松岡茉優が『ダウンタイム』を上回る表現力を披露 『男ともだち』に成田凌と刻んだ名演
松岡の演技がすごいのは、感情を表に出す瞬間だけではない。むしろ、言葉にしていない感情を、視聴者に想起させることができる。その力が存分に発揮されているのが、『男ともだち』だ。松岡が演じる神名は、ハセオ(成田凌)に対して、さまざまな感情を抱えて生きている。
彼女は、自分の気持ちをすべて言葉にするわけじゃない。いや、そもそも自分自身でもいまいち分かっていないのかもしれない。それなのに、松岡の演技を見ていると、神名の心の奥底にある感情が、不思議と伝わってくる。何気ない表情の変化や、言葉を発するまでのわずかな間。そこには、台詞には描かれていない感情が、たしかに息づいている。
『ダウンタイム』で圧倒されたばかりだというのに、『男ともだち』では、さらに上回る表現力を見せつけられたような気がする。
そして、ハセオを成田凌が演じているのも、これまた贅沢すぎる。彼の演技が絶妙なのは、男ともだちでありながら、決してただの男ともだちには見えないところ。2018年公開の映画『ここは退屈迎えに来て』や、ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)を見て思ったが、成田は“沼”な雰囲気を醸し出すのが本当にうまい。だからこそ、わたしたちも神名の複雑な感情に共感することができるのだ。
あからさまに恋愛を匂わせてくるわけではないのに(というか、こないからこそ)、気になってしまう。友達としての居心地の良さと、異性としてのときめき。両方を持ち合わせているからこそ、簡単にただの男ともだちと割り切ることができないのだ。
ただ、もしもハセオが、いかにも恋愛対象になりそうな男性だったら、二人の関係はもっと単純に見えていただろう。反対に、完全に友達として割り切れる相手だったら、ここまで神名の心が揺れ動くこともなかったと思う。成田は、そのどちらにも振り切らないことで、ハセオという人物の特別さを表現していた。
本作には、神名の恋人で同棲相手の彰人役に井上祐貴、神名の浮気相手の真司役に中島歩と、松岡と成田のほかにも実力派キャストが名を連ねている。なかでも、先日最終回を迎えた『Tシャツが乾くまで』(TBS系)で中島の演技に魅了された人は、彼のまったく違った表情に思わず驚かされるかもしれない。
「出会って12年、私たちは一瞬たりとも恋人同士ではなかった」。神名のこの言葉は、果たして真実なのか。第39回東京国際映画祭コンペティション部門に選出され、ハセオ役の成田凌が最優秀男優賞に輝いたこの名作を、ぜひスクリーンで体感してほしい。
■公開情報
『男ともだち』
11月6日(金)新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
出演:松岡茉優、成田凌、井上祐貴、中島歩、咲妃みゆ、三浦貴大、辻󠄀凪子、中山求一郎、比喩根(chilldspot)、余貴美子、池畑慎之介
原作:千早茜『男ともだち』(文春文庫)
監督:三島有紀子
脚本:澤井香織
音楽:安川午朗
劇中歌:chilldspot「lost child」(RECA Records)
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:カズモ
©2026『男ともだち』製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/otokotomodachi/
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