イッセー尾形、『ブラッサム』でも強烈な旋風? 『スカーレット』『宙わたる教室』との共通項
イッセー尾形が、10月26日放送のNHK連続テレビ小説『ブラッサム』第21話で初登場を果たした。演じるのは、珠が愛読するロシアの文学作品『イワンの馬鹿』を翻訳した作家の小山牛丸。まるで仙人のような出立ちにほとばしる熱意から、人気作家・秋山格之介(高良健吾)とともに珠(石橋静河)へと刺激を与える人物だ。
思い出すのは、朝ドラ『スカーレット』(2019年度後期)でイッセー尾形が演じた“フカ先生”こと深野心仙。主人公・川原喜美子(戸田恵梨香)の絵付けの師匠で、一人前の絵付け師として自立するきっかけを与える存在だ。フカ先生はとにかく強烈なキャラクター。くしゃみに居眠り、口癖の「ええよ!」。一見すると“変なおじさん”ではあるが、絵付けで集中している時の“アホな顔”、幸せそうに笑いながら絵を描くフカ先生の姿を目の当たりにし、喜美子は心動かされていく。彼の過去にあるのは従軍画家として戦争を描いた経験。戦後、職を転々としながら火鉢の絵付けと出会い、そこでフカ先生は戦争が終わったということを実感する。イッセー尾形の表情豊かな“変顔”に持っていかれそうになるが、喜美子へと滔々と楽しそうに語る、その自然体な話し方が、“生きている”という感情を感じさせる。
イッセー尾形本人がその上をいく強烈なインパクトを視聴者に与えたのは、NHK大河ドラマ『どうする家康』(2023年)での鳥居忠吉役だ。家康(松本潤)が不在となった岡崎城の留守を預かる老臣で、歯が抜けて何を言っているか分からないため、息子の鳥居元忠(音尾琢真)が通訳するという第1話からすべてを持っていく、決して忘れられない演技が話題をさらった。
さらに、NHKドラマ10『宙わたる教室』(2024年)で彼が演じた76歳の定時制高校生・長嶺省造も大きな反響を巻き起こす。特に話題となったのが、およそ10分間に渡る圧巻の一人語りだ。偏屈な長嶺は価値観の違いから若い生徒たちと衝突していたが、自身の過去を語る中で互いに理解し合っていく。彼が内に秘めている原動力は自分への怒り。時に涙しながら、優しい表情で妻への愛を話していく。
『スカーレット』のフカ先生や『宙わたる教室』の長嶺に共通しているのは、熱い感情と心を突き動かされるような生の実感。それは今回『ブラッサム』で演じている小山牛丸にも通ずるものがあるように思う。第一声は「戦争が始まる!」。本棚も一緒に揺れる、フラフラとした足取りで書店「ぶくぶく堂」にやって来た牛丸はさらに、「正確には戦争はもう始まっちょる!」と訴える。その裏には貧富の差があるのだと。その牛丸の姿は珠が感銘を受けた『イワンの馬鹿』での、どんな理不尽な目に遭っても淡々と働くイワンの姿と重なるものがあった。珠の心の中にあった「畑に戻るよ」のセリフは原作から牛丸が加筆した部分だった。
特徴的なのはイッセー尾形のセリフ運び。例えば、「いけないかなと思ったんだけど、もう書……思いついたら書けば~みたいな、というのが降りてきちゃって……書いちゃったんだから、もう追及するな。また会おう」という字幕をそのまま追っただけではそこまで意味が伝わってこないのが、芝居になることでスッと生きたセリフになる。この途中には「あう~」というような言葉にならないようなセリフ、マイケル・ジャクソンの「ッダ!」のようなアドリブが入っており、独特のリズムが刻み込まれているのも特徴的だ。店主の本田(川島潤哉)から煙たがられる、秋山とは大違いの年老いた爺さん作家だとしても、珠の心にはススッと入ってくる情熱を持った人物だった。
秋山格之介のモデルは言うまでもなく芥川龍之介だが、小山牛丸には特定のモデルはおらず、当時の様々な作家から作り上げられたキャラクターだという。初登場から石橋静河と川島潤哉をアドリブ芝居で巻き込んでいったイッセー尾形が、『ブラッサム』でも旋風を巻き起こしそうだ。
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK