インタビュー連載『ゲーム実況のふるさと』

ゲーム実況者・倭寇(わこう)×えふやん対談 「企画は思い浮かんだ瞬間がピーク」

「ドワンゴの人たちは、利益より“面白さ”が優先」(えふやん)

ーー旅動画もそうですが、お二人とも常に新しいことに挑戦しています。倭寇さんで言えば、例えば「賽ポケ」(※あらゆることをサイコロで決める『ポケモン』シリーズの実況動画)のような大ヒット企画があるのに、それに頼って動画を伸ばそうという考えがないというか。

倭寇(わこう):そうですね。動画投稿を始めた当時、「新人がもう伸びない」みたいなコメントが一番嫌いで、何回でも伸びてやるよ!という気持ちでいろんな企画を考えてきたんです。賽ポケが流行ったときに「どうせこの企画だけだろ」みたいなコメントがついたこともあって、「いや、こっちでもできますし」って、「ローション塗ってダンスダンスレボリューション」という動画を出してみたり(笑)。同じ企画を何度も重ねていくことでよくなっていく部分もあると思いますし、僕もタイミングを見て続編を作ったりするんですけど、「こっちの方面でもまだ伸びる余地があったぞ!」というのを発見する方が好きなんですよね。

えふやん:僕ももともと「いずれやりたい」ということがたくさんあって、一つのことを続けるというより、そのリストを潰していく感覚で企画を考えていますね。

倭寇(わこう):これって、飽き性なんですかね。究極のところ、企画が頭のなかに浮かんだ時点がピークで、そこからモチベーションは低下していく一方なんですよ。

えふやん:めちゃくちゃわかります……!

倭寇(わこう):動画投稿は確認作業というか、話題になったころには「1ヶ月前に自分の脳内でめっちゃ笑ったしな」って、もう冷めてしまっていて。最初なんか、ニコニコ動画の全カテゴリで1位を取ったろ、なんて思ったこともありましたから。結局、「歌ってみた」とか「踊ってみた」は恥ずかしいし無理だと思ってやめましたけど(笑)。

えふやん:新しいアカウントを作って、自分だと知られていない状態で動画を投稿したい、みたいな気持ちもあったり。

倭寇(わこう):そうなんですよ。黙って“ゆっくり実況”を投稿して、「倭寇は嫌いだけど、この実況は好き」みたいなコメントがついた瞬間に、「俺でした~!」みたいな(笑)。名前が知られるようになってくると、動画を上げたこと自体によろこんでくれる人たちもいますし、そのことでかえってシンプルに企画自体が面白いかどうかというところが見えづらくなってくるので、一回ゼロにしてみたい、と思うことはありますね。

えふやん:僕も、特別すごいアイデアが思いついたらやるかもしれません。


ーー見逃さないように注目しておきます。あらためて、お二人にとってゲーム実況動画の面白さはどこにあるでしょうか。

えふやん:やっぱり有野課長の『ゲームセンターCX』がゲーム実況の走りだと思うんですけど、ネットの動画には“素人がやっているから楽しく観られる”という部分があると思います。それは、素人だから甘く見てもらえる、ということもありますし、プロじゃないからこそ、しがらみなしに本当に自分が好きなゲームを選び、好きなように遊ぶことができる、という面もあって。特に最初の頃はゲーム実況がお金になることなんてありませんでしたし、単純に自分が好きなゲームを広めたい、人を楽しませたい、という思いから生まれた、本当の意味でクリエイティブな動画も多くて。僕はそこに面白さを感じたんだと思いますし、そういう気持ちは忘れたくないですね。

倭寇(わこう):ゲーム実況って、ニコニコ動画とYouTubeでは全然違うと思うんです。ニコ動のゲーム実況は、えふやんさんが言われたように、そもそもお金云々ではなく、ただ人を楽しませたい、楽しいことがしたい、というところから始まっていて、今もニコ動に軸足を置いて活動している実況者は、その気持ちが勝っている人たちだと思うんですよね。言ってしまえば、知名度やお金を求めるなら、今だったらYouTubeでやるのが早いですから。

えふやん:それで言うと、他の動画サイト、ストリームサイトの会社の方と打ち合わせをすると、「いかに再生数やチャンネル登録者数を増加させて、利益を上げることをサポートできるか」ということを説明されることが多いんですけど、ドワンゴの人たちって、そういうことをあまり言わないんですよ。それよりも先に「どうやったら面白くなるか」なんです。そういう文化が運営さん自体に根付いているので、観ている人にはわからないかもしれないですけど、動画を作る側としてはこれほど頼もしいことはないなって。

ーー考えてみると、お二人とも常に新しいことを企画しながら、活動の拠点は相変わらずニコニコ動画ですね。

倭寇(わこう):コメントを見ていても、ニコ動にいる視聴者さんはセンスがいいな、って勝手に思ってますしね。ニコ動がこれからどうなるかわかりませんけど、ここで育ったぶん、行く末を見届けたいという欲求が強いので、今後も変わらず拠点としてお世話になっていこうと。

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