“あきらめ症候群”に着想を得た社会派スリラー 『生存放棄 クワイエット・ライフ』12月公開
第81回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品されインターフィルム賞を受賞した映画『Quiet Life(原題)』が、『生存放棄 クワイエット・ライフ』の邦題で12月11日より新宿シネマート、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかで公開されることが決定した。
本作は、スウェーデンの難民認定申請中の子どもたちに実際に報告された「あきらめ症候群」に着想を得て、ロシアから逃れてきた一家の危機と選択を描いた社会派ヒューマンスリラー。『ミス・バイオレンス』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞に輝いたアレクサンドロス・アブラナスが監督を務めた。
目を覚まさない妹。両親から嘘の証言を求められる姉。救いを求めた先で突きつけられる、いくつもの条件。穏やかな日常を取り戻したいだけなのに、家族を守るための愛が、もう一人の娘を追い詰めていく。
「あきらめ症候群」とは、1990年代後半にスウェーデンで初めて報告された実際の症例。2003年から2005年には400件以上の症例が報告されている。血圧も正常、反射神経もすべて正常に機能しているのに、歩くことも話すことも食べることも、目を開けることすらできない。そしてこの症例はスウェーデン国外では確認されていないのだ。20年以上にわたるこの謎の病気との闘いの末、スウェーデンの医師たちは一つの結論を導き出す。「世界があまりにもひどいので、子どもたちは絶望し、脳の意識的な部分を切り離してしまった」。苛烈な暴力に晒され、安心して住む場所すらもままならない不安や極度のストレスは脆弱な立場である子どもたちの心を蝕んでいく。正式に病気として認められ、トラウマ体験後に働く防御機制であることがわかったのは2014年のことだ。
初めて症例が報告されてから30年以上、現在、世界は戦争や貧困、移民問題で混沌の中にある。アブラナス監督は「共同脚本家のスタヴロス・パムバリスと私は2人とも、クーデターや戦争、住む場所を追われた経験の記憶が、まだごく生々しく残る国で生まれ育ちました。自ら体験したものであれ、前の世代から受け継いだものであれ、政治的混乱のトラウマは私たちの血の中にあるのです。近年の世界の出来事が進行する中でこの物語を練り上げてきたことで、私たちにとって、その背景はいっそう重みを増しました。周囲の至るところで戦争が起こっているように見えます。そこから生まれる難民たちは、西側社会によって、ますます二級の人間として扱われるようになっています。一方で、世界は気候危機の渦へと落ち込んでいるように見えます。この危機は私たち全員に影響を及ぼし、すでに新たな気候難民の波や、経済的な理由による移住を生み出しています。政治の仕組みがこうした事態に示してきたのは、冷淡さの増大、ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)、そして壁を築こうとする姿勢です。共感するのではなく、無関心になることです。この映画で私たちは、人間性と愛を通して、そうしたあり方に対抗するものを見いだそうとしました」と本作制作の背景を語る。
そして「何百万人もの子どもたちが、戦争や貧困、政治的抑圧によって住む場所を追われ、人間らしい暮らしを求めて移動しています。しかし、決して楽観できない現実を知りながら、親はどうすれば子どもたちを守り、安定した生活を与えられるのでしょうか」と問題提起。「庇護申請を却下され、末娘が『あきらめ症候群』に陥ったとき、父セルゲイと母ナタリアはまさにその問題に直面します。これは深い絶望の状態で、スウェーデンだけでも何百人もの子どもたちが陥っています。懸命に努力しさえすれば、何もないところから何かを生み出すことはできるのでしょうか。結局、幸福は私たち自身がつくり出すものなのでしょうか。本作はどんな代償を払ってでも希望と安定を取り戻そうとする彼らの闘いを、そして非人間的な状況の中に光を見いだそうとする姿を描いた映画です」とコメントを寄せている。
あわせて公開された日本版ポスターには、「難民認定の申請を失敗すれば、家族全員が苛烈な暴力が待つ母国に送り返されることになる」という真実を知る妹、彼女に代わり、嘘の証言を両親からも求められる姉の姿が切り取られ、同じ状況下で心理的圧迫を受け止める姉妹を捉えた構図となっている。
■公開情報
『生存放棄 クワイエット・ライフ』
12月11日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー
出演:チュルパン・ハマートヴァ、グリゴリー・ドブリギン、ナオミ・ランプ、ミロスラヴァ・パシュティナ、エレニ・ルシヌー
監督:アレクサンドロス・アブラナス
脚本:スタヴロス・パンバリス、アレクサンドロス・アブラナス
提供:クロックワークス
配給:ミッドシップ
配給協力:Lino
2024年/フランス・ドイツ・スウェーデン・ギリシャ・エストニア・フィンランド/ロシア語・スウェーデン語・英語/99分/カラー/スコープサイズ/原題:Quiet Life/字幕翻訳:加賀爪琴
©les films du worso
公式サイト:mid-ship.co.jp/quietlife
公式X(旧Twitter):@quietlife_jp