「5Gが新型コロナを広めている」との陰謀説で、基地局アンテナが放火される

 まさかこんなことが起こるなんて……。

 いま、各地で新型コロナウィルスに関する噂や陰謀説がささやかれています。しかし、こんなにも的外れで突拍子もないものはなかったかもしれません。なんと、イギリスでは新型コロナウィルスのパンデミックは5Gの基地局アンテナが原因だという陰謀説が広まり、相次いで放火されたというのです。

放火された基地局は5つ

 『The Verge』がVodafone UKの広報担当者に確認したところ、5Gの基地局アンテナが4つ、5Gのサービスを提供していないアンテナタワーが1つ放火されたそうです。この件について、通信業者のEEの広報担当者は次のように話しています。

「バーミンガムにある我が社のビルのひとつで発生した火災の原因を調査しています。もし放火なら(現時点ではその可能性が高いのですが)、ウェスト・ミッドランズ警察の犯人特定に協力します。このサイトは何千人ものバーミンガム地区の住人に2G、3G、4G接続を提供してきました。一刻も早い全面復旧に努めますが、火災の被害は甚大です」

 英国の国民保健サービスの救急サービスは、モバイルネットワークに依存しているため、バーミンガムで発生した5G基地局アンテナ放火は、地域のサービスに大きな被害をもたらしました。

5G陰謀説はSNS上で急速に広まった

 『The Verge』によると、5Gが新型コロナウィルス感染の元凶であるという噂は主にFacebookとNextdoorというSNSを中心に急速に広がりを見せたそうです。噂を広めているのは複数のグループで、中国の武漢で5Gを導入したために新型コロナウィルスが発生し、他の都市でも広がっているのも5Gが原因だと主張しているようです。

 5Gと新型コロナウィルスを関連づけるなど、まるで突拍子もない話に聞こえますし、本来ならば一笑に付して終わるところでしょう。しかし、兼ねてから5Gが及ぼす健康被害が懸念されていたため、武漢で新型コロナウィルス感染が広まったタイミングで、鵜呑みにしてしまう人が増えたようなのです。

 また、2月にローカルのFMラジオにゲスト出演した公認看護婦の「5Gが人々の肺から酸素を奪う」という発言も、デマの火付け役になったもよう。

 

「武漢では日常生活を送っていた人たちが突如として倒れて、肺炎で咳き込みました。こんなことは見たことがありません。しかし、5Gなら発生することが可能です。5Gは肺から酸素を奪うからです。急に酸素が奪われてしまったら数分、いや数秒で体調が急変します。武漢は2019年の秋から5Gのテストエリアとして展開されていましたが、大手のメディアで報じられていません」

 イギリス情報通信庁(Ofcom)は、この時の看護師の動画がFacebookで拡散されていることから、デマ発生の原因のひとつだと考えているようです。

はたして5Gは健康被害を招くのか

 3月30日から日本でも5Gがロールアウトされ始めましたが、実際のところ、健康被害を招くのでしょうか。

 『The Verge』によると、「ネット上でささやかれているような新型コロナウィルスとの関連や、急激な体調の悪化を引き起こす科学的根拠は見つかっていない」そうです。また、ファクトチェックを担うイギリスの独立チャリティグループ「Full Fact」が調べたところ、5Gは3Gと4Gよりも電磁放射レベルが高いにせよ、国際ガイドラインよりもはるかに低いことがわかっています。

 また、英国のiNewsは、ふたつの関連性を科学的に真っ向から否定。「5Gが免疫システムにインパクトを与えることなどない」として、5Gの電磁放射が人体に影響を与えない証拠や専門家のガイダンスを紹介しています。

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