宮迫博之×中田敦彦『WinWinWiiin』の仕掛け人・Guild高橋将一が語る、YouTubeでリッチコンテンツを展開する“意味”

視聴回数以上に良かったのは、視聴維持率の高さ

――『WinWinWiiin』は当然、有料モデルではないわけですが、セットも含めて相当、制作費がかかっていますね。現状、スポンサー料でペイできているのでしょうか。

高橋:少なくとも赤字にはなっていません。テレビと違い、セットなどの初期費用さえ払ってしまえば、配信自体は無料でできますし、ワンストップの制作でコストも抑えられますから、長く続けていけばいくだけ、うまくいきやすいモデルにはなっています。あとはきちんとスポンサードしていただけるようにクオリティを高めていくこと。初回で再生数も伸び、質の面でもアピールできたと思いますので、いまの形で進めていけるのであれば、きちんと黒字が出ていくと思います。

 また、視聴回数以上によかったと思うのは、視聴維持率が非常に高かったことです。話題になっているから最初だけ見てみる、というご祝儀的な再生もあったと思いますが、そういう人たちの多くが途中で離脱せず、最後まで見てくれたというのは、コンテンツとしてちゃんと面白かったからだろうと。視聴者の方の「応援する」というストーリーも含めて、番組をサポートしてくれる企業への感謝も高まりますし、スポンサー満足度も高くなっています。新規のスポンサーに関しては、公式ホームページを立ち上げて、募集フォームを作る予定です。

――初回の収録と配信を終えて、中田さんと宮迫さんはどんな反応でしたか?

高橋:中田さんは「バズって本当によかった」と、ホッとしていた様子でした。宮迫さんも、普段の動画と、人前での撮影ではやはり趣がまったく違うので、とてもよろこんでいましたね。手越くんもよろこんでくれていました。

――久しぶりにテレビのテンションの宮迫さんを見ました。

高橋:宮迫さんはやはり天才なんだと再認識しました。面白くなるポイントはすべて宮迫さんが作っていて、難しい話だけでなく、きちんとバラエティにしてくれるというか。タレントとしての能力は別格で、宮迫さんの圧倒的なパフォーマンスがあるからこそ、『WinWinWiiin』は成り立っています。一方で、宮迫さんは進行自体が得意なわけではなく、進行の過程を面白くしていく人なので、中田さんの構成力と完璧な進行、そしてコンテンツ自体を生み出す力もまた天才的です。実際に番組を作ってみて、ここまで相性がいいのか、と驚きました。

――今後ゲストをキャスティングする上で、芸能事務所がこの番組に価値を感じるかどうか、ということも大きいと思いますが、反響は届いていますか。

高橋:関心を持ってくださっているプロダクションさんはあります。テレビでの収益をベースにしているプロダクションからすると、“出先”として『WinWinWiiin』に価値を感じるかどうかは疑問ですが、テレビや動画を宣伝媒体として活用しているプロダクションもあって、後者からすると、単純に「宣伝媒体が増えた」ということですから。また、タレントさん自身がYouTubeを始める、という選択肢が一般的になってきているなかでも、やはり向き不向きがあり、テレビというフォーマットの方が実力が出る、ということは絶対にあります。そのなかで、『WinWinWiiin』のような番組に出演するなら、無理にYouTuberっぽいことをしなくていい、というメリットもある。テレビとYouTubeのどちらが優れている、という話ではなく、テレビはテレビ、YouTubeはYouTubeで、同じ宣伝媒体の一つとして活用される時代は、わりとすぐに来るのではないかと思っています。

期待がなければ、チャンネル登録しない

――高橋さんはいわゆる「サムネで釣る」ことに否定的な発言をしています。多くの視聴回数を得る、という意味ではインスタントで効果的な方法だと思いますが、それはしないと。

高橋:これは難しいところで、そもそもタイトルとサムネイルは、ファン向けに作るのか、新規視聴者向けに作るのかで、まったく変わってきます。例えば、宮迫さんがコントの動画を上げると、ファンはとてもよろこびますが、一方で「轟さん」というキャラクターを知らない人からすると、そのビジュアルがサムネイルになっていたところでクリックはしない。また、YouTubeのコンテンツは“ながら見”されることが多いので、視覚的な部分ばかり考えていると、時間があるときでなければ見づらい動画になってしまう。業界全体として、お笑い芸人さんが再生数を取りづらいというイメージがありますが、それは視覚で楽しむコンテンツをベースに考えているチャンネルが多いからだと思うんです。とはいえ、完全にラジオ化しても飽きられてしまう。そのなかで、サムネで釣って100万再生、200万再生をとるのはそれほど難しくないのですが、長く続けていくつもりなら、それもすぐに飽きられてしまいます。

――ドーピングを続けていくことになる。

高橋:ですから、得意なものだけに頼りすぎず、新たな可能性を常に広げて、検証を繰り返していき、ファンに求められるもの、新規の人が見てくれるものというバランスも細かく分析しながら、コンテンツを出していく必要がある。これはかなり大変なことです。もっと言うと、先ほども話に出たように、YouTubeはストーリーが重要で、距離が近い分、「応援したくなる」ことが人気につながります。ただ面白いだけなら、そういうコンテンツは世の中にたくさんありますから、「応援したくなる=夢を見せてくれる」と思わせることができないといけない。ですから、頑張って100万人登録までいくクリエイターは少なくないのですが、そこでいったん夢が達成されてしまって、そこから次の夢を見せたり、「さすがだな」と思わせるコンテンツを作ることが求められます。これもまた難しい。


――YouTubeで夢を達成したクリエイターは、次はどうすればいいのか。

高橋:例えばヒカルさんだったら、芸能人のコンサルティングで手腕を発揮したり、YouTuberとしてアパレルを成功させたパイオニアになっていたり、YouTubeを使って、YouTuberという肩書を超える何かができなければ、その先は厳しいかもしれません。海外では、YouTubeで発信力を得た後に、映画監督になったり、政治家になったり、その影響力を使って何かを成し遂げる、ということ自体をコンテンツにしている人たちがいます。「YouTuber」から「YouTubeを使って何かを成し得た人」になっていくクリエイターは、応援しやすいですね。

――なるほど、YouTuberとしての成功をゴールに据えていると、限界が見えてしまうと。

高橋:そうですね。まだそういうモデルで成功している方もいると思いますが、大人の視聴者からすると、視聴を継続していくのが難しい面もあるのではと。宮迫さんも、100万人登録を達成して、少し停滞した時期がありました。そのなかで次の目標として、今回の『WinWinWiiin』のようなものがスパイスになり、視聴者の期待感を再び上げることができたんです。「今後、どういう展開になるんだろう」という期待がなければ、チャンネル登録しませんから。

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