ゲーム業界で“セクハラ告発”相次ぐ 抜本的な変革を望む声に対応できるか?

 先週より、ゲーム業界に携わる女性たちからの告発が相次いでいる。彼女たちは、自身が受けた性差別やセクシャルハラスメントの経験をTwitterやYouTubeなどのSNSに投稿。ゲーム配信者たちの間に広く拡散され、『The New York Times』の報道を皮切りに、業界内外に大きな波紋を呼んでいる。この一連の運動は、男性優位のゲーム業界に変革をもたらすのだろうか。

 6月20日、配信者のHollowtide氏が、Twitterに「ゲーム『Destiny 2』の配信者に問題児がいる」と暴露したことをきっかけに、女性配信者のJewelsVerne氏、SheSnaps氏、SchviftyFive氏の3人が、人気配信者Lono氏(SayNoToRage)からのセクハラ行為について告白した。彼女たちはLono氏から過剰なスキンシップを受け、身体の関係を求められたという。これ受け、Lono氏は自身の動画内で「自分のしたことは、とうてい許されることではない。彼女たちに不快な思いをさせてしまい申し訳ない」と謝罪した。

 この告発を受け、他の配信者たちも自身の受けた被害を続々と投稿し始めた。配信者でありコンテンツクリエイターのJessica Richey氏は、これらの投稿をTwitterにまとめている。そんなRichey氏の元には、被害にあった配信者からのダイレクトメッセージが50通以上届いたという。彼女がブログプラットフォーム『Medium』にこの告発を掲載すると、配信者コミュニティの中で広く共有されていった。Richey氏は「名前が上がった人たちを批判したいわけではない。被害にあった人々が孤独にならないよう、声を上げる場を作りたかった」と話している。

 人気ゲーム『オーバーウォッチ』の配信者であるMolly Fender Ayala氏は、数々の人気配信者を擁するタレント事務所「Online Performers Group」のCEO・Omeed Dariani氏を告発した。Ayala氏は、2014年にDariani氏から身体の関係をもちかけられたという。この告発を受け、Dariani氏はTwitterで「そんなことをした記憶はないが、私は彼女のことを信じている。おそらく、そういったことがあったのだと思う」と述べ、その夜に同社CEOを辞任した。

 一連の騒動にいち早く反応した企業もある。ゲーム周辺機器メーカーの『Astro Gaming』は、告発に上がったLono氏と、他2名の配信者とのスポンサー契約を終了することを発表した。また、人気配信者たちがOnline Performers Groupとの契約を解除したり、ゲーム実況プラットフォーム『Facebook Gaming』が、疑惑のある配信者1人を調査が終わるまで利用停止するなど、業界に大きな影響を与えているようだ。

 ゲーム実況プラットフォームTwitchは、Twitterで「セクシャルハラスメントや不正行為への抗議を真摯に受け止め、配信者たちのアカウントを調査し、問題のあるものには法的措置をとる」と声明を発表した。その翌日には、Twitchの調査を徹底させるため、「Twitchブラックアウト」と称し、水曜日にTwitchの利用を控えるボイコットも広がりを見せている。それを受けて、TwitchのCEO・Emmett Shear氏は、「すべての問題を調査しており、法的機関と協力していく予定である」と述べた社内メールをTwitterで公開。さらに、「ゲーム業界においても、性差別や人種差別、また特定の人たちにとって不利益となる行為に対処していかなければならない。現状を変える必要がある」と続けた。

 また、『The New York Times』では、性暴力や家庭内暴力の防止に関連したゲームの研究を行っているKenzie Gordon氏のコメントを紹介。Gordon氏によると、ゲーム業界は特にミソジニーやセクハラの文化を助長しており、その原因はストレートの白人男性が独占的な価値をもつものとして、ゲーマーのアイデンティティを作り出したから、だそう。「女性や有色人種、LGBTQの人々が業界に参入しようとすると、“オタク”な男性たちが性的差別や嫌がらせによって彼らを排除しようとする」と同氏は述べている。

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