『ゴジラ』や『西尾維新』ともコラボ 東宝×ALPHABOATの“原石”発掘企画は新たな展開へ

 東宝株式会社とALPHABOAT合同会社が共同運営する、YouTube及びSNSを活用したオーディションプロジェクト『GEMSTONE』。同プロジェクトは様々な才能を持った原石(GEMSTONE)を発掘し、東宝とALPHABOATが育成環境と活躍の場を与えるというもので、第一弾では東宝の看板作品である『ゴジラ』を題材にクリエイターからの作品を受け付け、実写動画、アニメーション動画、イラストなどの11作品が最終審査を通過した。

 現在は「Tokyo Otaku Mode Inc.」と提携し、「With Japan!」をテーマに“3分以内の説明動画”を募集する第二弾、小説家・西尾維新による、記念すべき100冊目の小説『ヴェールドマン仮説』のプロモーション映像を募集する第三弾、丸井グループとタッグを組み、新宿をテーマにした5分間のショートアニメーションを募集する第四弾が応募受付中だ。

 今回は、第一弾の反響や第二弾以降の動き、さらに加速する『GEMSTONE』プロジェクトの現状などについて、東宝株式会社コンテンツ制作チームプロデューサーの東幸司氏、ALPHABOAT合同会社の金聡一氏のコメントを交えながら紹介したい。

 東宝としても『ゴジラ』を題材にした第一弾オーディションは「期待が半分、不安が半分」(東氏)の新たな挑戦だったという。しかし、フタを開けてみれば予想をはるかに超える数の応募があり、最終審査を通過した11作品以外にも、可能性を感じたクリエイターは少なくなかった。また、『GEMSTONE』というプロジェクト自体「原石を発掘するだけではなく、しっかりと一緒になって磨いていくことも重要視している」(東氏)ため、その後、最終審査を通過したクリエイターとそれぞれのペースで作品づくりを行なっているようだ。

 例えば、人形劇「ゴジばん」を制作し、受賞作品動画が60万回再生(8月時点)を突破したアトリエこがねむしは、東宝の若手プロデューサーと共同で新作コンテンツを制作し、YouTubeゴジラチャンネルにて作品公開を開始した。今後も受賞クリエイターとはイラスト・動画のジャンルを問わず、続々と新作が発表されていく予定だという。

 これらの経験を活かしつつ、「募集作品を映像に絞り、海外クリエイターにも門戸を広げたかった」(金氏)という思いで展開されたのが、「Tokyo Otaku Mode Inc.」と提携し、「With Japan!」というテーマで「3分以内のオリジナルキャラクター説明動画」を募った第二弾企画だ。

 応募者自身によるプレゼン動画、短編アニメーションなどオリジナルキャラクターの魅力が伝わるものであれば動画の内容は問わず、最終審査通過者はニューヨークで行われるアニメコンベンション『Anime NYC』オフィシャルセレモニーへの参加が決定。審査員には日本の“KAWAII”カルチャーの中心人物として、世界に“KAWAII”カルチャーを発信し続けている増田セバスチャンが、「クリエイターとしての一面もありつつ、若い感性で新たな才能を見出してほしい」という理由から“ぺろりん先生”こと鹿目凛(でんぱ組.inc)が参加を発表した。

 最終審査通過者には、東宝株式会社、ALPHABOAT合同会社、Tokyo Otaku Mode Inc.3社との新規企画開発を検討するとのことで、「YouTubeやTwitterなどSNSでの配信、映像作品の制作、グッズ化などを検討し、3社の強みを活かして世界に向けて展開をしていく可能性もあります」(東氏)と、世界的なIPを生み出す原石を探していくようだ。

 第三弾企画である『西尾維新・100冊目の小説「ヴェールドマン仮説」プロモーション映像』は、講談社からの提案で実施が決定。これまでProduction I.G、シャフト、WHITE FOXと名だたるスタジオが西尾のアニメ作品を手がけてきたが、「アニメや実写を問わず、これまでそれらのスタジオが表現してこなかったような異色な作品にも出会いたい」(東氏)と、様々な応募作品を募るという。

西尾維新『ヴェールドマン仮説』プロモーション映像募集!【GEMSTONE】第3回企画

 第四弾企画『新宿アニメクリエイターオーディション』は、丸井グループ協賛のもと実施された、「新宿」をテーマに5分間のアニメーションを作るオーディション企画。世界で一番乗降客数が多いJR新宿駅があったかと思えば、西口公園・新宿御苑のような緑があり、高層ビルが立ち並ぶビジネス街も、歌舞伎町のようなネオン街もあるため、「題材に何を持ってくるかという時点でセンスを図れるテーマ」(東氏)として、応募作品を楽しみにしているという。

「新宿アニメクリエイターオーディション」新宿をテーマとした短編アニメーションを募集!【GEMSTONE】第4回企画

 これ以外にも『GEMSTONE』企画はさらなる展開をみせており、東宝内でも7月から若手を中心とした14人体制のチームが発足。「今までの東宝にない企画やコンテンツを作っていってもらうつもり」(東氏)と、社内でも新たな才能の台頭を待ち望んでいるようだ。受賞クリエイター同士のつながりや、共作による化学反応も起こせるような施策も行なっていくようで、「実際に他の受賞作品をみて『この方とお仕事したい』と言われたこともあり、希望する方向けに受賞者懇親会を開催予定」(金氏)と原石同士を引き合わせることにも尽力している。

 全体的なバランスも考えつつ、基本的には“新たなことに挑戦する”というスタンスを取っているという『GEMSTONE』。このあとも「流れがどうというより、企画が面白いかどうかという視点で展開していきたい」(東氏)、「協賛いただける企業さんも続々と手を挙げてくださっているので、ジャンルを問わず、面白い企画を一緒に作れるところと次々に組んでいければ」(金氏)と、志を共にするパートナーたちと才能の原石を発掘し、磨いていくことに注力していくという彼ら。すでに数字が付いてきているクリエイターも登場するなど、その原石たちが世に出て光り輝く瞬間は、そう遠くないのかもしれない。

(文=中村拓海)

■『GEMSTONE クリエイターズオーディション』実施概要
第2回テーマ:「With Japan!」
内容:「日本」をテーマに、日本のみならず世界中から愛されるオリジナルキャラクターを全世界から募集。
応募期間:2019年7月1日(月) ~ 2019年9月2日(月)18時(日本時間)
入賞特典:賞金総額100万円、東宝株式会社・ALPHABOAT合同会社・Tokyo Otaku Mode Inc.3社での新規企画開発検討
審査員(敬称略):増田セバスチャン、鹿目凛(ぺろりん先生)、大田 圭二(東宝 取締役)、岡村 和佳菜(東宝 プロデューサー)
公式サイト

第3回テーマ:西尾維新・100冊目小説『ヴェールドマン仮説』のプロモーション映像(アニメ・実写・CGなど)を募集。
応募期間:2019年7月29日(月) ~ 2019年9月29日(日)
入賞特典:賞金10万円、入賞作品の講談社による宣伝プロモーション利用、東宝プロデューサーとの新規企画開発ほか
審査員:講談社 西尾維新担当編集者、東宝プロデューサー
公式サイト

第4回テーマ:「新宿 アニメクリエイターオーディション」
内容:「新宿」という街から連想できるあらゆるものを題材にし、「新宿」に生きる人、訪れる人々の出会いや触れ合い、この街を構成する様々な建造物にカルチャー、様々な個性や隠れた魅力にあふれている「新宿」をテーマとした短編アニメーションを募集。
応募期間:2019年8月21日(水)~2019年10月31日(木)23:59まで
入賞特典:賞金総額200万円、新宿マルイ3館でのサイネージなど様々な場所での作品掲出を予定、東宝プロデューサーとの新規企画開発ほか
公式サイト

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