磯村勇斗&綾野剛が絶賛する末澤誠也の直感力と誠実な素顔 「ずっと役者の顔だった」
磯村勇斗とAぇ! groupの末澤誠也がW主演を務め、綾野剛が共演する映画『mentor』。15年前の花火遊びでアパートを全焼させてしまった過去に囚われた青年2人と、その火事で大火傷を負い、妻子を失った男。本来であれば果たすことのない歪な再会が、3人の運命を狂わせていく本作。3人はいかにして𠮷田恵輔監督の独創的な世界を作り上げたのか。撮影秘話から、それぞれが捉えた『mentor』の魅力までを語ってもらった。
「とにかく笑いをこらえていた」撮影現場
――お三方でお芝居をされてみて、お互いにどのような印象を持ちましたか? 撮影現場で特に印象に残っていることも教えてください。
磯村勇斗(以下、磯村):洗練された時間がずっと流れていたような現場でした。一つひとつのシーンをどんどん追求していって、それこそ綾野さんがメンターのように現場を先導してくださって。僕たちも「いいですね」「こうしましょう」と話し合いながら進めることができたので、すごく有意義でしたし、「お芝居って面白いな」と思える時間がたくさんありました。
末澤誠也(以下、末澤):磯村くんと綾野さん、お二人が現場を引っ張ってくださったので、僕はそこについていかせていただいたという感覚です。近くでお二人のお芝居を拝見して、この撮影期間は本当に学ぶことがたくさんありましたし、すごくいい経験をさせていただきました。
綾野剛(以下、綾野):磯村くんがこれまで積み立ててきた総合性が役に深みを与えていましたし、末澤くんの直感力や何かをキャッチしてから投げるまでのスピード感など、とても魅力的に感じました。だからこそ、自分がどう2人の中に入っていくか。作品全体の物語を捉えたうえで、どうアジャストできるかというところに集中していました。そのためには2人を知っていく作業がとても大切になるので、その時間がとても幸せでした。
――シリアスな物語ですが、撮影の合間はどんな雰囲気だったのでしょうか?
綾野:とにかく笑いをこらえていました。
磯村:本当にそうでしたね。大変でした(笑)。一番悪いですよね(笑)。(末澤を見る)
末澤:いやいや、僕は違いますよ(笑)。僕はもう真剣にやっていました。
磯村:それが本当に面白かったよね。土下座のシーンもいくつかありますけど、あれを隣で見せられたら、やっぱり我慢できないです。彼は本当に素直な方なので、素直に土下座をしているからこそ、ちょっとおかしくて(笑)。素晴らしい。
――予告編にも登場する拓海(末澤誠也)の土下座は、かなりインパクトのあるシーンですよね。
末澤:僕はもう真剣に、拓海として土下座をしていたんです。でも(磯村は)横で笑ってNGを出したりしていましたね(笑)。
磯村:だって異常ですもん。人間の行為、行動として考えたらやっぱりおかしいんです。でも、僕たちはそれを受け止めなければいけない。
綾野:僕の立ち位置から見ると、末澤くんを見ている磯村くんが、なぜそれに耐えられるのかがすごく奇妙で(笑)。僕はまた別のルートで面白くなってくるんです。
全員:(笑)。
綾野:「なぜ耐えられるんだろう?」という疑問が、どんどん面白くなってくる。現場では𠮷田監督もウィットに富んだ方なので、新発想をたくさん提案してくださいます。それらを含めた状況を冷静に分析し始めるとゆっくり狂っていく。
――𠮷田監督から受けた演出で印象的なものはありましたか?
磯村:拓海と埜本(綾野剛)の2人は一緒のシーンが多いんですけど、龍之介(磯村勇斗)と埜本の2人は意外とピンポイントでしかないんです。だからこそ、そこでの2人の距離感や言葉の温かみみたいなものを探っていくのは、やっぱり不思議な感覚がありました。居酒屋のシーンも、最初は埜本さんが隣にいることに「居心地が悪いな」と感じながら始まって、そこからどんどんメンターのように言葉をかけられていく。すごく面白いシーンなのですが、最初は違和感がありながらも、どこかでふっと吸い寄せられていくようなものを作っていかなければならなかったんです。だから埜本さんとの2人のシーンには特別な時間が流れていました。すごく緊張感もあって、濃い時間だったことが印象に残っています。
綾野:具体的な演出ももちろんたくさんありましたが、僕からは、「このシーンはどういう想いで書かれましたか?」ということでした。監督自身が脚本を書いているからこそできる質問ですし、その答えが、そのシーンに必要なものに結びつくことが圧倒的に多い作品でした。
――末澤さんはいかがですか?
末澤:僕は、拓海がパニックになって車道との間を仕切るポールにしがみつくシーンですね。「猿みたいな感じで」「もうこのポールがないと拓海は立っていられない、というくらいの感じでやってみて」と𠮷田監督がその場で実演してくださったのが印象的でした。あとは、龍之介と埜本と3人でフィールドアーチェリーをするシーン。拓海のある言動をきっかけに埜本が立ち去った後、「ちょっとそこで回転してみて」と言われて、すぐに回転する動きを入れてみたり。その場その場で𠮷田監督からいろいろな演出をつけていただいたので、そういうところで、より拓海というキャラクターが際立ったのかなと思います。
綾野:ポールにしがみつく拓海に対しても、埜本としては決してそれを面倒くさがってはいけない。「うんうん、そうだね」「嫌だったね」「怖かったね」と、愚痴る拓海を受け止め続ける。何があっても諦めない人。そういう埜本のあり方についても、監督がどういう想いで書いたのかを確認しながら演じていました。