中国における5G技術の劇的な進化と、その影にある問題点

 中国で世界最速の通信規格「第5世代移動通信システム(5G)」の開発が急ピッチで進められるなか、新たな問題点が浮上している。

 非政府系環境保全団体「グリーンピース」が取り纏めた最新の報告書によると、中国国内におけるデータセンターや5G基地局による電気消費量は、2020年から2035年までの間に289パーセント増と推定。さらに5G基地局に限定すると、2035年までに総電力量が2970億キロワットに到達、5G基地局からのCO2排出量は488パーセント増が予想されている。ちなみに、2020年において中国のデジタルインフラの動力源となった電気の61パーセントは石炭の消費により賄われた。

 この調子でいけば、中国ではデジタルインフラ由来のCO2排出量は2030年に最高値に達した後、2035年まで増え続ける見込みとのこと。そして、2035年までの中国国内におけるデジタルインフラ由来のCO2排出量は、累計3億1000万トンにものぼる見通しだ。

 同様の報告は昨年3月、スウェーデンの通信会社大手エレコムによってもなされていた。同社は3Gや4Gと同様の方法で5Gを設置した場合、大量のエネルギー消費につながりかねず、コストおよび環境の双方の観点から決して持続可能と言えないため、5G普及への警鐘を鳴らしていた。

 そもそもテクノロジー企業というのはさまざまな再生可能プロジェクトに投資したり、風力や太陽光エネルギーを購入したりといった投資活動を通じて、リアルタイムのCO2排出量に対する触媒の役目を担っている。現時点ではChindataやAtHubのデータセンターが中国国内のデジタルインフラを支えているが、両社ともに100パーセント再生可能なエネルギーのために取り組んできた。ただ、2030年までにCO2排出量を抑制できるかどうかは、業界きってのプレーヤーであるアリババやGDSホールディングスが、100パーセント再生可能なエネルギーやカーボンニュートラルな取り組みのためにどう出るかにかかっているとグリーンピース・東アジア支部で気候・エネルギー運動を展開するYe Ruiqi氏は言う。

 中国・河南省鄭州市で今年5月に開催されたイベントでは、2021年3月末現在、中国国内の5G基地局は81万9000ヶ所を上回り、世界の7割を占めることを明らかにした。さらに、中国は5Gに接続する端末数や、5G標準規格必須特許の件数においても世界をリードしている。

 2019年には、米国のマサチューセッツ大学の研究グループが計算言語学会の年次大会にて、汎用性の高い大容量AIモデルを訓練時に排出されるCO2量は平均的な米国製の車の製造から廃車に至るまでのCO2排出量の5倍にものぼると発表し、物議を醸した。AIの中でも特に自然言語処理系モデルのひとつである「Transformer」は機械に人間の言葉を教え込むために、大量のデータをもって大容量のモデルを訓練させる必要がある。しかしながら、そのプロセスには時間と労力を要するため、膨大な量のエネルギーが消費され得ることが、同研究グループによって指摘されていた。

 マサチューセッツ大学のその発表により、一時はAI業界に衝撃が走ったものの、その後Pythonコードによるシームレスな接続を可能とし、カーボンフットプリントを追跡するオープンソースソフトウェア「CodeCarbon」も登場。

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