『ブラッサム』“リョウ”国仲涼子が体現する母の姿 「自分のために生きんさい」が胸に響く
自分がつらいだけならよかった。珠は、周囲や、雇ってくれた本家に迷惑をかけてしまうことに、耐えきれなくなってしまう。
連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第18話では、噂話のせいで働き口が見つからず落ち込んでいく珠の背中を、ドンと優しく押す母・リョウ(国仲涼子)の強さが描かれた。
叔父の清重(三浦誠己)は給金に色をつけてまで、珠に店を辞めてほしいと懇願する。自分のせいで取引が切られる。肩を落とし、「悪い噂がへばりついて離れていかん」と呟く珠の涙声に、こちらまで涙を誘われてしまう。
女は家のために早く結婚して、子を成し、家庭を守ることが正義とされていた時代。個人の恋愛感情を出発点とする男女の関係は、容易には受け入れられなかった。現在の展開は、恋愛を通して当時の女性の肩身の狭さを描いていると言える。本作は恋愛を通して、心の解放を描いていく物語なのかもしれない。
ただ、今の珠に開き直れる強さがあるわけではない。ただ恋をして、その思いに突き動かされて島村辰彦(工藤阿須加)に会いに行っただけなのに、噂におひれがつき、あることないこと言われている状況に、どんどん疲弊していく。
挙げ句の果てに、面と向かって不埒と言われてしまう始末。いつまでも仕事は見つからず、珠はほとんど家にこもるような生活を送っていた。
そんな珠の心を支えてくれたのは、木村保(金子大地)からの便りだ。京都の第三高等学校に通っていた保は、東京帝国大学へ進学を希望しているとのこと。珠は、想像もつかない東京の景色に思いを馳せる。
岩国で閉塞感を感じながら生きるくらいなら、遠くに逃げたほうが幸せだ。リョウは、照子(山田真歩)のもとを訪れ、保の世話役の話を受ける決心をする。周囲の噂から逃れられない岩国から、珠を逃がすための決断だ。
リョウは、初めて会ったときに珠が着ていた着物を珠に見せながら、語りかける。
第5話でも描かれた幼い珠の「お母」というかわいらしい声、ビー玉のような輝きをたたえる瞳、ぎゅっと握ってくれたふくふくとした小さな手。
自分を受け入れてくれた小さな女の子は、珠の実母・ユリが愛情を込めた着物に身を包んでいる。大切にしなければならない、幸せにしなければならないと、リョウは着物を見るたびに何度も決意を固めていた。
岩国で縮こまって生きるのではなく、笑顔で前を向いて過ごしてほしい。保のもとに送り出す決意は、リョウの母としての願いの表れだ。
リョウはいつもより強い口調で、「負けてもええじゃないの」「これからは自分のために生きんさい」と繰り返す。それだけ、大きな愛情で珠を見つめている証拠だ。
これまで、やわらかな表情や声色でリョウの姿を表現してきた国仲。母としての思いの強さを力強く見せてくれたことで、リョウのしなやかさが際立ち、キャラクターがより魅力的に映る。
2001年度前期朝ドラ『ちゅらさん』でヒロインを務めた国仲。あれから25年たち、母として、ヒロインの背中を押す立場になったのだと思うと、胸が熱くなった。
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK