Facebookは次に何を目指す? 開発者会議で語られたAI・インフラへの投資

 世界最大のSNS企業であるFacebookが5月1日と2日、アメリカ・カリフォルニア州のサン・ノゼで年次開発者会議「F8」を開催した。同会議では、同社の基礎研究とインフラ投資に関する発表もあった。本記事では、同社のAIとインターネット環境への投資について解説する。

SNSアプリの心臓部であるAI

 FacebookアプリやInstagramでは、毎日おびただしい量の画像がシェアされている。こうした画像を整理し、全世界にいるユーザごとにおすすめの画像を選び出すことは、とてもヒトができる作業ではない。SNSアプリがユーザをつなげている背後には、AIが駆動しており、こうした事情から、FacebookはAI研究に多額の投資を続けている。

 F8では、こうしたAIへの投資の成果が報告された。その報告によると、35億枚もの一般入手可能な画像を学習データとして活用して、AIが画像にハッシュタグを付与する訓練に成功。これにより、AIが85.4%の精度で望ましいハッシュタグをつけることができるようになったという。こうしたAI技術は、ポリシーに反するコンテンツの検出にも活用される。

 また、オープンソースのAIフレームワークの次期バージョンである「PyTorch 1.0」も発表された。同フレームワークは、Facebookで使用されている48の言語に関して1日あたり約60億件のテキスト翻訳にすでに活用されている。同フレームワークは数ヶ月以内にベータ版が一般公開される予定で、AI研究者・開発者が自由に利用可能となる。

より世界がつながるために

 もはやインターネットが生活に不可欠なツールのように思われる現在においても、なお世界で38億人がインターネットを利用できていないという現実がある。また、Facebookが考えているように未来のソーシャル体験のメインストリームがVRになった場合、今まで以上に大容量の通信環境が不可欠となる。例えば、一般にインターネット動画のフレームレート(1秒間に描画する画面の枚数)は60fps(1秒間に60枚描画)で十分と言われているのだが、VRコンテンツの場合は90fpsが必要とされている。それゆえ、インターネット環境は今後さらに整備されなければならないのだ。

 インターネット環境への投資の一環として、同社はウガンダに新しい回線を導入することを計画していることを発表した。この新しい回線が完成したあかつきには、300万人以上にインターネット環境を提供できるようになる、とのこと。また、F8の開催地であるサンノゼ市では、同社による高度なWi-Fiネットワークのテストが始まる。同様のテストは、ハンガリーとマレーシアでも実施される予定だ。

 以上のように、Facebookは必ずしも利益に直結するわけではない分野や活動にも投資している。こうした投資は、名実ともに世界的企業となった同社の責務と言えるかもしれない。

参考記事:開発者カンファレンス「F8」2018:2日目発表内容まとめ

■吉本幸記 
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi

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