を読み取り、試行錯誤を繰り返しながらもトライする彼の姿を見ることができる。
VTuberの誰しもが深く語ることを避けてきた「自身の過去」について綴ること、手を付けることのなかったゲームプレイを不特定多数の人に配信を通して見てもらうこと、キャラクター性や架空性を活かして様々な表現を試みるなど、彼は未知への挑戦を試みてきた。それらは誰にでも分かりやすいポップな内容だけではなかったかもしれないが、そのチャレンジ精神は衰えることがなく、今後の彼を支えていくはずだ。