PSで攻殻のゲームが出てたって知ってました? 『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』

 企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても 国家や民族が消えてなくなる程 情報化されていない近未来ーー。

 「えっ?それって近未来じゃなくて今じゃないの?」と言いたくなりますが、そんな気持ちをぐっとおさえて、今回はPSクラシックに収録されなかった名作ソフト『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』を紹介します。


※この記事は欄外の補足説明文が多い為、本文と註釈を同時進行でお読みになりますと、混乱を招きやすく、また記事の流れが寸断されて楽しさを損ないますので、作品と註釈は別々にお楽しみ頂くのがよろしいかと存じます。

士郎正宗の原作漫画へのリスペクトがアツい

攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL

 まずゲームの内容を紹介する前に見ていただきたいのは、パッケージ。

 おわかりでしょうか。この素子(※1)のポーズ、原作漫画『攻殻機動隊』の表紙とほぼ同じなんです(※2)。

 このパッケージイラストを見てもわかるように、PS版『攻殻』の元ネタは押井守の劇場アニメ版(※3)ではなく、士郎正宗の原作漫画。だから素子も押井版のように意味深なセリフを喋り続けたりしません。

攻殻機動隊 (1) KCデラックス

 少なくとも少なくとも私が知る限りでは、シロマサ絵の『攻殻』アニメが見られるのは本作ぐらいでしょう。CGと見まごうほど動きまくるフチコマのアニメーションは押井版に対抗しようという気概が大いに感じられます(※4)。

※1 草薙素子。公安9課またの名を攻殻機動隊をまとめるスゴい人。愛称は“少佐”か“メスゴリラ”。PS版では声優が田中敦子さんではなく、鶴ひろみさん。

※2 ほぼ同じだが、単行本が長方形なのに対してPSのソフトケースが正方形に近い形なので、その分より丸まっている。ちなみにこのジャケット絵の素子の服、よく見ると恐ろしくキワドいハイレグであることがわかる。

※3『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が劇場版のタイトル。ゲーム版は『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』。ややこしいってレベルじゃない。タイトルだけでなく映画の内容もややこしい。

※4 ちなみにオープニング曲は電気グルーヴの石野卓球が作曲している。ヒットした映画だけあってか、このゲームやたらと音楽まで手が込んでます。

道路を、壁を、天井を、縦横無尽に駆け巡れ

 さて、ようやくゲーム自体についてお話します。一言でいえば『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』は、フチコマ(※5)シミュレータです。「オレはフチコマに乗ってるんだ」という気分を存分に味わえるゲーム。

 フチコマはLボタンとRボタンで左右に高速スライド移動でき、このスライド移動こそが、本作のアクションの核となります。

 十字キーを使う通常の移動はかなり遅いので、被弾せずに攻撃するにはスライド移動をうまく使いましょう。スライド移動で敵の周囲をぐるぐると旋回し続ける“アクシス・ターン”は、クリアに欠かせないテクニック。スライド移動を基本とした独特の操作感は、フチコマに乗っている実感を与えてくれます。

武器はバルカン・誘導ミサイル・グレネードの3種類。

 ちなみにフチコマは原作通り、壁だろうが天井だろうが貼りついて移動可能です(※6)。

ビルの側面にからヘリを攻撃。うまくやれば死角から一方的に攻撃できます。

 壁や天井も自在に動き回れるあたりは、今年流行った『Marvel’s Spider-Man』(※7)と近いものがあるかもしれません。もしフチコマがスパイダーマンのようにワイヤー移動までできていたら、きっと『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』もPSクラシックに収録されてたんではないでしょうか……。

※5 タチコマではなくフチコマなのでご注意。タチコマはクモっぽいけど、こっちは赤くて横移動が得意なので……カニ?

※6 でもさすがに天井には貼りついてなかったような。

※7 ニューヨークの摩天楼をウェブを使って高速で飛び回れる。万が一ビルにぶつかっても壁走りに移行してくれる優しさが、アクション下手には嬉しい。

フチコマシミュレータとしての完成度

 “壁でも天井でも貼りつける”と聞いて嫌な予感がしたアナタ、正解です。このゲーム、ステージによっては視点が異様に動いて、酔います。私は3D酔いしないタイプと自負していましたが、酔いました。天井の低い地下道でスライド移動すると床→壁→天井→壁→床→とものすごいスピードでフチコマが外壁沿いにスライド移動して、ドラム式洗濯機の中に放り込まれた気分です。

 ただ3D酔いは欠点のようにも思えますが、むしろ私は“実際フチコマに乗って動き回ったらこれぐらい酔って当たり前だよな”と感心します。

 どうも説明書を読むと、このゲームの主人公は公安9課に配属されたての新人で、“フチコマと感覚を共有するデバイスを電脳に積んでいるからホニャララ~”みたいな設定があるのですが、当然ゲームを遊んでいるボクらは電脳化もされていなければ、感覚統合デバイスも積んでいません。そりゃ酔うっつーの。

ゲームの画が地味なのでOPアニメから

 というわけで、このゲームは、かなりリアリティのあるフチコマ搭乗シミュレータに仕上がっています。三半規管に厳しいゲームなので、宇宙飛行士とかにやらせたいもんです(※8)。

※8ちなみにラスボス戦は “高層ビルの屋上から自由落下しながら戦う”という胸アツ展開。視界がグリングリン動くので余計なモノも胸にこみ上げてきます。

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